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マリオ・ブルネロ リサイタル [音楽]

10月29日(水) 紀尾井ホール
ブルネロ.jpg
マリオ・ブルネロ(チェロ)
アンドレア・ルケシーニ(ピアノ)

ベートーヴェン:モーツァルト「魔笛」の“恋を知る男たちは”の主題による7つの変奏曲WoO. 46
ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第3番イ長調Op. 69
ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第4番ハ長調Op. 102-1
ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第5番ニ長調Op. 102-2

アンコール
J.S.バッハ:コラール前奏曲「主イエス・キリストよ、われ汝を呼ぶ」BWV.639

二夜連続のオール・ベートーヴェン・プログラムの二日目を聴く。
イタリア人チェリストのブルネロはこれまでにも何度か聴いている、お気に入りの一人。
彼の音楽は、大きくて深くて、なんだかとても包容力がある。ゆったりと豊かに歌い上げるメロディ、速いパッセージでも粒の立つ美音。そういう美点が、ベートーヴェンの音楽に良くマッチして、実に聴き応えある演奏。
ルケシーニとの息もぴったりで、例えばソナタ第3番の会話するようなやりとりも楽しげ。
やや地味な第4番では緩徐楽章の美しさが際立つ。惚れ惚れするほど美しい。

今年はベートーヴェンのソナタの当たり年なのか、春にはウィスペルウェイのリサイタルも聴いたし、最近ケラスのCDも出た。どれもそれぞれ良さがあるが、個人的にはこのブルネロの演奏がいちばんしっくり来た。
ああ、幸せ幸せ、と思いながら帰途につけた、そんな演奏会。


ドヴォルザーク:交響曲第9番

ドヴォルザーク:交響曲第9番

  • アーティスト: パッパーノ(アントニオ),ドヴォルザーク,ローマ・サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団,ブルネロ(マリオ)
  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2012/10/17
  • メディア: CD



J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲(全曲) (J.S.Bach : Cello Suites No. 1-6 / Mario Brunello (Vc)) (3CD)

J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲(全曲) (J.S.Bach : Cello Suites No. 1-6 / Mario Brunello (Vc)) (3CD)

  • アーティスト: J.S. バッハ,マリオ・ブルネロ(Vc)
  • 出版社/メーカー: EGEA
  • 発売日: 2010/05/21
  • メディア: CD



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イスラエル・フィル演奏会 [音楽]

10月27日(月) 東京芸術劇場

ヴィヴァルディ:4つのヴァイオリンとチェロのための協奏曲 ロ短調 op.3 No.10 RV580
モーツァルト:交響曲第36番「リンツ」
マーラー:交響曲第5番

指揮:ズービン・メータ

イスラエル・フィルを聴くのはずいぶん久しぶりだった。たぶん、前回は30年くらい前、バーンスタインと来た時。そうか、まだバーンスタインが生きていたんだね。でもメータもその頃既に巨匠だったと思うが、この人も息の長い人だ。

最初の曲はヴィヴァルディの協奏曲。正直言うとなんでイスラエル・フィルでこの曲をやるのかよくわからない。こういうのも出来るんですよ、ッてことかな。いや、演奏は上手かったけど。ソリストは全員団員らしく、プログラムには名前の表記なし。ヴァイオリンは4人とも女性で、ソリストらしい綺麗なドレス姿。演奏は、もちろん古楽器奏法などではなく、ごくオーソドックスなもの(だったと思う。)こちとら、ヴィヴァルディの協奏曲なんて全部一緒に聞こえる程度の耳なので、あれですが、まあいい曲ね、ということで。

2曲目のリンツも、奇をてらわず、美しい音楽。テンポも速過ぎず遅すぎず、良い意味で中庸とでもいうか。こういうモーツァルトをやるようになったことにメータの円熟を感じる。

でもやっぱり、凄かったのはマーラー。厚みのある弦に聞き惚れ、木管の美しさに息を飲み、金管の咆吼に圧倒される。実はこの日、席が最前列だったせいもあって、まさに音が頭上から襲いかかってくるようで飲み込まれるような気分。なので、全体のバランスなどはわかりにくかったのだけれど、とにかく音の洪水の中にいるようだった。それが余計にピアニシモの音を引き立てる。木管のソロ、綺麗だったなあ。3楽章のホルンは見事見事。そして4楽章のアダージェットのひそやかな美しさ。いや、とにかく圧倒された。

アンコールは、一転、マスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲をしんみりと聴かせてくれた。

メータは、もう幾つになったんだろう。椅子にも座らず、元気そう。今年は、アバド、マゼールとおそらく同年代のマエストロが相次いで逝った後だけに、メータの健在が嬉しかった。
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五嶋みどりリサイタル [音楽]

10月7日(火) サントリーホール

ヴァイオリン:五嶋みどり
ピアノ:オズガー・アイディン

プログラム
シューベルト: ピアノとヴァイオリンのためのソナチネ ニ長調 D384
シューマン: ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第2番 ニ短調 op.121

モーツァルト: ピアノとヴァイオリンのためのソナタ ホ短調 K304
R.シュトラウス: ヴァイオリンとピアノのためのソナタ 変ホ長調 op.18

アンコール
ドビュッシー : 亜麻色の髪の乙女

みどりちゃんを聴くのは今年2回目。春にオーケストラとのメンコンを聴いたので、今年2回目。年に2回来日すること自体珍しいかも。
若い頃のみどりちゃんは、バリバリパワフルで力強い印象だった。この数年は、強さより美しさの方をより感じるようになった。もちろん前から音は綺麗だったけれど、今回も特にシューベルトの緩徐楽章の天上の響きのような、透明感を感じるような美しさは前にはなかった気がする。それも、単に綺麗というのではなく、彼女がどれほど音楽に真摯に向き合っているかが音に出ているような、聴いていて背筋が伸びるような凛としたたたずまいの美しさ。強靱な精神が支える美。聴いていて、何度か涙が出そうになった。
こういう演奏を生で聴ける幸せ。
みどりちゃん、ありがとう。また聴ける日を楽しみにしています。
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東京JAZZ 2014 [音楽]

9月7日(日) 昼の部
東京国際フォーラムホールA

去年は行けなかった東京JAZZ。二年ぶりに参加。
今年からチケットのランク分けが増えて安い席ができて嬉しい。このホールじゃよっぽど前以外は後ろでも一緒だもん。

この部のテーマは”This is Jazz"。3組のそうそうたる顔ぶれが登場。

1st ステージ 
The Quartet Legend featuring ケニー・バロン、 ロン・カーター、 ベニー・ゴルソン、 レニー・ホワイト
名前を見ただけでもおお、となるビッグネームが共演。
タッチの美しいバロンのピアノに酔いしれる。
ベースのカーターはアンサンブルの中では縁の下の力持ちなのに、ソロになるとバッハの無伴奏チェロ組曲のメロディを取り入れた渋い演奏で魅せる。
ゴルソンのサックスはブイブイとメロディアス。
そしてホワイトのドラムのびりびりした格好良さ。
古き良き、と言うのでもない、あくまで現役バリバリのレジェンド達の活きの良い演奏。

STABLE MATES
SONIA BRAGA
L's Bop
[Ron Carter Solo]
You Are My Sunshine
J.S.Bach's Prelude
CUT + PASTE
BLUES MARCH
WHISPER NOT


2nd ステージ
小曽根真 featuring No Name Horses VS クリスチャン・マクブライド・ ビッグバンド
日米ビッグバンド対決と言ったところか。
アメリカ勢は白いシャツ、日本勢は黒で迎え撃つ。
次々にソロでリレーしながら躍動的でワクワクさせる音楽を聴かせるマクブライドバンド。もちろん、マクブライドのベースのソロもたっぷり。奇しくも先のロン・カーターに続いてベースの巨匠を一日で聞ける幸せ。個人的な好みで言うと、明るく楽しいマクブライドの方が好き。

小曽根は手兵というか仲間No Name Horsesとガーシュインの「ラプソディー・イン・ブルー」で華麗なピアノを。No Name Horsesの演奏はもちろん名人揃いで上手いが、アメリカのバンドの演奏を聴いた後では、とてもきっちりしてお行儀良く聞こえてしまう。クラシックみたい。良くも悪くも日本人だなあ、なんて思ってしまった。

最後は両バンドの共演で、小曽根がリハーサルの3時間前に書き上げたという新曲かつおそらくこの一度きりの演奏という「バウンシング・ツー・ビッグ・シューズ」を熱演。いやあ、盛り上がったのなんの。小曽根さんもMCで音楽はバリアを越えると言っていたけど、ほんとにジャズって楽しい、音楽って素敵、と思えた。

クリスチャン・マクブライド・ビッグバンド
Shake in Blake
The more I see you
In a hurry
小曽根真 featuring No Name Horses
Rhapsody in blue
小曽根真 featuring No Name Horses & クリスチャン・マクブライド・ビッグバンド
Bouncing in two different shoes


3rd ステージ
ハービー・ハンコック and his band featuring ヴィニー・カリウタ、 ジェームス・ジーナス and リオーネル・ルエケ
今年いちばんのお目当てはハービー・ハンコック。生で聴けるなんて思ってなかった。
この日の3組の中では一番先を行ってるというか、モダンというのか、鋭角的というのか、な演奏。うん、ああ、私には良さがちょっとよくわかんないな~、と(汗)。あ、もちろんハンコックもバンドのメンバーも凄腕なことくらいはわかるけど、もっとハンコックの美しいピアノでメロディアスな音楽も聴きたかったな、と正直なところ思った。でもハンコックのファンはそんなこと思わないのかな?

Actual Proof
Seventeen / Watermelon Man
Speak Like A Child
Cantalope Island / Flying / Cantalope Island
Rock It / Chameleon


今年の東京JAZZはチケットも完売したようで、数年前まではホールAだと後ろの方は結構空席があったのに、年々人気が高まってるのね。さて来年は誰が来てくれるかしら。
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イザベル・ファウスト・リサイタル [音楽]

6月26日(木) 東京芸術劇場

ヴァイオリン:イザベル・ファウスト 
ピアノ:アレクサンドル・メルニコフ

モーツァルト:
  ヴァイオリン・ソナタ第29番 イ長調K.305
シューベルト:
  幻想曲 ハ長調D.934 Op.159
シューマン:
  3つのロマンス Op.94
ブラームス:
  ヴァイオリン・ソナタ第3番 ニ短調Op.108

生で聴くのは初めて。今とても脂がのったヴァイオリニストの一人。
演奏はテクニックはもちろん素晴らしいが、とても知的で熱くなりすぎず、一見いや一聴こざっぱりとしているようで深い思索が感じられる。ただしっとりとした情緒や暖かみには欠けるようにも感じられ、「熱演」というふうではない。そこが好き嫌い分かれそう。4月に聴いた庄司紗矢香の演奏とは好対称。よく似たプログラムなだけに面白かった。私としては、どっちをもう一度聴きたいかというと紗矢香ちゃんだな。
とは言え、メルニコフの端正で美しいピアノとも良いコンビで、室内楽的アプローチの聴き応え十分な演奏会だった。

ただ、自分の席がステージサイドだったせいか、ヴァイオリンよりピアノの方が音が大きく聞こえてバランスが悪かった。正面の良い席だったらもっと受ける印象も変わっていたかも。

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マティアス・ゲルネ バリトン・リサイタル [音楽]

5月13日(火) 紀尾井ホール

世界トップクラスのバリトン歌手、ゲルネのリサイタル。ひょんなことでチケットをいただいたので出かけた。
男声のリートを聴くのはとても久しぶりで新鮮。女声の方は時々聴くのだが、なぜだろう、男声はちょっと私には地味に聞こえて敬遠気味だった。

今回は三夜連続で、シューベルトの三大歌曲を歌うというプロジェクト。この日はその一日目でプログラムは「水車小屋の娘」全曲。休憩、アンコールなしで約1時間20分。

歌曲集「美しき水車小屋の娘」D.795 op.25
ピアノ アレクサンダー・シュマルツ

見た目に似合わぬ(失礼!)リリカルで甘い美声。
青年の恋と失恋、希望と挫折という青春の光と影をくっきりと描き出す。甘やかに恋心を歌い、激しく絶望を歌う。
シュマルツの的確な伴奏とともに情景が鮮やかに浮かぶよう。
残念ながら私はドイツ語がさっぱりわからないのだが、もし完璧に理解しながら聴いていたなら、きっと涙してしまったと思う。

人間の声って素晴らしい。シューベルトの歌曲は本当に素敵。と改めて感じた。やっぱりリートはいいなあ。
また聴きに行こう。


シューベルト:美しき水車小屋の娘(全曲)

シューベルト:美しき水車小屋の娘(全曲)

  • アーティスト: シューベルト,シュナイダー(エリック)
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2002/10/23
  • メディア: CD



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アリーナ・イブラギモヴァ・ヴァイオリン・リサイタル [音楽]

4月30日(水) トッパン・ホール

プログラム
イザイ: 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ Op.27
第1番 ト短調/第2番 イ短調/第3番 ニ短調/第4番 ホ短調/第5番 ト長調/第6番 ホ長調

最近人気急上昇の若手女性ヴァイオリニスト。
会社の人が絶賛していたので、一度聞いてみようかな、と足を運んだ。

近頃の若手として、テクニックが完璧なのはもはや当然。少々のことでは驚かない。が、このイブラギモヴァの演奏にはちょっと度肝を抜かれた。
テクニックはもちろん凄い。あのイザイの難曲を軽々と弾きこなす。しかも、ただ技をひけらかすのではなく、一音一音に意味をこめたような集中度の高い演奏。強弱のめりはりがかなりはっきりしていて鋭角的。グイグイ引き込まれるような力強く、しかし「技巧派」というような冷たさや無機質さとは無縁。
イザイなんて、正直私には解釈うんうんなんてわからないけど、ただ呆気にとられて聴き入った。

さらに特筆すべきは音色。ホールの音の良さもあるかもしれないが、最弱音から最強音までまんべんなく鳴りきる豊かな音が美しい。イザイの、ごちゃごちゃしたメロディを強音でがんがん弾いても音が濁らない。こういうタイプの音って女性ではあまりいないような。ヴェンゲーロフなんかに近い印象。

まあとにかく凄いの一言。凄い若手が出てきたなあ。ヴァイオリン界ってこれからどこまで行くんだろう。なんだか軽くめまいをおぼえそうなくらい、やられた、と言う気分だった。

会場は圧倒的に男性客が多かった。サイン会に並んでたのもほとんど男の人。人気あるのね~。



Violin Sonatas

Violin Sonatas

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Wigmore Hall Live
  • 発売日: 2010/11/17
  • メディア: CD



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タベア・ツィンマーマン・ヴィオラ・リサイタル [音楽]

4月25日(金) 王子ホール

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レーガー:無伴奏ヴィオラ組曲 Op.131D 第1番 ト短調
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ト短調 BWV1001
     (ヴィオラ編)

********** 休憩 **********

J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲 第3番 ハ長調 BWV1009 (ヴィオラ編)
ヒンデミット:無伴奏ヴィオラ・ソナタ Op.25-1

アンコール
ヴュータン:無伴奏ヴィオラのための奇想曲

アルカント・カルテットの一員としても活躍しているツィマーマンのソロ・リサイタル。
バッハを挟んでレーガーとヒンデミットと渋いプログラム。

ツィマーマンの演奏は、余計な叙情性を排してかなりがっつりとした構築性の高い音楽、と言う印象。音楽にこういう月並みな表現もなんだけど、男性的な力強さ。
特に圧巻は最後のヒンデミットで、かなりの難曲と見えたが、ものすごい集中力とパワーとテクニックでごりごり押してくる、非情に密度の高い演奏だった。うわあ、すごい。と息を飲んで聴き入る。
でもずっと隙がないというか、ちょっと疲れる気がしたのも本音。

同じヴィオラでも、バシュメットや今井信子はもう少し音に色気というか柔らかみがあって、好みから言えばそっちの方が好きだけれど、現在の最先端のヴィオリストの一人の凄さを感じたリサイタルだった。

秋にアルカントでも来日するが、王子ホールの公演のチケットが取れなかった。残念。
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庄司紗矢香&メナヘム・プレスラー デュオ・リサイタル [音楽]

4月10日(木) サントリーホール

プログラム
モーツァルト: ヴァイオリン・ソナタ 変ロ長調 K454
シューベルト: ヴァイオリンとピアノのための二重奏曲 イ長調 D574

シューベルト:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第1番
ブラームス: ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト長調 op.78 「雨の歌」

アンコール
ドビュッシー: 亜麻色の髪の乙女
ショパン: ノクターン第20番 嬰ハ短調 遺作 (ピアノ・ソロ)
ブラームス: 愛のワルツ op.39-15
ショパン: マズルカ イ短調 op.17-4 (ピアノ・ソロ)

これまで、イタマール・ゴランなど比較的若い世代のピアニストと組んできた庄司紗矢香が、90才の名ピアニスト、プレスラーと共演した。元はと言えば庄司がプレスラーにレッスンを申し込んだところ、プレスラーの方から演奏会を、との申し出があったという。
プレスラーは50年以上ボザール・トリオのピアニストを務めた室内楽の名手。もちろんソロでもそうそうたる経歴。そういう大家と若い紗矢香ちゃんがどういう音楽を奏でるのか、始まる前から興味津々。

1曲目のモーツァルトが始まった瞬間から「あ!」と思った。二人ともとにかく音が美しくて、ふわっと清潔な香気が立ち昇るような夢見るように美しく優しい音楽。モーツァルトってこうだよ、と優しく示すようなプレスラー御大が素晴らしい。
続くシューベルトや後半のブラームスも同様、重厚さとは無縁でひたすらしみじみと悲しいほど美しかった。甘やかで優しくて心が洗われるよう。ブラームスのソナタがこんなにひそやかに優しく聞こえたことがあったろうか。
プロコやショスタコではピンとはりつめた演奏をする紗矢香ちゃんが、この夜はプレスラーにゆったりとリードをあずけて心から演奏を楽しんでいたように感じた。御大も孫のような紗矢香ちゃんとやるのが嬉しそうだった。

アンコール4曲のうちプレスラーのソロが2曲。あんなに音の綺麗なビアノ初めて聴いたかも。サントリーホールが静寂に包まれた。いつまでもいつまでも聴いていたい、そんな音楽だった。

プレスラーのお歳を考えると、もう二度とない奇跡の演奏会だったかもしれない。聴けてよかった、本当に。心からそう思った。プレスラーさん、ありがとう。

余談ながら、アンコールの後袖に引っ込む時、紗矢香ちゃんがプレスラーの手を引いていたのが孫とおじいさんみたいで微笑ましかった。
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ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団演奏会 [音楽]

3月21日(金) サントリーホール

指揮: リッカルド・シャイー
ヴァイオリン: 五嶋みどり
オーケストラ: ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

プログラム
メンデルスゾーン: 序曲「ルイ・ブラス」op.95
メンデルスゾーン: ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 op.64
                   (ヴァイオリン: 五嶋みどり)
ショスタコーヴィチ: 交響曲第5番 ニ短調 op.47

シャイーと言えばコンセルト・ヘボウの印象が強く、いつの間にライプツィヒに行ってたんだろう、というくらいそういう情報に疎くなってしまっている。

ゲヴァントハウス管は言わずと知れた世界最古のオケ。メンデルスゾーンが指揮をしたとか、そういう伝統のあるオケ。私の中ではいかにもドイツらしいどっしりとしたオケの印象だった。

序曲の後、待望の五嶋みどりのソロでメンデルスゾーンの協奏曲。これが聴きたくてチケット買ったようなもの。
いや、これが素晴らしかった。期待を裏切らない名演。ただ美しい音とか、技術的に優れているとか言う次元ではない。神々しいほどに美しく気高い。張りつめた、一音たりともないがしろにしない、それでいて優美さも溢れる演奏。冒頭の耳にたこができるくらい有名なあのメロディがこれほど緊張感と情感を持って響いたのを聞いたことはない。そして第2楽章の歌心あふれる流麗さから第3楽章の快活さへのもって行き方の自然で流れる音楽の素晴らしさ。もう泣きそうだった。

みどりちゃんはいつも、この曲ってこういう音楽だったんだ!と思わせてくれる。一つ一つの音を確信を持って弾いている。曲へのアプローチの深さ、音楽に対する真摯さに感動する。メンコン、なんて安っぽく呼んじゃいけないんだ、と思えた今日の演奏。聴けて良かった。

前半でもう大満足だったが、後半はもっとすごかった。ショスタコの5番。
ゲヴァントハウス管は、あんなにみっしり厚い音なのに弦が一糸乱れずどころか合奏に聞こえないレベル。凄すぎる!弦の音は分厚いのになぜか透明感のある美音。これって矛盾するでしょう、普通。でもそう聞こえる。そして管楽器群ももちろんしっかりと豊か。ティンパニーのメリハリの効いた音が締める。
シャイーの棒のもと、タコ5だから盛り上がるのは当然だけどただやたらに熱いんじゃない、理知的で緻密で音の密度がやたらに高いので物理的に圧倒される思い。こんな風圧感じるタコ初めて。

これがシャイーの手腕によるものだとすれば、シャイーはアバド亡き今、黄金時代に入ったのかもしれない、とさえ思える。

ショスタコの後、アンコールはなかったが、もう十分満腹という感じ。う~ん、凄いもの聴けたなあ、と充実感いっぱいだった。たまにオケ聴きに行ってこういう大当たりに出会ってしまうとやっぱりコンサート通いは止められない。

しかし、ゲヴァントハウス管が、イタリア人の指揮者と、ショスタコを日本で演奏するなんて、30年前は想像できなかった。ショスタコどころか、チャイコでも日本の招聘元がうんと言わなかったと思うよ。時代は変わる。
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