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9月歌舞伎座第三部 [舞台]

2009歌舞伎座a.jpg

秀山ゆかりの狂言
双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)
引窓

濡髪長五郎  吉右衛門
南与兵衛後に南方十次兵衛  菊之助
平岡丹平  歌昇
三原伝造  種之助
お早   雀右衛門
お幸   東蔵

8月に続いて四部制の歌舞伎座公演。ただ、花形世代中心だった8月から9月は大御所も出演し、少し本来の形に進んだ感じはある。
その中でもこの三部の「引窓」は、8月にはなかった義太夫狂言で、正直やっと歌舞伎らしい歌舞伎を見たという感激があった。
9月は例年なら秀山祭と銘打った興行だが、このコロナ禍の中で「祭」とつけるのは遠慮したらしい。ただこの三部だけは「秀山ゆかりの」とつけることでなんとか秀山を偲ぶ形となった。

吉右衛門は当たり役の与兵衛を婿の菊之助に譲り、濡髪に回ったが、さすがに大きい。大きな体を小さくするようにして花道を走り込んできて、滑り込むように家に入ってからの、再会を喜ぶ母に真実を告げられない苦しさを視線一つで見せ、「同じ人を殺しても、、、」の独り言に重い心をにじませる。後半は母への情に揺れながらも義を立てて与兵衛に捕まろうとする性根の真っ直ぐさを見せる。母の膝に手を置いて「未来におわす十次兵衛殿へ、立ちますまいがの」のあとの「やあ」「やぁ」「やぁ」のやあ3連発だけで泣ける。

東蔵の母お幸も実の息子と義理の息子の間で板挟みになる切なさを情たっぷりに見せる。この手の老母をやらせたらやはりこの人が今いちばんだろう。
雀右衛門のお早も、元は遊女の色香を残しつつ、気立ての良い、姑につくし、夫のこともぞっこん大好きな可愛い女房振り。

手堅い共演者の中で初役の菊之助の与兵衛は律儀で清潔な好青年と言った風で、これまで放蕩してきた浮いた感じがもう少しほしい気もするが、母が打ち明けてくれない寂しさを押し隠し、母の意を汲んで濡髪を逃してやる優しさがぴったり。播磨屋のやり方とは少し違うが、持ち役にしていくだろう。

4人のアンサンブルがとても良く、元々後味の良い作品だが、特に吉右衛門と東蔵の台詞の一言一言が胸に染みて人の優しさが胸を打つ。台詞で聞かせる義太夫狂言の良さにどっぷりはまれて幸せ。やっぱり歌舞伎はこうでなくっちゃ、と思わせてくれた一幕だった。





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コメント 2

nori

 素晴らしい組み合わせの公演でしたね。今月中ごろに、箱根に行く予定で、ついでに、歌舞伎座の3部、4部のチケットを取りました。2月の仁左衛門の菅原以来の歌舞伎です。関西も12月の南座の公演から再開ですが、早く通常の公演に戻って欲しいですね。

by nori (2020-10-05 00:42) 

mami

noriさん、おお今月見にいらっしゃるんですか。それは楽しみですね。今月から国立劇場も始まりましたし、客席数は半減でも公演があるのは嬉しいですね。
by mami (2020-10-06 23:27) 

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