SSブログ

八月花形歌舞伎第一、二部 [舞台]

歌舞伎座

3月から新型コロナウイルスのために休場していた歌舞伎座が8月からやっと再開された。
異例の四部制、各部で出演者はもちろんスタッフら関係者も総入れ替えにし、客席は一席おき、大向こうも禁止、休憩なし、飲食禁止、売店も休業、、、と前例のないスタイル。たとえ売ってる席が全部埋まっても赤字かもしれない。それでも幕を開けようという劇場側の強い志に感じ入る興行である。

8月は例年若手中心の納涼公演だが、今年も顔触れ自体はいつものものとそう変わらない花形公演。

第一部
連獅子

狂言師右近後に親獅子の精 = 片岡愛之助(6代目)

狂言師左近後に仔獅子の精 = 中村壱太郎(初代)

浄土の僧遍念 = 中村橋之助(4代目)

法華の僧蓮念 = 中村歌之助(4代目)

愛之助と壱太郎という上方役者同士の共演。親子でやることが多い演目で、親戚でもない二人がやるのは比較的珍しい。
幕が開く前に、出演者のご挨拶アナウンスが日替わりで流れる。私が見た日は橋之助だった。
幕が上がって、居並ぶ長唄連中も皆布マスク。前もって情報があったので驚かないが、やはり通常の公演ではないことを改めて意識する。それでも、演奏が始まると、ああやっぱり生の音は良いなと胸が熱くなる。

普段の親子共演だと、こどもの方が親にどれだけついて行けるか、と言う視点で見てしまうことが多いが、今回のように二人とも大人だとなんだか実力伯仲というか、下手すると踊りは壱君の方が安定していたりして、微苦笑。前シテは二人ともとても神妙に行儀良く踊っていて、第一部の幕開きを飾る緊張感のようなものも伝わってきた。

後シテも、二人ともやたらブンブン振るのではなく格調を保って務めていた。壱太郎も、数年前にお父さんとやった時はすごい高速で振っていたが、今回は落ち着いた感じで、でも綺麗な毛振りだった。

宗論は橋之助と歌之助の兄弟で。狂言らしい可笑しさはまだまだだが、一生懸命やっているのは伝わった。

大向こうはないが、客席からは熱い拍手が沸き起こっていた。これにも胸熱。

第二部
棒しばり

次郎冠者 = 中村勘九郎(6代目)

太郎冠者 = 坂東巳之助(2代目)

曽根松兵衛 = 中村扇雀(3代目)

二部の開幕挨拶はこの日は巳之助だった。

勘九郎と巳之助の組み合わせは二度目か。双方の父親同士の当たり役で、二人での初演の時は父を偲んで目頭が熱くなったのを思い出す。今回は別の意味でまた胸熱。
勘九郎は、生の舞台で踊れる喜びを爆発させるような活きの良さで、キレッキレの体の動きと絶妙な足さばきに目を見張る。さらに愛嬌のあふれる様子も楽しい。
巳之助も負けじと溌剌とした様子。それでも行儀は良いのがいい。
扇雀の大名も威厳はありながらおかしみもあってまずまず。
とにかく、この数ヶ月の鬱憤を吹き飛ばすような明るく清々しい舞台だった。短くてあっという間に終わってしまって、もっと見ていたいのに、と思うほど。

一部も二部も、客も生の舞台を待っていたけど、役者さん達も待っていたんだなあ、と実感できた。
どうか無事にこのまま舞台を開け続けることができますように。

nice!(1)  コメント(2) 
共通テーマ:演劇

nice! 1

コメント 2

nori

ご無沙汰しております。歌舞伎座の再開、本当に良かったですね。今年の2月に歌舞伎座で仁左衛門の筆法伝授、道明寺を見たのが最後ですから、早く舞台が見たいですね。5月で仕事を辞めて、隠居生活をしていますが、少しずつ、コンサートなどに行けるようになりました。舞台が続けられるようにと祈らずにはいられません。落ち着いたら、東京へも遠征したいのですが、今は様子見という感じです。記事を楽しみにしております。
by nori (2020-08-17 16:45) 

mami

noriさん、おひさしぶりです。
歌舞伎座、細心の注意を払いながらの公演再開で、客側も緊張します。
なんとか公演が続くように祈るばかりです。

せっかくお時間ができたのに、コンサートも舞台も減ってしまって残念ですね。一日も早く収束しますように。

by mami (2020-08-17 21:11) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。