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うるしとともに ―くらしのなかの漆芸美 [美術]

泉屋博古館
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漆芸や蒔絵の名品の数々が並ぶ展覧会。
と言うのはそう珍しくもないが、目を引くのは明治から大正にかけて、住友家が象彦に発注して作らせた会席用の器一式など、実際に使われた食器類の見事さ。
中でも象彦の謡曲に題材を取った丸盆のセットは一枚一枚のデザインも素敵で洗練されていた。
江戸時代ならともかく、明治大正の財閥もこういう立派なものを使っていたんだなあ。

もちろんもっと古い名品もあって、中国の螺鈿や堆漆の超絶技巧を施したものや江戸時代の凝った蒔絵のものなど、ため息が出るよう。こういうものは実用ではなく鑑賞用だったのだろう。

同時開催として、新たにコレクションに寄贈された染付の大皿も展示。こちらも大胆な絵柄と技術が素晴らしい。
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大倉集古館の春展 [美術]

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大倉集古館の春~新春を寿ぎ、春を待つ 大倉集古館

新春にちなみ龍の作品や吉祥の末広がり、扇の絵画、また季節の絵画など、どれもめでたく華やかな作品が並ぶ。

扇そのものの展示もあるが、宗達一門の扇面流図屏風が目を引く。貼られた扇一枚一枚のデザインも凝っている上、背景の波の描き方、扇ではなく色紙に描かれた源氏物語など、どこもかしこも見どころ。

龍では中国の彫刻が面白く、また作者不明の曽我蕭白派と思われる龍図も迫力。

四季の絵画では目玉の大観の「夜桜」はやはり華麗で圧巻。
また個人的に好きな古径の「木菟図」もあったのが嬉しかった。
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鳥文斎栄之展 [美術]

サムライ、浮世絵師になる!鳥文斎栄之展  千葉市美術館
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鳥文斎栄之(ちょうぶんさい・えいし1756−1829)は、元は旗本で将軍家治の時代に「絵具方」という役目を務めた後職を退き浮世絵師となった異例な経歴の持ち主。
画風としては楚々とした長身の美人画を始め、風景画なども手がけ、依頼による肉筆画も多かった。
武士出身ということもあってか、顧客に武家など上流階級を持っていたのも特徴で、質の良い絵の具をふんだんに使ったものも多い。
明治以降海外に流出したものが多いそうで、まとまった展覧会は初めてだという。

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《貴婦人の舟遊び》寛政4−5年(1792-93)頃
大判の三枚続き。こういうのを作らせてもらえたのもキャリアの始めからいい客がついていたから。

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《若那初模様 丁子屋 いそ山 きちじ たきじ》寛政7年(1785)頃
保存状態が素晴らしく良く、褪色しやすい紫も綺麗に残っている。着物の柄も美しい。

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《朝顔美人図》絹本着色 寛政7年(1795)
肉筆画。朝顔の描き方もどことなく品がある。

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《郭中美人競 大文字屋内本津枝》寛政9年(1797)頃 
背景に雲母を使ったり、着物の柄の刷りも見事。

どれも美しい絵ばかりで見応えがある。滅多に見られない作品も多そう。

なお、同時開催の「武士と絵画 」展も面白い。
栄之が武士出身というのにちなんだのだろう、同じく元は武士の海北友松や酒井抱一、浦上玉堂らの絵画が並ぶ。こちらもお見逃しなく。
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「本阿弥光悦の大宇宙」展 [美術]

「本阿弥光悦の大宇宙」展 東京国立博物館平成館

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室町時代末期に生まれ江戸時代初めまで活躍した光悦は、家業の刀剣鑑定家としてだけでなく、漆芸、書、陶芸などジャンルを超えた芸術活動をし、しかもどの分野でも一級の仕事を残した。日本では珍しいマルチな天才と言って良いだろう。
この時代を取り上げたどんな展覧会にも、必ずと言って良いほど光悦の作品が何かある。
だが光悦その人に注目した展覧会は意外と少なかったのではないか。

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会場に入るといきなりチラシのメインヴィジュアルにもなっている舟橋蒔絵硯箱がお出迎え。
形といい、文字を散らしたデザインといい、奇抜といっても良いくらい。

第一章では縁の刀剣や、法華宗に深く帰依していた光悦にまつわる経典など。
第二章では能の謡本や蒔絵。謡本の表紙に雲母を使った瀟洒な品の良い絵が美しい。

圧巻は第三章の書。肥痩を自由に操った文字と、宗達の下絵のコラボレーション。後にも先にもこんな見事な美の交歓があるだろうか。
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鶴下絵三十六歌仙和歌巻

さらに第四章の陶芸。楽家と繋がりがあって、基本は楽焼なのだろうが、そのしばりから離れた自由な作陶。

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黒楽茶碗 銘 時雨

こうして様々なジャンルの作品を見て思うのは、「家の芸」に縛られない自由さ、伸びやかさ。
江戸時代になると日本の多くの芸術芸能は家だの派だのというものに縛られて、他のジャンルに手を出すこともままならなくなっていったのでは。そんなこともふと考えさせられた展覧会。
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特別展「中尊寺金色堂」 [美術]

東京国立博物館本館

上棟から900年を祈念しての展覧会。
金色堂に安置されている仏像11体の他、建物内を飾っていた華鬘などの装飾物、経本なども展示。

会場に入るとまず大画面のディスプレイに金色堂内部が映し出される。これが圧巻。いや~、8Kってすごいですね。金色堂の中に本当にいるみたい。

仏像はどれも思っていたより小さい。ご本尊の阿弥陀三尊像を始め、どれも品の良さを感じさせる優しいお顔。
チラシなどの写真だと金ぴかに見えるが実際はもう少し落ち着いた色合い。長年の信仰の対象として大事にされてきたのが感じられる。

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阿弥陀三尊像

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二天像

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紺紙金銀字一切経

平安時代の陸奥といえば現代人からは想像できないくらい都から遠く離れた僻地だったはず。そこにこれほどの文化があったことに改めて感じ入ってしまう。

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金色堂の模型も。金ぴか。

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キュビズム展 [美術]

キュビズム展 国立西洋美術館

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パリ・ポンピドゥーセンターのコレクションを中心に、キュビズムの歴史を辿る展覧会。

キュビズムってどうも好きじゃない。ひと言で言えば平面と立体の組み合わせからなる絵、なんだろうけど、なまじ半端に具象絵画だから、これのどこに顔があってどこにギター(やたらとギターがでてくるのはなぜ)があるんだ、と頭を抱えてしまうのだ。

先駆けとなったセザンヌやアンリ・ルソーの絵画、プリミティヴアートと呼ばれたアフリカなどの彫刻を皮切りに、ピカソとブラックがキュビズムの扉を開ける。
確かに初期のブラックなど見るとセザンヌとの強い繋がりを感じる。

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ブラック「レスタックの高架橋」(1908)

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パブロ・ピカソ「女性の胸像」(1907)
これはまだほんとに初期の頃でわかりやすい。

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ジョルジュ・ブラック《果物皿とトランプ》(1913)
こうなってくると何が描かれてるのかさっぱり。

レジェなどになると平面より立体的な要素が強くなってきて、ちょっと面白いかなとも思う。
意外なところでシャガールやモジリアニもあって、どこがキュビズムという気もしないではなかった。

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モジリアニ「女性の頭部」
確かにプリミティブアートの彫刻に影響を受けてると思うけど。

シャガールの他にもロシア系の画家が数点。

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ラリオーノフ「春」(1912)
あまりキュビズムっぽくないけど、展示作品全体の中でこれがいちばん気に入った。

キュビズムが始まっていろいろ枝分かれして発展していく様子はなんとなく辿れた。だからといって、理解が深まったかというと素人にはやっぱり難しい。
でも思いがけずモジリアニやシャガールも見られたし見応えは十分。
カンディンスキーがなかったのは残念だったけど。
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繡と織 華麗なる日本染織の世界 [美術]

繡と織 華麗なる日本染織の世界 根津美術館

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奈良時代から明治時代にかけての日本の布装飾、中で織りと刺繍に注目して名品を見せる展覧会。

刺繍の種類の説明など、文字で読んでもちょっとよくわからないところは正直あった。実際に刺繍やってる人ならわかるんだろうけど。

まず奈良時代から始まり、正倉院宝物にあるような、刺繍を施した裂がいくつか。かなり褪色していて、破片のようになっているものもあるが、それでも細かい刺繍があるのがわかる。

展示の中心になるのは江戸時代の能衣装。
どれもデザインそのものが素晴らしく、それを彩る織りや刺繍さらに染色との見事なコラボレーションにはため息しか出ない。
西洋では豪華な衣装というと金銀宝石などが使われるが、そういうのがなくてもこれだけ豪華なものが作れる。誇るべき日本の文化だと思う。

ただ、現代ではこういう技術は引き継がれているのかしら、と心配にもなる。
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癒やしの日本美術展 [美術]

癒やしの日本美術展 山種美術館

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今年最初のエンタメ外出は山種美術館へ。
若冲や蘆雪のほのぼのした絵に始まって、玉堂や竹喬の穏やかな風景画、栖鳳や土牛の愛らしい動物画などが並ぶ。

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長沢芦雪 《菊花子犬図》

蘆雪の仔犬は師の応挙の作品に倣ったものだが、とにかくもふもふしていて可愛いと言ったら。

また上に挙げたような有名画家のものはもちろん、あまりよく知らなかった戦後の日本画家達の作品、画像はないが例えば林功の「月の幸」などにも印象的なものが多かった。
山種美術館のいいところは、現代の画家を含めて作品を紹介してくれるところだと思う。

第二展示室では安田 靫彦や土牛らの宗教的な祈りのこもった作品を展示。時節柄心が洗われるようだった。

お正月に見るには最適な展覧会だったと思う。

あまりに久しぶりでブログのアップの仕方を忘れていて手間取ってしまった。
続くかどうかわからないけど、ひっそり再開しました。
よろしくお願いいたします。
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モノクロームの冒険 [美術]

根津美術館
http://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/past2020_n06.html
既に終了。

水墨と白描の展覧会。
墨だけで色を使わず描く世界は、西洋画では版画でもなければ見られないと思う。墨の黒と言っても濃淡の幅の広さ、筆の細さ太さ、など単に白黒というどっちかではなくある意味実にカラフルとも言える。

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赤壁図屏風(部分) 長沢芦雪筆
水面、岸壁、樹木、それぞれを墨の濃淡で描き分けた蘆雪の傑作。

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梟鶏図 狩野山雪筆
この作品、山雪の絵の中でもとびきり好きで今回出品されていて嬉しかった。朝を告げる鶏と夜に生きる梟、どちらも表情がなんとも言えずユーモラス。ほんの少しの彩色が効いている。

一方、線で描くのを主としたのが白描。
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伝 住吉具慶筆 源氏物語画帖「花宴」
墨だけでなくこの作品のように部分的に彩色を施すものも。あまり濃淡や筆の肥痩はつけず線描の美しさで見せる。

水墨画も白描も余白が重要で、西洋画のように隅々まで塗り尽くすことがない。それによって風通しが良く、伸びやかで、見ていて心が広々としてくる気がするので好きだ。

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日本美術の裏の裏 [美術]

サントリー美術館
https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2020_2/index.html
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リニューアル記念展覧会の第2弾。
今回もコレクションを工夫した展示で見せてくれる。「生活の中の美の“愉しみ方”に焦点をあて」た内容。

例えば第1章空間を作る では屏風絵に描かれた四季や風景で飾られた部屋に景色が見える。

第2章 小をめでる はミニチュアの道具類。本物そっくりに作られた精緻な道具や器は職人が本気で作った逸品。昔から日本人はミニチュア好きなんだな。
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雛道具 七澤屋 一式

第3章 心でえがく はいわゆる下手でゆるい絵巻類。「かるかや」物語など、絵と内容のギャップがなんとも言えない。

第4章 景色を探す は器。偶然にできる焼きむらや釉薬の流れなど、どの角度から見るかで景色の変わる器をめでる。

第5章 和歌でわかる 有名な和歌で描かれた世界を器焼き物の柄に工夫して表す。見る人もそれと理解できる。昔の人は和歌をよく知っていたんだなあ。

第6章 風景に入る 池大雅の風景画に小さく描かれた人物になりきってみる。広重の東海道五十三次の旅人に見える景色は。など絵の中に自分が入ったつもりで描かれた景色を見ると違う風景が見えてくるかも。
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青緑山水画帖 池大雅

美術品をただ並べてみせるのではなく、どう見たら楽しいか、を提案してくれる。勉強という堅苦しさではなく楽しみ方を指南してくれる展覧会。


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