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至高の陶芸展 [美術]

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五島美術館

すごく久しぶりに来たこちらの美術館、いつの間にか改装したらしく綺麗になってた。

今回の展覧会は、日本、中国、朝鮮の焼き物。館所蔵の優品が並ぶ。

まず日本は桃山時代から江戸時代のものが中心。織部から瀬戸、楽、乾山などがずらり。

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重要文化財 鼠志野茶碗 銘 峯紅葉
白い亀甲紋が美しく浮かび上がり、赤みがかった釉薬と鼠色の釉薬の塩梅が絶妙な志野焼の逸品。

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長次郎赤楽茶碗 銘 夕暮
楽家初代長次郎の作。すっきりとした形と色のグラデーションが美しい。

中国はもちろん青磁をはじめ三彩、景徳鎮や交趾など。

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白磁蓮弁文水注 北宋時代・11世紀
純白の素地に透明釉が清楚。浮き彫りの連弁が華やかさを添える。

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交趾柘榴香合 明時代・17世紀
現在のベトナム北部を指す交趾で焼かれた香合。交趾の香合は江戸時代人気があったらしく、藤田美術館の亀の形のものも有名。これも形が愛らしい。

朝鮮ももちろん青磁や辰砂など優品ばかり。個人的には中国より朝鮮の焼き物の方が好き。

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粉青白地掻落牡丹文扁壺 朝鮮(李朝)時代・15世紀後半
ぼってりした形、おおらかな文様が掻き出しで描かれた素朴な味わいのツボ。日本では彫三島と呼ばれる。

どの国のものも広汎な種類を少しずつだが優品を揃えてあり見応え十分。展示総数はそれほど多くないのに、お腹いっぱいになれる。

もう一つの展示室では「更紗の魅力」と題して小裂の特集。こちらもインドを中心に西欧のものなど美しい貴重なものが並び、普段は先ほど見た茶碗の箱を包むのに使ってあるもの、などと書かれてあると「ふむふむ」となる。

展示を見た後は広いお庭も散策。花のない時季だったが緑が綺麗だった。
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9月歌舞伎座第三部 [舞台]

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秀山ゆかりの狂言
双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)
引窓

濡髪長五郎  吉右衛門
南与兵衛後に南方十次兵衛  菊之助
平岡丹平  歌昇
三原伝造  種之助
お早   雀右衛門
お幸   東蔵

8月に続いて四部制の歌舞伎座公演。ただ、花形世代中心だった8月から9月は大御所も出演し、少し本来の形に進んだ感じはある。
その中でもこの三部の「引窓」は、8月にはなかった義太夫狂言で、正直やっと歌舞伎らしい歌舞伎を見たという感激があった。
9月は例年なら秀山祭と銘打った興行だが、このコロナ禍の中で「祭」とつけるのは遠慮したらしい。ただこの三部だけは「秀山ゆかりの」とつけることでなんとか秀山を偲ぶ形となった。

吉右衛門は当たり役の与兵衛を婿の菊之助に譲り、濡髪に回ったが、さすがに大きい。大きな体を小さくするようにして花道を走り込んできて、滑り込むように家に入ってからの、再会を喜ぶ母に真実を告げられない苦しさを視線一つで見せ、「同じ人を殺しても、、、」の独り言に重い心をにじませる。後半は母への情に揺れながらも義を立てて与兵衛に捕まろうとする性根の真っ直ぐさを見せる。母の膝に手を置いて「未来におわす十次兵衛殿へ、立ちますまいがの」のあとの「やあ」「やぁ」「やぁ」のやあ3連発だけで泣ける。

東蔵の母お幸も実の息子と義理の息子の間で板挟みになる切なさを情たっぷりに見せる。この手の老母をやらせたらやはりこの人が今いちばんだろう。
雀右衛門のお早も、元は遊女の色香を残しつつ、気立ての良い、姑につくし、夫のこともぞっこん大好きな可愛い女房振り。

手堅い共演者の中で初役の菊之助の与兵衛は律儀で清潔な好青年と言った風で、これまで放蕩してきた浮いた感じがもう少しほしい気もするが、母が打ち明けてくれない寂しさを押し隠し、母の意を汲んで濡髪を逃してやる優しさがぴったり。播磨屋のやり方とは少し違うが、持ち役にしていくだろう。

4人のアンサンブルがとても良く、元々後味の良い作品だが、特に吉右衛門と東蔵の台詞の一言一言が胸に染みて人の優しさが胸を打つ。台詞で聞かせる義太夫狂言の良さにどっぷりはまれて幸せ。やっぱり歌舞伎はこうでなくっちゃ、と思わせてくれた一幕だった。





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近代日本画の華展 [美術]

大倉集古館

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昭和5年にローマで開催された「日本美術展覧会」の出品作を中心に、同時代の日本画家の作品を展示。
このローマ展は、横山大観、菱田春草ら日本美術院の画家だけでなく川合玉堂、竹内栖鳳ら官展系の画家たちも含む総勢80名が参加した、当時の日本画壇における一大プロジェクト。この展覧会を経済面で支援したのが大倉喜七郎。と言うわけでこの美術館とも関わりが深いのだ。と言うか、出品作のかなりはここの館蔵品になっている模様。

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大観が描いたローマ展のポスター
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菱田春草「かけす」
春草のこういう木や葉を描いた絵が好き。色数を抑えた表現が品が良くて。

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橋本関雪「暖日」
猫!ふわふわ。

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小林古径「木菟図」
ちょっとマンガみたいな木菟。

大観はおなじみの富士の画などが。大作「夜桜」は展示替えで拝見できず。
代わりに見られたのはこれ。

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鏑木清方「七夕」
これは左隻。苧環や琴など七夕の設えが見える。

中にはローマ展に参加した人々の写真などもあり。大倉が誂えた関係者の揃の法被もあった。

見たことがある絵が多いのは、毎年夏にホテルオークラでやっていた美術展に出品されていたものがあるから。「七夕」もそうだし。そうか大倉集古館の所蔵品だったんだな。

ちなみにこのローマ展のために大倉喜七郎は「現在のお金で50億から100億は使ったのではないでしょうか」だそうである。この時代の財閥の財力は桁違い。

出品数はそんなに多くないけど、タイトル通り近代日本画の中枢だった画家の作品が並んで見応えあった。


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おいしい浮世絵展 [美術]

森アーツセンターギャラリー
https://oishii-ukiyoe.jp/

浮世絵展は数々あれど、特定の絵師の特集とか、どこかの美術館のコレクション展とかがほとんどで、この展覧会のような描かれたものに注目したというのは珍しい。それも役者とか花魁とかの人物でなく、食べ物だ。

江戸時代というのは、それ以前に比べて食文化が格段に発達した時代で、今私たちが考える「和食」の基本ができあがったのがこの時代と考えていい。すなわち、そば、天ぷら、寿司、鰻、、、。こういった食べ物が上つ方のものでなく、庶民が口にできるものだったから、浮世絵にも描かれた。

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「春の虹蜺」歌川国芳 天保7年(1836)
鰻を食べようとする女。

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「縞揃女弁慶 松の鮨」歌川国芳
こちらは寿司。こどももほしいとねだるほど。 

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「風俗三十二相 むまそう」月岡芳年
天ぷら。

他にも団子などのお菓子や、スイカなど果物も、現在と変わらない。
また、江戸時代は参勤交代や伊勢参りなど旅をする人が増え、各地の名物料理が知られるようになった。

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「東海道五十三次 鞠子 名物茶屋」歌川広重
ここの名物はとろろ汁。

そしてこういう浮世絵だけでなく、絵の中に出てくる食べ物を再現した写真やその作り方のパネルも展示してあって、どれを見ても食べたくなってしまう。
江戸時代が身近に感じられて楽しい展覧会だった。
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帰ってきた!どうぶつ大行進 展 [美術]

千葉市美術館
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改装していた千葉市美術館のリニューアル第一弾の展覧会。千葉市中央区役所の上階にあったが区役所が移転、建物全体が美術館になった。企画展示室は従来通り7,8階。常設展示室が5階になり、その他のフロアもワークショップ夜図書室など充実した施設になったよう。

今回の展覧会は8年前に同館で開催された「どうぶつ大行進」展をさらにパワーアップした内容。日本美術で描かれた、ありとあらゆる生き物が登場する。

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森一鳳 《象図屏風》 江戸時代末期
いちばん大きいのはやはり象。

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曽我蕭白《獅子虎図屏風》宝暦(1751〜64)期頃
日本画の虎の絵って、どれを見てもユーモラス。

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小原 古邨 《木蓮に九官鳥》明治(1867-1912)末期
小さいものは子犬や猫、鳥、さらには虫まで。

とにかく質量ともに凄くて、どれも楽しい。館所蔵のものが多いので見たことがある絵がかなりあるが、何度見ても良い絵は素晴らしい。幅も広くて室町時代の水墨画から現代に近いものまで動物と名がつくものは虫から象までノンジャンル。日本画の世界ってほんとに生き物好きなんだな。西洋画でこれだけ集められないんでは。

くたくたになってたどり着いた最後の部屋に若冲や芳中らの名品がとどめを刺すように並んで圧巻。
図録ほしかったのになぜか制作なし。残念だ。

さらに常設展示もなかなか良かった。千葉市美、おすすめです。
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月岡芳年 血と妖艶 [美術]

太田記念美術館

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芳年は国芳の弟子で、幕末から明治にかけて活躍した。美人画などの繊細な絵も美しいが、「血みどろ絵」と呼ばれる凄惨な殺しの場面を描いた絵も人気を博した。今回の展覧会は、前後期に分けて、芳年の画業を「血」「妖艶」「闇」という3つのキーワードで探る。

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「東錦浮世稿談 向疵与三」
これは芝居の一場面だが、それまでの役者絵でここまで血を描いたものはなかっただろう。
これ以外の血みどろ絵もかなり残虐なシーンを描いている。現代の目から見ると、写真に比べればリアルさでは劣るのだが、かえって想像力をかき立てられる気もして怖い。

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「風俗三十二相 いたさう」
一方こちらは美人画の類いで、師の国芳にも似たようなシリーズがあるが、芳年の繊細な線描の美しさや着物の描き方に腕の確かさが感じられる。

国芳が例えば妖怪や幽霊画で怖がらせるとすれば、芳年は本物の人間の業を描いてゾクッとさせる。中には目を背けたくなるものさえあるが、やっぱり面白い。
前後期入れ替え。後期も見たい。
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三井家が伝えた名品・優品展 後期日本の古美術 [美術]

三井記念美術館

前期の東洋美術に続いて後期は日本美術。

第一室の茶器から圧倒される名品揃い。楽茶碗俊寬の渋さ、仁清の今見てもモダンな美しさ、志野の優美さ。

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黒楽茶碗(俊寛)長次郎作
どこがどう良いのか、正直よくわからない楽焼だが、それでもなんとなく見入ってしまう。

絵画は応挙がずらりで堪能。国宝雪松図を盛夏に見る贅沢に酔う。

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国宝『雪松図屏風』 円山応挙筆(左隻) 6曲1双江戸時代・18世紀
例年はお正月に展示される。夏に見るのは珍しい。

書跡、能の面等も。
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国 宝『熊野御幸記』 藤原定家筆 1巻 鎌倉時代・建仁元年(1201)

どれもこれも名品揃い。さすがは天下の三井のお宝と言うしかない。圧倒されました。
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