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The UKIYO-E 2020 ― 日本三大浮世絵コレクション [美術]

東京都美術館
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太田記念美術館(東京・原宿)、日本浮世絵博物館(長野・松本)、平木浮世絵財団の日本三大浮世絵コレクションから選りすぐりの作品を集めた大浮世絵展。

初期から江戸末期までほぼ年代順、作家毎にまとめて数枚ずつ。何しろ作家の数も多いので一人あたりは数点ずつになってしまい、お目当ての画家がいるとかえって物足りないかもしれないくらい。

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礒田湖龍斎 「雛形若菜の初模様 丁子屋内若鶴」 
色数に限りがあった初期から、錦絵が誕生した頃活躍した湖龍斎。吉原の風俗が人気。これも華やかな衣装が目を引く。

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歌川国政 「市川鰕蔵の暫」
役者絵は美人画と並ぶukiyoeの人気ジャンル。この構図は当時としても珍しかったのでは。

いちいちあげるのもきりがないほど、菱川師宣から、鈴木春信、鳥居清長、喜多川歌麿、東洲斎写楽、葛飾北斎、歌川広重、歌川国芳まで約60名の絵師の作品。どれも保存状態も良い絵ばかり。お腹いっぱい。これで前後期入れ替えだから恐れ入る。後期も行かなきゃ。
時間予約制なので比較的楽に見られるが、ガラガラというわけではもちろんない。
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ART in LIFE, LIFE and BEAUTY [美術]

サントリー美術館

改装のため休館していたサントリー美術館のリオープン第一弾の展覧会。本来5月からの予定だったのが、ご多分に漏れずコロナの影響で延期。やっと開催にこぎ着けた。
美術館の基本理念である「生活の中の美(Art in Life)」のもとに集められた所蔵品の中から、化粧道具や着物、酒器などの生活道具から、武士の装いである鎧兜など多岐にわたる品々が見られる。

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菊唐草蒔絵化粧具揃
大名のお姫様の道具だろうか。使うのがためらわれそうな豪華なもの。

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色絵葡萄鳥文瓢形酒注
有田らしい絵付けが美しい器。こんなので飲んだらお酒も一層美味しいだろう。

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縞螺鈿蒔絵茶箱
異国趣味の螺鈿を使った意匠が珍しい。

またこの展覧会では、古い作品だけでなく、野口哲哉や山口晃など現代美術家の作品も展示してあって、それも面白い。特に野口のミニチュアフィギュアとでも言うのか小さい武士の人形が屏風絵の前に置いてあったりするのが奇妙にマッチしていて楽しかった。


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八月花形歌舞伎第三、四部 [舞台]

歌舞伎座

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先週に続いて三、四部を。

第三部
吉野山

佐藤忠信実は源九郎狐 猿之助
逸見藤太  猿弥
静御前  七之助

吉野山、久しぶりの澤瀉屋型。猿之助の狐忠信はひたすら可愛く格好いい。幕切れぶっ返って狐の衣装になってのの引っ込みが沸かせる。
七之助の静はクールビューティ。個人的にはもうちょっと可愛げほしいなぁ。まあ忠信に対しては主人格だけど、頼りにするのは彼だけという甘えのようなものもちょっとは見えてもいいと思うのよ。たぶん玉様仕込みなんだろう。
猿弥の藤太のコミカルさは無二。

藤太と捕り手のやり取りが花道でなく舞台上だった。花道をなるべく使わないようにだろうな。

第四部
与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)
源氏店

切られ与三郎  幸四郎
妾お富   児太郎
番頭藤八  片岡亀蔵
和泉屋多左衛門  中車
蝙蝠の安五郎  彌十郎

時間の関係か見染の場はなく源氏店から。しかも黒塀外はなくいきなり室内に藤八が入り込んでいるところからスタート。それだけでもやや興を削がれる感じ。
その上コロナ禍で密な接触を防ぐために演出の変更がいくつかあり、藤八にお富が化粧してやる場面は藤八が自分でおしろいを塗る。また、幕切れのお富と与三郎が抱き合うシーンもソーシャルディスタンディングで二人で手ぬぐいを取り合って幕。好意的に見る向きも多いようだがあの幕切れは私は嫌だ。周りからも笑いが起こってしまっていてまるでウケ狙いのように見えてしまう。そうすると、与三郎とお富でなく幸四郎と児太郎になってしまうのだ。笑いが起きないなら良いんだけど。いっそ「そんならお前は兄さん」でぶっつり切れる従来のやり方の方が歌舞伎らしくて良いと私は思う。

見慣れた古典の演出を変更する場合、やはりそうするだけの説得力が必要で、今回の源氏店のようにコロナのせいでやむを得ず、だと見ていて「あ~あ、こうするしかないのか」というがっかり感が強い。

幸四郎の与三郎は確かに頬被りの中の憂いのある顔が美しく、甘ったれな坊ちゃんが身を持ち崩しきれない雰囲気はあったけど。周りがいかんせん初役が多いせいか世話物の空気感が薄い。

児太郎のお富も期待したほどでは。婀娜っぽさとがさつさは違うはず。台詞も教わったとおりに一応一生懸命やってるけど実がないというか。(それでもちゃんとなぞれているのは偉いが) 児太郎はもっと練っていけば当たり役になりそうなので、次はぜひ普通の演出でやらせてあげたい。

それは中車も彌十郎も同じでまだ役の性根を掴み切れていない感じ。みんなもう一歩。再演に期待。(しかし、中車と彌十郎はニンが逆だと思うが)

とは言え、他の三部が舞踊ものだったのと比べ、制限ある中で芝居をやるのはかなりの苦労があると思う。そこは健闘を称えたい。(何様ですいません)


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八月花形歌舞伎第一、二部 [舞台]

歌舞伎座

3月から新型コロナウイルスのために休場していた歌舞伎座が8月からやっと再開された。
異例の四部制、各部で出演者はもちろんスタッフら関係者も総入れ替えにし、客席は一席おき、大向こうも禁止、休憩なし、飲食禁止、売店も休業、、、と前例のないスタイル。たとえ売ってる席が全部埋まっても赤字かもしれない。それでも幕を開けようという劇場側の強い志に感じ入る興行である。

8月は例年若手中心の納涼公演だが、今年も顔触れ自体はいつものものとそう変わらない花形公演。

第一部
連獅子

狂言師右近後に親獅子の精 = 片岡愛之助(6代目)

狂言師左近後に仔獅子の精 = 中村壱太郎(初代)

浄土の僧遍念 = 中村橋之助(4代目)

法華の僧蓮念 = 中村歌之助(4代目)

愛之助と壱太郎という上方役者同士の共演。親子でやることが多い演目で、親戚でもない二人がやるのは比較的珍しい。
幕が開く前に、出演者のご挨拶アナウンスが日替わりで流れる。私が見た日は橋之助だった。
幕が上がって、居並ぶ長唄連中も皆布マスク。前もって情報があったので驚かないが、やはり通常の公演ではないことを改めて意識する。それでも、演奏が始まると、ああやっぱり生の音は良いなと胸が熱くなる。

普段の親子共演だと、こどもの方が親にどれだけついて行けるか、と言う視点で見てしまうことが多いが、今回のように二人とも大人だとなんだか実力伯仲というか、下手すると踊りは壱君の方が安定していたりして、微苦笑。前シテは二人ともとても神妙に行儀良く踊っていて、第一部の幕開きを飾る緊張感のようなものも伝わってきた。

後シテも、二人ともやたらブンブン振るのではなく格調を保って務めていた。壱太郎も、数年前にお父さんとやった時はすごい高速で振っていたが、今回は落ち着いた感じで、でも綺麗な毛振りだった。

宗論は橋之助と歌之助の兄弟で。狂言らしい可笑しさはまだまだだが、一生懸命やっているのは伝わった。

大向こうはないが、客席からは熱い拍手が沸き起こっていた。これにも胸熱。

第二部
棒しばり

次郎冠者 = 中村勘九郎(6代目)

太郎冠者 = 坂東巳之助(2代目)

曽根松兵衛 = 中村扇雀(3代目)

二部の開幕挨拶はこの日は巳之助だった。

勘九郎と巳之助の組み合わせは二度目か。双方の父親同士の当たり役で、二人での初演の時は父を偲んで目頭が熱くなったのを思い出す。今回は別の意味でまた胸熱。
勘九郎は、生の舞台で踊れる喜びを爆発させるような活きの良さで、キレッキレの体の動きと絶妙な足さばきに目を見張る。さらに愛嬌のあふれる様子も楽しい。
巳之助も負けじと溌剌とした様子。それでも行儀は良いのがいい。
扇雀の大名も威厳はありながらおかしみもあってまずまず。
とにかく、この数ヶ月の鬱憤を吹き飛ばすような明るく清々しい舞台だった。短くてあっという間に終わってしまって、もっと見ていたいのに、と思うほど。

一部も二部も、客も生の舞台を待っていたけど、役者さん達も待っていたんだなあ、と実感できた。
どうか無事にこのまま舞台を開け続けることができますように。

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