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ウィスペルウェイ・チェロ・リサイタル [音楽]

3月12日(水) 紀尾井ホール
iwispewey2014.JPG

ピーター・ウィスペルウェイ Pieter Wispelwey (チェロ / Cello)
パオロ・ジャコメッティ Paolo Giacometti (ピアノ / Piano)

オール・ベートーヴェン・プログラム
All Beethoven Program

チェロ・ソナタ 第2番 ト短調 Op.5-2
Cello Sonata No. 2 in G minor, Op. 5-2

モーツァルト「魔笛」の「娘か女か」の主題による12の変奏曲 ヘ長調 Op.66
12 Variations in F major on Ein Madchen oder Weibchen from Mozart's Die Zauberflote, Op. 66

チェロ・ソナタ 第5番 ニ長調 Op.102-2
Cello Sonata No. 5 in D major, Op. 102-2

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モーツァルト「魔笛」の「恋を知る男たちは」の主題による7つの変奏曲 変ホ長調 WoO 46
Variations in E flat major on Bei Mannern, welche Liebe fuhlen from Mozart's Die Zauberflote, WoO 46

チェロ・ソナタ 第3番 イ長調 Op.69
Cello Sonata No. 3 in A major, Op. 69

アンコール
ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第1番より終楽章

ウィスペルウェイによるオール・ベートーヴェン・プログラムのリサイタル。
しっかりと構築された、知的で緻密で隙のない演奏。上手いな、やっぱり。
でも本音を言うと、ううん、私の好みのベートーヴェンじゃないんだなあ、、、と最後まで思いながら聞いていた。あくまで好みですよ。好みの問題。もうちょっと包容力というか、懐深い感じがほしかった。なんか理詰めに過ぎるような気がして。ウィスペルウェイは近現代の方が好きかも。
前に聞いたバッハの組曲は同じように理知的でも、これはこれで素晴らしいと思った。たぶん、多様な解釈を許せるバッハと、求めるものが決まりがちなベートーヴェンの差なんだろうな。

とは言え、久しぶりにどっぷりベートーヴェンを聴くとやっぱり良いなあ。交響曲はもちろんだが室内楽も良い。ソナタの3番はチェロソナタの名曲。
ショスタコだのプロコだのブリテンだの、この頃新しめのに目(耳)を奪われがちだったが、ベートーヴェンは改めてすごいな、と。まるで花形歌舞伎見て若手の綺麗さ格好良さに感心した後で、大幹部の芝居を見て「大御所は格が違うな」と思うような感じだった。あ、ウィスペルウェイの感想とずれてしまいましたね、すいません。

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ジャン=ギアン・ケラス 無伴奏チェロリサイタル [音楽]

11月22日(金) 東京オペラシティ コンサートホール

ベンジャミン・ブリテン生誕100年バースデー・コンサート
プログラム
ブリテン:無伴奏チェロ組曲第1番 op.72 
コダーイ:無伴奏チェロ・ソナタ op.8 
ブリテン:無伴奏チェロ組曲第2番 op.80 
ブリテン:無伴奏チェロ組曲第3番 op.87 
アンコール
  デュティユー:《ザッハーの名による3つのストローフ》から 第1曲

前回の来日はアルカント・カルテットとしてだったので、リサイタルは久しぶり。それも無伴奏。2公演有り、一夜はバッハの組曲全曲というプログラムだったが、前にバッハは聴いたのでこちらにした。
奇しくもこの日はブリテンの誕生日で、100才を祝うコンサートとなった。

ブリテンとかコダーイとか、いわゆる現代曲にそう通じているわけじゃないので、たまには聞いていてしんどいこともあるのだが、このケラスやウィスペルウェイの演奏は無知な私でもなんとなく刺激的で面白く聴ける。

チェロというと、ロストロポーヴィチやカザルスのような骨太で力強いのを思うと、ケラスのはちょっと違う。もっと繊細で、良い意味で軽やかさがある。私はこの人の演奏を聴くと、浮遊感、という言葉がいつも浮かぶ。

この日もケラスの緻密で知的な演奏は、しかし冷たさとは違いブリテンのさまよえる魂をそっと慰撫するようでさえあり、強さと美しさに恍惚となる。何なんだ?これは。厳しく儚い、寂しくて優しい。得難い経験をした。

間に挟まれたコダーイも違和感はなく、曲自体の面白さではひょっとするとこちらの方が良かったかも。
ブリテンにしろコダーイにしろ、現代奏法を伴う曲は、CDで聞くより生で聞く方が「ああ、こういうテクニックなのか」と見てわかるのが面白い。


アンコールは今年亡くなったデュティユ-のソロで締めくくり。ブリテン、コダーイ、デュティユ-と見事に20~21世紀へと繋がるプログラミングもケラスらしい。
次はいったい何を聞かせてくれるのか、早くも期待に胸が沸く。

さらにこの演奏会、内容も良かったけど、ピアニッシモで終わった余韻をケラスが弓を下げるまで身じろぎもせずに聴き入った観衆にも拍手。客の入りはそう良くなかったみたいだけど(大ホールだからねえ)、ほんとに音楽好きな人が多かったよう。

ブリテンもまさか極東でこんな素晴らしいバースデーパーティーをやってもらえるなんて想像もしてなかっただろうな。ハッピーバースデー、ブリテン!

ブリテン : 無伴奏チェロ組曲 (全曲) (Briten : Suites for Solo Cello / Jean-Guihen Queyras (Vc)) [輸入盤]

ブリテン : 無伴奏チェロ組曲 (全曲) (Briten : Suites for Solo Cello / Jean-Guihen Queyras (Vc)) [輸入盤]

  • アーティスト: ブリテン,ジャン=ギアン・ケラス (Vc)
  • 出版社/メーカー: harmonia mundi France
  • 発売日: 2013/02/20
  • メディア: CD




エルガー : チェロ協奏曲 他 (Sir Edward Elgar : Cello Concerto | Tchaikovsky : Rococo Variations / Jean-Guihen Queyras , BBC Symphony Orchestra , Jiri Belohlavek) [輸入盤]

エルガー : チェロ協奏曲 他 (Sir Edward Elgar : Cello Concerto | Tchaikovsky : Rococo Variations / Jean-Guihen Queyras , BBC Symphony Orchestra , Jiri Belohlavek) [輸入盤]

  • アーティスト: エルガー,ドヴォルザーク,チャイコフスキー,イルジー・ビエロフラーヴェク,BBC交響楽団,ジャン=ギアン・ケラス (チェロ)
  • 出版社/メーカー: harmonia mundi France
  • 発売日: 2013/08/14
  • メディア: CD



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ボズ・スキャッグス・ライヴ [音楽]

11月19日(火) 渋谷公会堂

去年もジョイントで来日したので、2年連続のライヴ。さらに今年は春に久しぶりに新譜を出したので、それをひっさげてのツアーとなった。新譜メインのツアーはほんとに久しぶりなんじゃないかな。

曲は、最初に「jojo」をやったあとは、その新譜から4,5曲。
その後は懐かしいヒット曲のオンパレード。「Lido Shuffle」「Harbor Lights」[Lowdown」それからそれから、なんだっけ。とにかく名曲がずらり。オールドファン感涙。

ボズはね、声が昔とちっとも変わらない。もう69才なのに。もちろん見た目はすっかり爺さんだけど、渋くて格好良かった。

よく考えると、去年のジョイントとかなり曲はかぶっていて、もうライヴのセットリストは限定されているのかも。やりたい曲しかやらない、ということなのかもしれない。でも良いよ、あの歳で新譜も出して、ツアーやるんだから、好きな歌だけ歌ってくれれば、と思う。

バンドはギター、ベース、ドラムにツインキーボード(一人はサックスも)のシンプルな編成だが、さすがに凄腕。
黒人女性シンガー(Monet)がめちゃくちゃパワフル。途中1曲ソロで歌ったけど、昔のモータウン風というか、ソウルでした~。楽しかったわ。前のツアーも一緒に来てたかな?

アンコールも2回出てきて、「We are all alone」もやってくれ、最後は「Loan me a dime」で締めた。
もう何にも言うことないわ。また近いうちに来てくれますように。


Memphis

Memphis

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Savoy Jazz
  • 発売日: 2013/03/07
  • メディア: CD



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ロイヤル・コンセルトヘボウ管演奏会 [音楽]

11月18日(月) 東京文化会館

マリス・ヤンソンス(指揮)

プログラム
ワーヘナール: 序曲「じゃじゃ馬ならし」 op.25
ストラヴィンスキー: バレエ「火の鳥」組曲 (1919年版)
   ***
チャイコフスキー 交響曲第5番 ホ短調 op.64

何年ぶりかな。かなり久しぶりにコンセルトヘボウを生で聴いた。
近年どこのオケもグローバル化というか、個性がなくなったと言われる中コンセルトヘボウとて例外とは言えず、昔の良い意味でローカルないぶし銀の響きは失せて今風の輝かしいサウンドになっているのは確か。しかし、というか、その響きのなんと豊潤なことよ。

木管の個々の美しい音とアンサンブルの緻密さ、金管の切れのいい音、そしてそれを支える弦楽器群の厚みのあるズシンと響く音。

コンセルトヘボウは音のダイナミックレンジがとても広い。繊細な最弱音から地響きのする最強音までがっちり鳴って、音の密度が高くて音圧が凄い。音の粒が降って来る感じ。まさしく音のシャワー。これぞ生の醍醐味。

それを操るヤンソンスの指揮。奇をてらわずオーソドックスできっちりしていて、しかしツボを外さずグイグイ聞かせる職人的上手さ。本当にオケをちゃんと聴かせてくれる指揮者だな。

1曲目は珍しい曲で初めて聞いたかも。軽やかなステップを踏むような演奏でまずウォーミングアップ。

2曲目の「火の鳥」は、ストラヴィンスキーの絢爛たる音絵巻。眩暈をおぼえるようなその美しさにただうっとり、呆然。終曲ではまるで本当に火の鳥が飛び立つのが見えたようで、感動して涙がにじんだほど。

そして最後のチャイコの5番。次々に現れる木管ソロの見事さはもちろんだが、雄大で包み込むようなトゥッティの響きが会場を満たす。特に第2楽章のゆったりとして雄渾な音楽が胸に染み、そして最終楽章のぐぐぐいっとフィナーレになだれ込む圧倒的な迫力とそれでも乱れない隅々まで統制の行き届いたアンサンブルの見事さ。この第4楽章のティンパニ-がまた素晴らしかった。

聞き終わって脱力するほどのめり込んで聴いていた。月並みだが、ほんとに格好いい演奏だった。もうただただ幸せ。

アンコールはチャイコフスキー: バレエ「眠りの森の美女」から パノラマ
交響曲とは打って変わってロマンチックで夢見るように美しい曲でこの夜を締めくくった。

この日は皇太子様ご夫妻がお見えだった(私の席からは見えなかったけど)。皇太子様お一人でこういう場へいらっしゃることは多いがお二人だったので、両隣のお客さんと「珍しいですね」「良かったですね、お二人で来られて」などと、終演後ちょっとした会話が弾んだ。


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ムーティ conducts ヴェルディ [音楽]

10月31日(木) すみだトリフォニーホール

指揮:リッカルド・ムーティ
管弦楽:東京春祭特別オーケストラ 
ソプラノ:安藤赴美子
バス・バリトン:加藤宏隆
合唱:東京オペラシンガーズ
合唱指揮:ロベルト・ガッビアーニ、宮松重紀

■曲目
ヴェルディ:
 歌劇《シチリア島の夕べの祈り》序曲
 歌劇《シチリア島の夕べの祈り》第3幕より バレエ「四季」
 
 歌劇《運命の力》序曲
 歌劇《運命の力》第2幕より「天使の中の聖処女」
 歌劇《マクベス》第4幕より「虐げられた祖国」
 歌劇《ナブッコ》第3幕より「行け、わが想いよ、黄金の翼にのって」
 歌劇《ナブッコ》序曲

ヴェルディ・イヤーの今年、ヴェルディの演奏会は多々あれど、指揮者に限って言えばムーティはまさに真打ち登場といったところだろう。よくを言えば、スカラ座を振ってるのを聞きたかったけれど仕方がない。

ムーティ、もうお幾つになったんだろう。老眼鏡こそかけてるけど、指揮ぶりは相変わらずダイナミックで颯爽。あ~、背中からフェロモン出てる~。(笑)
前半は、オケが鳴りきらずやや物足りない。トップ・プレーヤーが集まっているとは言え寄せ集めオケの悲しさか、詰めが甘いというか、今一歩の精緻さがほしい。それになにより、ヴェルディらしい、どこかふつふつと血がたぎるような熱さが感じられず欲求不満に陥る。

ううむ、さすがのムーティをもってしても日本のオケではヴェルディは難しいか、と思ったが、後半に入ると合唱が入ったせいもあってか一気にヴォルテージが上がった模様。
オケの鳴り自体も良くなったし、なにより東京オペラシンガーズが上手い。まあそれほど合唱に詳しくない私が言ってもなんだけど、これまでにもこの東京春祭で聞いてきたが、この合唱団は世界水準だと思う。
ムーティも乗りに乗って、ヴェルディの派手さと陰鬱さが同居する音楽をくっきりとコントラストをつけ、オケと合唱の隅々にまで統制する力を発揮。そう、ヴェルディは華麗なだけでなく、ドロドロした陰惨さもあるのだ。

9月に聞いたドゥダメルとはオケも曲も一部違うので一概に比較できないけど、ムーティのを聞いてから思い返すとドゥダメルのヴェルディは明るかった。華やかで楽しかった。ヴェルディのオペラのどうしようもない陰惨さがなかった。そこはやはりオペラの経験の有無なんだろうなあ、と。

昔ムーティがスカラ座でやった「ナブッコ」で、「行け、わが想いよ、黄金の翼にのって」が終わると拍手が鳴り止まずオペラ上演中異例の再演奏となったという伝説を思い起こさせるこの曲も聴けて、最後はアンコールはなしにナブッコ序曲で華麗に締めくくった。

久しぶりのムーティ節、堪能できて満足満足。
来年はローマ歌劇場と来るらしいが、オペラからは足を洗っているので行かないつもり。それよりシカゴ響とはいつになったら来てくれるんだろう。
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ミラノ・スカラ座管弦楽団演奏会 [音楽]

9月16日(日) NHK ホール

NHK音楽祭の一環。人気急上昇、というよりほとんどクラシック界の寵児と言って良い人気の指揮者ドゥダメルが名門スカラ座管を振るとあって、今年のNHK音楽祭の中でも話題度はいちばんだったのでは。
プログラムは今年生誕200年のヴェルディ・ガラ。

【曲 目】
ヴェルディ / 歌劇 「 ナブッコ 」 序曲
歌劇 「 アイーダ 」から
「清きアイーダ」 「勝って帰れ」 「運命の石が ~さらばこの世」
歌劇 「 椿姫 」から前奏曲
歌劇 「 ルイザ・ミラー 」 序曲
歌劇 「 トロヴァトーレ 」から
「ああ、あなたこそ私の恋人~見よ、恐ろしい火よ」
「静かな夜~この恋を語るすべもなく」
歌劇 「 シチリア島の夕べの祈り 」 序曲
歌劇 「 運命の力 」 序曲
<アンコール>
マスカーニ作曲/歌劇 「 カヴァレリア・ルスティカーナ 」から間奏曲

グスターボ・ドゥダメル(指揮)
マリア・ホセ・シーリ(ソプラノ)
スチュアート・ニール(テノール)

スカラ座管を聴くのは久しぶり。ムーティが振っていた頃は来日するたびに聴いていたけど、彼がやめた後はオペラ公演はあってもオケ単独のはあまりなかったし、あっても聴く気になれなかった。

ドゥダメル、前半は無理に自分の個性を押し出そうとせず、オケとソリストにゆだねている感じだった。それでも十分にヴェルディの音楽の華々しさ、力強さが出るのはやはりオケの力だろう。会場の音響が良くないので、弦の豊潤な響きはいまいち伝わりにくかったが、木管の透明感のある美しさ、金管群の輝かしい音色は素晴らしい。

だが休憩後は一気にヴォルテージが上がった。ドゥダメルも遠慮なくオケを操る。ドゥダメルのキレの良さ、躍動感がオケをギュッと掴んで爆発し、観客を鷲掴みにする。あれを聴いたら虜になる。といってもものすごくエキセントリックとかアゴーギグな感じではない。あくまで音楽が主。ヴェルディの音楽の魅力を最大限に引き出そうとするような感じなので、こちらもなんだか安心して楽しめる。

歌手の方は、テノールのニールは力強く華やかな声を披露し、「トロヴァトーレ」ではアンコールも。でも同じ曲をもう一度歌ってた。どうせだったら「リゴレット」の女心の歌でもうたって欲しかったな~。ソプラノのシーリは清潔感のある歌声。リリコではないかもだが、プッチーニの方が合いそうな気はした。

歌劇全幕観るならヴェルディよりプッチーニの方が好きだけど(といってももう何年もオペラ観てないが)、こういう風に抜粋でやるならヴェルディに分があるのかな。歌はともかくオーケストラの曲としてはヴェルディの方が聴き応えがある。「ナブッコ」や「運命の力」の力強さ、「椿姫」「シチリア島」の華麗さなど、ヴェルディを知り尽くしたスカラ座管が十八番をドゥダメルに上手くのせられて自信たっぷりに演奏。否が応でも盛り上がる。
そして最後のアンコールは「カヴァレリア・ルスティカーナ」で静かに幕を下ろす味な演出。
理屈抜きに音楽を堪能した演奏会。
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シャルル・デュトワ指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 [音楽]

6月27日(木) サントリーホール

プログラム
メンデルスゾーン: 序曲『フィンガルの洞窟』 op.26
ショパン: ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 op.11
ドビュッシー: 海
ラヴェル: バレエ音楽『ダフニスとクロエ』第2組曲
アンコール
   ベルリオーズ:ハンガリー行進曲(ラコッツィ行進曲)

ピアノ ユジャ・ワン

思えば、デュトワの名前を初めて知ったのは、モントリオール響を指揮してのフランスものが評判を呼んだからだった。かれこれ30年くらい前かしら。もちろん、今はフランスものばかりの指揮者ではないが、デュトワがドビュッシートラヴェルを振ると聞いてはこれは聴かなくちゃ、という気になった。

前半、序曲に続いては、今売り出し中のユジャ・ワンをソロに迎えてのショパン。ユジャ・ワンはまだ若い女の子と言っても良いくらいの人。まず衣装が真っ赤なノースリーブのミニ・ドレスでびっくり。いや、前に写真などで彼女の衣装が「クラシックらしくない」のは知っていたから、びっくりと言うより、おお、今日はこれか、という感じだが。でも演奏はすごい。第1,3楽章の切れの良さ、瑞々しいタッチに加え、第2楽章の清冽な美しい響きも印象的。若くて勢いのあるピアニスト。先が楽しみ。

後半が待望のドビュッシーとラヴェル。俗に音の印象派と言われるドビュッシーも、音の魔術師ラヴェルも、まさしく絢爛たる音の色彩絵巻。これがデュトワ・マジックだろうか。どちらかというと控えめな印象だったロイヤル・フィルから華麗で鮮やかな音を引き出した。特に木管パートの品の良い美しい音色が耳に残る。

うん、やっぱり聴きに行って良かった。とても美しい音楽を聴いた、という演奏会。


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カサンドラ・ウィルソン・ライヴ [音楽]

6月2日(日) ブルーノート東京
http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/cassandra-wilson/
久しぶりのブルーノート。カサンドラ・ウィルソンを生で聞くのも久しぶりで、うきうき。
日曜の1stステージは5時開演。前からそんな早かったかしら?ちょっと中途半端な時間のせいか、満席ではなかったようで、自由席だったけどフロア外側の6人テーブル、相席はお二人だけで比較的ゆっくり座れた。あのテーブル、満席だと結構きちきちなのよね。

Cassandra Wilson(vo)
カサンドラ・ウィルソン(ヴォーカル)
Gregoire Maret(harmonica)
グレゴア・マレ(ハーモニカ)
Charles Burnham(vln)
チャールズ・バーナム(ヴァイオリン)
Brandon Ross(g)
ブランドン・ロス(ギター)
Lonnie Plaxico(b)
ロニー・プラキシコ(ベース)
Mino Cinelu(ds,per)
ミノ・シネル(ドラムス、パーカッション)

オープニングはマレのハーモニカをフィーチャーしたインストの演奏で。ここでこのメンバーのすごさがわかる。マレとロスは前からカサンドラのツアーではおなじみだが、今回はヴァイオリンのバーナムも加わってますます無国籍というかオーバージャンルな音楽世界が広がる。

カサンドラが登場すると、第一声を聞いた途端に彼女のオンリーワンな世界に引き込まれてしまう。深い深~い声が心に染みわたるようで。何かがじわじわっと胸を満たしていくような。

曲はいちばん新しいアルバム「アナザー・カントリー」からが中心。
カサンドラは時に自分もギターを弾いたり、またバックの演奏だけの曲もあったり、あまり歌いまくるというライヴではない。そこはちょっとだけ物足りない気もするけど、それでもあれだけ圧倒されるんだから凄いと思う。
ほんとに素敵なライヴでした。

Kimej.jpeg
飲めない人なので、ブルーノートではいつもスイーツ。ここのは美味しいんですよ~。今回は今日のスイーツ、サクランボのタルト、抹茶アイス添え。

B7oeS.jpeg
6時半過ぎに外に出たらまだ明るくて、変な感じだった。



Another Country

Another Country

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Ent. One Music
  • 発売日: 2012/06/26
  • メディア: CD



Belly of the Sun

Belly of the Sun

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Blue Note Records
  • 発売日: 2002/02/28
  • メディア: CD

いちばん最初にはまったのはこのアルバムだったかな。ジャズと言うよりブルースに近い感じで、衝撃だった。

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ヒラリー・ハーン・リサイタル [音楽]

5月14日(火) 東京オペラシティ
ヒラリー・ハーン.jpg

ヒラリー・ハーン Hilary Hahn(ヴァイオリン/Violin)
コリー・スマイス Cory Smythe (ピアノ/Piano)
プログラム
アントン・ガルシア・アブリル:"First Sigh" Three Sighs より *
Antón García Abril: "First Sigh"

デイヴィッド・ラング:"Light Moving" *
David Lang: "Light Moving"

モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 K.302
Mozart: Sonata for Violin and Piano in E- flat Major, K.302

大島ミチル:"Memories" *
Michiru Oshima: Memories

J.S. バッハ:シャコンヌ (無伴奏パルティータ第2番より)
J.S.Bach: Violin Partita No.2 in d minor Chaconne

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リチャード・バレット:"Shade" *
Richard Barrett: Shade

エリオット・シャープ:"Storm of the Eye" *
Elliott Sharp: Storm of the Eye

フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ 第1番 イ長調
Fauré: Violin Sonata No.1 in A major, op.13

ヴァレンティン・シルヴェストロフ:"Two Pieces" *
Valentin Silvestrov: "Two Pieces"

2年前の演奏会が震災の影響でキャンセルになったので、久しぶりに生で聞いた。
ヒラリーのヴァイオリンはとにかく音が透明感があって綺麗。その分、暖かみや情感が薄い気がする。
今回のプログラムは、*印のついた、彼女のための委嘱作品を並べて、その間にモーツァルトなどを弾くという意欲的、と言うかちょっと変わったもの。
委嘱作品は当然、初めて聞く曲ばかり。プログラムを買わなかったので解説を読んでいなかったが、聞いた話では27人の作曲家に書いてもらった中から選んだとか。この中の何曲かは録音もするらしい。
現代音楽と言ってもいろいろで、最初のアブリルのは瞑想曲のような穏やかさ、ラングはまるで無窮動のようなメロディ、大島のは映画音楽のような雰囲気。
シャープのがいちばん「いわゆる現代音楽」の様相で現代奏法とか難解な感じで取っつきにくい。最後のシルヴェストロフのは、これがもうアンコール、と言った小品。

と言う風に、カラーも難易度も様々。良い曲と言えるのかどうかも私にはわからないけど、まあこんな機会でもないと聞かない曲たちではある。
ヒラリーはテクニックはもちろん、こういう曲の読譜力にも優れているのだろう、それぞれの特徴をつかんで弾き分けていってさすがに唸らせる。まさに才媛という感じ。

ピアノのスマイスもこうした曲が得意なのだろう、よく練れた演奏。
だが、モーツァルトやフォーレではスマイスのピアノにもたつきが感じられて足を引っ張った。こういった曲はもっと粒の立った音で弾いてほしいが、なんかもたもたしてせっかくのヒラリーの美しいヴァイオリンが引き立たなかった。う~ん、現代物と古典と、両方ちゃんと弾ける人って少ないのかな。そうでもないと思うけど。

だがこの日の白眉は無伴奏のバッハのパルティータ。ヒラリーのデビューアルバムにも入っていて、思い入れの強い曲なのだろう。抜群の集中力と圧倒的な深さがホールを支配して圧巻。もう、これ1曲だけでこの日聴きに来て良かったと思えた。

アンコールはこれも委嘱作品で締めくくった。
*ジェームズ・ニュートン・ハワード:133...at least

*デヴィッド・デル・トレディッチ:Farewell

終演後はサイン会に長蛇の列が出来ていた。私は今回はCD買わなかったけど。あの人たち全員もらえたのかな~。1時間以上かかりそうなくらい並んでたけど。
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ロンドン交響楽団 [音楽]

3月9日(土) サントリーホール

ベルナルト・ハイティンク指揮

ブリテン: オペラ『ピーター・グライムズ』から「4つの海の間奏曲」
モーツァルト: ピアノ協奏曲第17番 ト長調 K453(ソロ:マリア・ジョアン・ピリス)
ベートーヴェン: 交響曲第7番 イ長調 op.92

アンコール
メンデルスゾーン:「真夏の夜の夢」よりスケルツォ

御年84歳のマエストロ、ハイティンクがLSOを率いての来日。
ハイティンクと言えば、私の世代にはアムステルダム・コンセルトヘボウと一時代を築いた指揮者という記憶。今も現役の正真正銘の巨匠の一人。

1曲目のブリテン、出だしの弦とフルートの伸ばしから見事に美しくて鳥肌もの。全く一つの音に聞こえるんだよ!あれだけの人数で弾いてるのに。その後もブリテンの複雑で構造的な音楽を見事に構築するハイティンクの腕の冴えとLSOの職人技に惚れ惚れ。1曲目から、この演奏会が凄いことになりそうでゾクゾクする。

2曲目、これも期待のピリスのモーツァルト17番コンチェルトは、まるで天上の響き。水仙の花のようなあまやかで清潔な香しい音楽に酔う。オケのふくよかな音も絶品。

だがほんとうの感動は最後のベー7でやってきた。ハイティンクはかくしゃくとかいぶし銀とか言う老いの表現ではなく、あくまで力漲る気高さのある演奏。もちろん荒々しさなどはなく、悠揚迫らざる指揮なのに渾身の表現は「崇高」としか言いようがない。

ハイティンクに応えるLSOの技量も凄かった。しっかりと厚みがあるのに重さのない弦、晴れやかで暖かい音色の管セクション。全体が実にふくよか。特にフルートとティンパニーが耳に残る。

ほんとうに素晴らしい演奏会だった。「音楽の力」なんていう俗な言葉を痛感した。泣けた。

しかし、ハイティンクさん、指揮台を降りて袖に歩いて行く姿は足元も心配なおじいさんなのに、指揮を始めると元気そのもの。あのパワーはどこから来るのかしら。
自分が若い頃既に巨匠と言われた人を、この歳になってまた生で聴けるなんて幸せ。もうそんなにたくさんいないもの。。。

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