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高麗茶碗展 [美術]

三井記念美術館
http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html

16世紀から17世紀にかけて高麗(朝鮮)で焼かれた茶碗。室町時代日本で佗茶の興隆に伴ってそれまでの唐物に変わって茶の湯の茶碗の主流となった。
三島、粉引、井戸といった分類も細かく分かれていて素人にはやや難しいところもある。
また、色絵や染付と違って柄が面白いというのとも違う。
だが、形と釉薬の融合によって作り出された同じものが一つとしてない茶碗は、派手さはないが滋味溢れる美しさがあって、見飽きない。

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大井戸茶碗 武野井戸 銘蓬莱
日本の黄瀬戸に近い感じ。影響を与えたのかも。

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粉引き茶碗 三好粉引
これらは朝鮮で日常的な器として焼かれ、日本で茶の湯の茶碗として用いられたもの。

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御所丸茶碗
こちらは日本向けに焼かれた器。日本の需要(?)を意識してか、装飾的になってきている。

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御本立鶴茶碗
御本茶碗というのは、対馬藩が釜山の倭館で日本の大名などから注文を受けて作らせていたもの。従来の高麗茶碗とは趣が変わってきている。
ちなみにこの茶碗の鶴の絵は徳川家光の下絵を用いたとされているが、家光の絵と言えばあのへったくそなゆるキャラのような絵を思い出してしまい、ちょっと笑いそうだった。

一言で高麗茶碗と言ってもいろんな種類があり、それが日本に渡って、和陶の発展に影響があったのがよくわかって面白かった。
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美ら島からの染と織 [美術]

松濤美術館
https://shoto-museum.jp/exhibitions/184okinawa/

琉球王国時代から沖縄に伝わる染織を紹介する展覧会。琉球の芸術の展覧会は以前にもあったが、染織に特化したものは珍しいのではないだろうか。

まず原材料が本土ではほとんど使われない芭蕉や苧麻(ちょま・別名カラムシ)と言った植物繊維。暑い風土に似合ったとても涼しげな布。
有名な紅型だけでなく、絣などの織り、刺繍など手の込んだ高度な技法を駆使した着物はどれもため息が出るほど美しい。

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《黄色地鳳凰蝙蝠宝尽青海立波文様紅型綾袷衣裳》(国宝) 18‒19 世紀
黄色地に中国由来の鳳凰文様の組み合せは、王族のみが使用できたそう。華麗で高貴な衣装。

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《苧麻浅地雲取に枝垂桜燕文様紅型衣裳》 19世紀 
苧麻の軽やかな生地に紅型の模様がとても美しい。

着物だけでなく、風呂敷のような布もあってそういうのもデザインが面白い。
また古いものばかりでなく、現代作家のものもあって困難ながら伝統が守られている。

苧麻も芭蕉もとても涼しげで、昨今の暑さなら本土でも着られそう、と思うが、生産方法の写真パネルを見るととても大変そうで、今も芸術品としては制作する人がいるようだがとても採算レベルにはないのだろう。もったいないけど、なんとか存続していきますように、と祈る気持ちになった。
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山口蓬春展 [美術]

日本橋高島屋

(既に終了)
蓬春の絵は、もちろんいろんな展覧会で見ることはあったが、まとめて観たのは初めて。そして経歴(画歴?)も良く知らなかったが、最初は油絵からスタートして日本画に転向したというのに驚いた。

蓬春というと、私はモダンな洋画風な絵を思い浮かべるけど、若い頃は純日本画風(と言うのも変だが)の大和絵を描いており、まずはこの分野で第一人者となった。
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「緑庭」(1927)
古典的な大和絵様式の絵に学んだ作品。へえ、こういうのも描いてたのか。知らなかった。

そこからやがて洋画風モダニズムを研究し、簡略化された線と美しい色使いで「新日本画」と言われる作風を確立していく。
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「泰山木」(1939)
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「望郷」(1953)
この作品は本作だけでなく、下絵2種類も展示。創作過程がうかがえる。そして、そのうち1枚はくま好きだった六代目歌右衛門に贈られたというのも微笑ましい。
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「夏の印象」(1950)
私なんかが蓬春というとイメージするのはこういう洋風の絵。初めて見た時は、これが日本画?ととても新鮮だった。

晩年はリアリズムを追求したり、純日本画風の花鳥画を描いたり(皇居の装飾を手がけたり)、留まることなく変遷を続けた。
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「新冬」(1962)

若い頃の作品はほとんど知らなかったので、とても新鮮に感じ、また一度ある画風で名声を得てもそこに安住せず新しい絵を描き続けた姿に頭が下がる。モダンな日本画の道を切り開いた人だったんだな。見に行って良かった。

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原三渓の美術展 [美術]

横浜美術館
https://harasankei2019.exhn.jp/

横浜の三渓園にも行ったことがなく、原三渓という人のことも全く知らなかった。
原三渓(1868ー1939)は明治から昭和にかけて生きた実業家で、日本美術の大収集家となり、また収集だけでなく若い画家を経済的に支援もし、さらに茶人として、自身も絵を描いた文化人。

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国宝《孔雀明王像》
明治の元勲井上馨から当時破格の1万円で購入し、コレクター三渓の名を世に知らしめた作品。

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伝毛益(でんもうえき)《蜀葵遊猫図(しょっきゆうびょうず)》
犬の絵とセットで購入。

収集したのは日本美術と中国美術に茶道具類。仏画、大和絵、琳派など様々だが目利きの確かさに驚かされる。

後援した画家には大観、観山、靫彦らそうそうとした名前が並ぶ。

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安田靫彦(ゆきひこ)《夢殿》

自作の蓮の絵なども展示され、その清潔感漂う絵に人柄も偲ばれる。

現在国立西洋美術館で開催中の松方コレクション展と併せて見ると、明治から昭和にかけてもコレクターの偉大さを感じられる。
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円山応挙から近代京都画壇へ [美術]

東京藝術大学美術館
https://okyokindai2019.exhibit.jp/

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江戸時代、それまでの狩野派や土佐派などとは別に新たに起こった円山派・四条派の流れを見る展覧会。
応挙からと言うので期待した割には応挙の作品が多くなかったのはちょっと残念。
ただ応挙一門が描いた大乗寺の襖絵が一挙に展示されているのが見どころの一つ。これの応挙の孔雀図は豪華な金箔に墨で松と孔雀が描かれて、色はないのに孔雀の羽の艶やかさが目に見えるよう。

応挙では他に「写生図鑑」も素晴らしい。写生の応挙と言う名にふさわしい、まさに生き写しの、しかしそれだけではない美しく愛らしい動物や植物。上手いなあ、応挙。

応挙の弟子たちも負けていない。奇才の画家に数えられる芦雪が数点あるのが嬉しい。コロコロ仔犬の愛らしいこと。
虎の画家岸駒の虎図のどこかとぼけた味わいも魅力的。時代が下って明治の岸竹堂の虎図になると、実物を見て描いたリアルさがある一方で、写実によって失われたものもあるように感じた。

美人画の松園も円山派の系譜に入るとは知らなかったが、応挙の美人画と比べると確かに雰囲気が似ていて驚いた。

江戸時代から昭和のはじめ、栖鳳あたりまでの京都画壇の流れが見られる貴重な展覧会。
前後期で展示替えあり。

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伊庭靖子展 [美術]

東京都美術館
https://www.tobikan.jp/yasukoiba/

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「まなざしのあわい」とタイトルのついた展覧会。伊庭靖子(1967~)の名前も知らなかったが、ポスターを見て、写真?と思ったが油彩だという。とても写実的で、ファブリックなどは手触りまで感じられるほど。
窓辺に置かれた瓶類などは、光や空気まで切り取ってキャンバスに写されているよう。まさしくあわい。静謐という言葉がよく似合う。

またシルクスクリーンによる風景は、特別な景色でもなさそうに見えるが、細密で、草木の一本一本まで描かれて、そよぐ風まで感じられる。

一見、奇抜さはない。でも新しい。
見ていて心に染みてくるものがある、不思議な展覧会だった。

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優しいほとけ・怖いほとけ展 [美術]

根津美術館
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こちらも夏休み向けか、仏像をその表情で分類して解説する、初心者にも親切な展覧会。

優しいのは如来や観音、菩薩など、衆生を救い導いてくれる仏様たち。気品のあるお顔で中には女性的なのも。

対称的に怖いのは明王や四天など。
個人的には見て面白いのは怖い方。不動明王や毘沙門天、さらに十二神将など、格好いい~と思う。

キャプションも丁寧で、それぞれの仏の姿形や持ち物などの特徴からの見分け方が説明されていてわかりやすい。仏像入門にも良い展覧会だと思う。

なお、2階の展示室では鍋島の小品の特集展示もあって、こちらも楽しい。おすすめ。

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日本の素朴絵展 [美術]

三井記念美術館
http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html
「ゆるい、かわいい、楽しい美術」という副題のついた展覧会。
古くは埴輪から、江戸時代後期の禅画などまで、様々な種類の素朴で親しみやすい作品が並ぶ。
現代人から見るとどれもゆるくてちょっと可笑しくて、見ていると口元がほころんでくる。
ただ、一口に素朴と言っても、例えば江戸時代の白隠や仙崖など禅僧が庶民にわかりやすくと描いたものと、古代の埴輪や初期の仏像などとは同列にはできないとも思う。そういった古代のものは、当時としては精一杯、いや最先端の芸術表現での信仰の表れだろう。
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はにわ(猪を抱える猟師) 1躯 古墳時代

こういった素朴な絵には庶民が楽しむためのものが多いが、中でも室町時代以降の絵巻は説話も含めて数多い。そして話の内容は結構シリアスなのに絵のほのぼのさとのギャップが大きくて、今の目から見るとかえって笑えない部分もあるのが面白い。
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かるかや 2帖 室町時代・16世紀

仏像では円空仏などもあり、見応えは十分。夏休みなのでお子様にもわかりやすくて楽しめる展覧会。
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マリアノ・フォルチュニ展 [美術]

三菱一号館美術館
https://mimt.jp/fortuny/
これまた知らなかったアーティスト。
マリアノ・フォルチュニ(1871-1949)スペインで生まれ、パリで育ち、ヴェネツィアに移住。早世した父も画家。親戚も芸術家が多い一家。
画家であり写真もやり、服飾デザイナー、さらに舞台芸術家としても活躍。生涯華やかな世界に生きた。
もっとも有名な作品は、「デルフォス」という名のドレス。
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デルフォス 1910年代
美しい色に染めた絹地に細かいプリーツを施したドレスは女性をコルセットから解放し、さらに軽量で旅行などに持ち運ぶのにも適していた。

100年くらい前のデザインだけど、今着ても全然おかしくない。(ただし背が高くてスレンダーな方でないと無理ね)

デザイナーとしての知名度が高いが、画家の腕もなかなかのもの。本人は自分を画家と自認していたそう。その他に舞台芸術、写真も手がけ、まさにマルチな才能。

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ワーグナーのオペラ『パルジファル』より《クンドリ》

服だけでなくファブリックのデザインもしていて、柄はウィリアム・モリスを思わせるようなのも。時代も近い。ただモリスが量産して低価格化を図ったのに対し、フォルチュルニはセレブ相手に手間暇かけた高価な品を作ったように見える。彼自身セレブな生まれでヴェネツィアの豪邸にアトリエと工房を構え、両親の芸術的なコレクションに囲まれて育った。

メスキータ展と同じ日に観たものだから、ほぼ生きた時代が同じ二人のあまりに違う境遇に色々感じることも多かった。
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メスキータ展 [美術]

東京ステーションギャラリー
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201906_mesquita.html
サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ(1868-1944)。名前すら知らなかった。オランダのアーティスト。あのだまし絵で有名なエッシャーの師匠だという。日本で初めての回顧展。

なるほど、主に線の肥痩で対象を描き分ける木版画のスタイルが似ているかも。単純化された人物や動植物が生き生きとして楽しい。ドローイングは不可思議な夢の世界。

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ワシミミズク 1915
多色刷りはほとんどなく、潔い線で描かれた白黒の世界。やや誇張気味な動物や人間の表情に引き込まれる。

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ユリ 1916-17

展示の中には同一作品のいくつかのステートを並べてあるものもあって、作家の試行錯誤が見えて興味深い。雑誌の表紙デザインなどは、ほぼ同時代のウィーン分離派に近いものも感じた。
版画好きにはおすすめ。

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『ウェンディンゲン』表紙 1923
ユダヤ人のメスキータは1944年にナチスによって収容所に送られ、家族とともに命を落とした。メスキータが連行された後の家に駆けつけて残された作品などを集めて保管したのがエッシャーやその友人たちだったという。
近年になって再評価されているらしい。納得。


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