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国立劇場12月歌舞伎公演 [舞台]

12月25日(火)

1212国立a.JPG

月初に一度観て、二度目の観劇。この日は千秋楽。

鬼一法眼三略巻(キイチホウゲンサンリャクノマキ)

吉岡鬼一・一條大蔵卿長成 = 中村吉右衛門(2代目)
常盤御前 = 中村魁春(2代目)
平清盛 = 中村歌六(5代目)
奴智恵内実ハ吉岡鬼三太 = 中村又五郎(3代目)
勘解由妻鳴瀬 = 市川高麗蔵(11代目)
播磨大掾広盛 = 中村松江(6代目)
笠原湛海 = 中村歌昇(4代目)
腰元白菊 = 中村種之助(初代)
女小姓楓 = 大谷廣松(2代目)
丹波小三郎頼兼 = 中村隼人(初代)
女小姓弥生 = 中村米吉(5代目)
腰元錦木 = 中村歌江(初代)
難波次郎経康 = 大谷桂三(初代)
八剣勘解由 = 澤村由次郎(5代目)
平重盛 = 中村錦之助(2代目)
皆鶴姫 = 中村芝雀(7代目)
次郎女房お京 = 中村東蔵(6代目)
虎蔵実ハ牛若丸・吉岡鬼次郎 = 中村梅玉(4代目)

菊畑、一条大蔵卿がそれぞれ単独で上演されることの多い演目を珍しい(半)通し。特に序幕の「六波羅清盛館」が珍しい。

序 幕 六波羅清盛館の場
歌六の清盛は眼光鋭く、権力者らしい居丈高な様子で大きさもあり立派。
錦之助の重盛が爽やか。
この二人が今月この一幕だけというのが残念。

歌昇の湛海というのは全く気の毒な配役で、ほとんど玉砕レベルなのだが、なんというか、必死にやってるのは凄くわかって可笑しいというか可愛いというか。まあ、この湛海というのが、王子の鬘なんかつけてる割には情けない三枚目で、皆鶴姫を口説いてあっさり振られ、その上、では剣術で立ち会いをと自分で言い出したくせにこてんぱんに負け、と良いとこなし。なまじハンサムな歌昇君に王子の鬘は全然似合ってないし、色男ぶって皆鶴に迫るところも笑っちゃう。腕も弱いし、負けて慌てて逃げていくところの情けなさが可哀想なくらいおかしかった。(ゴメンね、歌昇君)

二幕目 今出川鬼一法眼館菊畑の場
吉右衛門初役の鬼一が見物。軍法家らしい切れ者の様子と懐深さがあり、智恵内との腹の探り合いに深い思慮が見える。智恵内と虎蔵に暇を出すのが、追っ手のかかる二人を逃すためというハラがちらりとのぞくところが上手い。また、湛海を軽くあしらい、皆鶴姫の手を取って引っ込むところに父親の愛情もさらりと見せて暖かい。贔屓としては老け役にあまりはまっていただきたくないけど、やっぱりさすがに上手くて唸る。

又五郎の智恵内がすっきりとした様子で、虎蔵実は牛若丸への忠義を見せる。去年の襲名以来確実に一段役者ぶりが上がったのを実感。ただ、吉右衛門や仁左衛門で見慣れた役だけに、今一歩の華や愛嬌がほしいと思うのは欲張りか。

梅玉の虎蔵が颯爽とした前髪姿。柔らかな二枚目ぶりがよく似合う。智恵内と二人になってからは、若いながらも主の貫禄と気品も見せてさすがの貴公子ぶり。

芝雀の皆鶴姫、品のある楚々とした様子がこの人らしい。たおやかな中にも強さを持ち、剣術の心得もあり、その一方虎蔵への恋に一途な女心も見せる、可愛い人。(でも京屋さん、虎蔵より播磨屋の鬼一の方が好きそうなんですけどぉ・・・)

ここでも歌昇君の湛海はあっさり虎蔵に斬られて絶命。。。あ~あ。。。
でも播磨屋のおじ様大好きな歌昇君、花道から登場する時の「これはセンセ~イ」がとっても嬉しそうだった気がする。

三幕目  檜垣茶屋の場
大 詰  大蔵館奥殿の場

この一条大蔵卿は吉右衛門当たり役の一つで、待ってました、の気持ち。
作り阿呆での全く力の入っていない、全く天然かと思えるようなふぬけた柔らかさとおかしみが絶妙。もう可笑しいやら可愛いやら。と言って下品にもならず、ひたすら子供のように無邪気な様子。
それが、奥殿の場で本性を顕すと、毅然とした姿、本来は武家であるのをのぞかせる凛々しさ、しかし平家の世で生き延びるために阿呆を演じることにした悲しさと虚しさを見せ、また再び阿呆に戻す変幻自在ぶり。台詞の明瞭さと名調子に酔う。

魁春の常磐はおっとりと品のある様子。ただ、清盛を呪詛し続ける意志の強さがあまり見えない気も。
梅玉も二役でこちらの鬼次郎は颯爽とした忠義心の強い武士の様子。
東蔵のお京も行儀良い。

由次郎の勘解由が強欲な家臣だが、この人らしい軽い可笑しさがある。
高麗蔵の鳴瀬がしっかり者で夫と違い主思いの忠臣ぶり。キャリアウーマンといった趣できっちり。

この公演、歌昇以外にも、隼人、種之助、米吉、廣松など若手も勉強の機会をもらって、一生懸命つとめていたのが微笑ましかった。特に隼人君が台詞もあってすっきりした二枚目の味がありよかった。種之助君初めての女形も可愛かった。

と言うことで今年最後の観劇を吉右衛門さんの名舞台で締めくくることが出来て幸せでした。観る前は鬼一じゃなくて智恵内が観たかったのに、とブツブツ言っていたが、爺役でも華と色気が感じられて、これはこれで良いかも!なんて思ってしまった。(でもやっぱり白塗り二枚目が良いけど)
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