南座顔見世・昼の部 [舞台]
12月17日(月)
第一 佐々木高綱(ささきたかつな)
佐々木高綱 我 當
子之介姉おみの 孝太郎
馬飼子之介 愛之助
高綱娘薄衣 新 悟
佐々木小太郎定重 進之介
高野の僧智山 彌十郎
時々やるけど、正直あまり面白いと思ったことがない演目。なんか、地味というかぱっとしない話で、少なくとも顔見世の華やかな舞台に見たい気はしないんだけどなあ。
我當は当たり役らしく、明瞭な台詞回しと的確な性格描写で高綱の苦悩と苛立ちを見せて上手い。
周りも彌十郎始めバランスも良く、役者の演技そのものは悪くなかった。
特に新悟が楚々とした様子で台詞も良く、このところの成長がうかがえて頼もしい。
第二 梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり)
鶴ヶ岡八幡社頭の場
梶原平三景時 團十郎
娘梢 七之助
奴菊平 家 橘
囚人剣菱呑助 市 蔵
俣野五郎景久 男女蔵
青貝師六郎太夫 彌十郎
大庭三郎景親 左團次
成田屋の梶原は初めて見たかも。見慣れた播磨屋のとは型がちょっと違って面白かった。
おおらかさがあり、情もある梶原は團十郎にぴったり。暖かさと貫禄ある様子が立派で素敵。播磨屋型と違うところでは、父が切られようとしているのを見た梢の嘆きと訴えを、黙ってじっと聞いているところ。播磨屋だとあそこで着々と(?)試し切りの刀の準備をしているので、「梢の話、ちゃんと聞いてる?」とつい思ってしまう(笑)。
七之助の梢がいじらしく、健気。素直な可愛げもあって上々。
彌十郎の六郎大夫も実直な娘思いの老父の様子。
左團次の大庭が貫禄。
男女蔵の俣野は力が入りすぎ。まあ、三枚目敵みたいなもんだから、あれくらいでもいいかもしれないけど。
第三 寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)
曽我五郎時致 勘太郎改め勘九郎
曽我十郎祐成 時 蔵
小林朝比奈 橋之助
化粧坂少将 七之助
喜瀬川亀鶴 壱太郎
梶原平三景時 市 蔵
梶原平次景高 薪 車
近江小藤太 男女蔵
八幡三郎 愛之助
鬼王新左衛門 翫 雀
大磯の虎 秀太郎
工藤左衛門祐経 仁左衛門
昼の襲名披露狂言。
勘九郎の五郎は目一杯力が入っていて、力強いというか、若干力み過ぎじゃないかという気もしなくはないのだが、むしろ気持ちいいくらい。ピンと伸ばした手先が震えてるように見えるほど。長袴で見えないけど、きっと足の親指立ってるよね。その、下手にセーヴしない、出せる力を全て出して工藤に挑む姿に爽やかさを感じた。
時蔵の十郎はさすがに品が良くすっきりとした様子。勇み立つ五郎をやんわりととどめる姿に、若い勘九郎を包み込むような優しさも見えて良い。
意外にも初役という仁左衛門の工藤が華があり貫禄十分。厳しさもありながら、兄弟を前にして、潔く討たれる覚悟も見える懐の深さがあり、圧倒的な存在感。この工藤を得て、舞台が一回りも二回りも大きく感じられた。
橋之助の朝比奈もやや線が細いながらもおおらかで小気味よい。
秀太郎の大磯の虎がさすがに押し出しの良いたっぷりとした味で美しい。ただ若くて綺麗な女形には絶対に出せないまろやかさとでも言おうか、豊潤な色気と品があって艶やか。
並ぶ壱太郎七之助もこちらは時分の花の美しさで華を添える。
一昔前は、顔見世で対面と言えば十三代仁左衛門の工藤だった。それが我當になり、ついに当代仁左衛門に受け継がれた。時の流れを感じると共に、松嶋屋代々が顔見世で占める地位が続いていることを感じて嬉しくなる。
第四 玩辞楼十二曲の内 廓文章(くるわぶんしょう)
吉田屋
藤屋伊左衛門 藤十郎
吉田屋喜左衛門 彌十郎
女房おきさ 吉 弥
扇屋夕霧 扇 雀
藤十郎の伊左衛門には今さら言うこともない。色気と柔らかみ、二枚目とおちゃらけを自在に行き来する、可笑しさと愛嬌に操られるがまま。(あまりに気持ちよくて、時々意識が飛んだ。。。)
扇雀は綺麗だがもう少しはんなりした柔らかさがほしい。夕霧にはきつそうに見えるのよ。この人は、夕霧とか梅川より、お初みたいな自分の意思がはっきりしてる役が似合いそう。
彌十郎の喜左衞門が暖かく、吉弥のおきさに女将らしい落ち着きと華やぎ。
禿の吉太朗が間の取り方が絶妙。
仲居の中に92才の小山三。台詞もないが出てくるだけで場が沸く。
中村屋のことがあって、普段より世間の注目も集まった顔見世だが、そういうことはなしにしても十分見応えも感動もある公演だった。
祝幕。私はこれが見納めになるかな。
第一 佐々木高綱(ささきたかつな)
佐々木高綱 我 當
子之介姉おみの 孝太郎
馬飼子之介 愛之助
高綱娘薄衣 新 悟
佐々木小太郎定重 進之介
高野の僧智山 彌十郎
時々やるけど、正直あまり面白いと思ったことがない演目。なんか、地味というかぱっとしない話で、少なくとも顔見世の華やかな舞台に見たい気はしないんだけどなあ。
我當は当たり役らしく、明瞭な台詞回しと的確な性格描写で高綱の苦悩と苛立ちを見せて上手い。
周りも彌十郎始めバランスも良く、役者の演技そのものは悪くなかった。
特に新悟が楚々とした様子で台詞も良く、このところの成長がうかがえて頼もしい。
第二 梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり)
鶴ヶ岡八幡社頭の場
梶原平三景時 團十郎
娘梢 七之助
奴菊平 家 橘
囚人剣菱呑助 市 蔵
俣野五郎景久 男女蔵
青貝師六郎太夫 彌十郎
大庭三郎景親 左團次
成田屋の梶原は初めて見たかも。見慣れた播磨屋のとは型がちょっと違って面白かった。
おおらかさがあり、情もある梶原は團十郎にぴったり。暖かさと貫禄ある様子が立派で素敵。播磨屋型と違うところでは、父が切られようとしているのを見た梢の嘆きと訴えを、黙ってじっと聞いているところ。播磨屋だとあそこで着々と(?)試し切りの刀の準備をしているので、「梢の話、ちゃんと聞いてる?」とつい思ってしまう(笑)。
七之助の梢がいじらしく、健気。素直な可愛げもあって上々。
彌十郎の六郎大夫も実直な娘思いの老父の様子。
左團次の大庭が貫禄。
男女蔵の俣野は力が入りすぎ。まあ、三枚目敵みたいなもんだから、あれくらいでもいいかもしれないけど。
第三 寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)
曽我五郎時致 勘太郎改め勘九郎
曽我十郎祐成 時 蔵
小林朝比奈 橋之助
化粧坂少将 七之助
喜瀬川亀鶴 壱太郎
梶原平三景時 市 蔵
梶原平次景高 薪 車
近江小藤太 男女蔵
八幡三郎 愛之助
鬼王新左衛門 翫 雀
大磯の虎 秀太郎
工藤左衛門祐経 仁左衛門
昼の襲名披露狂言。
勘九郎の五郎は目一杯力が入っていて、力強いというか、若干力み過ぎじゃないかという気もしなくはないのだが、むしろ気持ちいいくらい。ピンと伸ばした手先が震えてるように見えるほど。長袴で見えないけど、きっと足の親指立ってるよね。その、下手にセーヴしない、出せる力を全て出して工藤に挑む姿に爽やかさを感じた。
時蔵の十郎はさすがに品が良くすっきりとした様子。勇み立つ五郎をやんわりととどめる姿に、若い勘九郎を包み込むような優しさも見えて良い。
意外にも初役という仁左衛門の工藤が華があり貫禄十分。厳しさもありながら、兄弟を前にして、潔く討たれる覚悟も見える懐の深さがあり、圧倒的な存在感。この工藤を得て、舞台が一回りも二回りも大きく感じられた。
橋之助の朝比奈もやや線が細いながらもおおらかで小気味よい。
秀太郎の大磯の虎がさすがに押し出しの良いたっぷりとした味で美しい。ただ若くて綺麗な女形には絶対に出せないまろやかさとでも言おうか、豊潤な色気と品があって艶やか。
並ぶ壱太郎七之助もこちらは時分の花の美しさで華を添える。
一昔前は、顔見世で対面と言えば十三代仁左衛門の工藤だった。それが我當になり、ついに当代仁左衛門に受け継がれた。時の流れを感じると共に、松嶋屋代々が顔見世で占める地位が続いていることを感じて嬉しくなる。
第四 玩辞楼十二曲の内 廓文章(くるわぶんしょう)
吉田屋
藤屋伊左衛門 藤十郎
吉田屋喜左衛門 彌十郎
女房おきさ 吉 弥
扇屋夕霧 扇 雀
藤十郎の伊左衛門には今さら言うこともない。色気と柔らかみ、二枚目とおちゃらけを自在に行き来する、可笑しさと愛嬌に操られるがまま。(あまりに気持ちよくて、時々意識が飛んだ。。。)
扇雀は綺麗だがもう少しはんなりした柔らかさがほしい。夕霧にはきつそうに見えるのよ。この人は、夕霧とか梅川より、お初みたいな自分の意思がはっきりしてる役が似合いそう。
彌十郎の喜左衞門が暖かく、吉弥のおきさに女将らしい落ち着きと華やぎ。
禿の吉太朗が間の取り方が絶妙。
仲居の中に92才の小山三。台詞もないが出てくるだけで場が沸く。
中村屋のことがあって、普段より世間の注目も集まった顔見世だが、そういうことはなしにしても十分見応えも感動もある公演だった。
祝幕。私はこれが見納めになるかな。
そうです、そうです!!團十郎さんの梶原のおおらかさと情ある様子、本当にいいなと思いました。素敵でしたね。播磨屋さんのも拝見していますが、まみずくさんの「ちゃんと聞いてる?」とのツッコミがあまりに言い得て妙で面白くて、今度見る機会があった時に思い出して笑ってしまいそうです(笑)
by ルート (2012-12-27 17:57)
ルートさん、こんばんは。
團十郎さんの梶原、良かったですね~。こせこせしない鷹揚な感じが出てて微笑ましかったです。
あ、播磨屋さんの梶原も大好きですよ!名刀を手にして目が「キラ~ン!」となちゃうところが可愛くて(笑)。だから余計にあそこでは「も~、梢ちゃんの話聞いてないでしょ~」ってつっこんじゃうんです。来年5月の歌舞伎座でやりますから、ぜひ観て下さいね!
by mami (2012-12-27 23:52)