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演舞場 壽 初春大歌舞伎 昼の部 [舞台]

1月16日(月) 新橋演舞場

とにかく今月は東京だけでも五座で芝居を開けていて、体と休みが足りない。やっとこさ演舞場昼の部へ。

一、相生獅子(あいおいじし)
                     
姫  魁 春                      
姫  芝 雀

今月は夜に「連獅子」がかかり、昼はこれ、と獅子ものが二つ。う~ん、ちょっと考えてほしい、と言う気はする。
だがそれはさておき、女形二人の獅子ものというのは珍しい。
前シテはお姫様。姉妹なのか設定はよくわからないが、魁春が桜色、芝雀が赤の着物で華やか。二人ともおっとりした雰囲気の女形なので、こういうたおやかなお姫様がよく似合う。

いったん引っ込んでの後シテでは、立ち役のような毛振りこそしないが、お決まりの獅子の鬘で狂う様子を見せるもあくまで女形らしく優雅さが先に立つ。つい、女の人があんな踊りして大丈夫かしら、と思ってしまい、いやいやあれは男の人だから、と思い直す(苦笑)。それくらい、女形の踊りとしての獅子の舞。
尖ったところのない二人が、最後まで仲良くふんわりした空気で踊り、正月らしい華やかでめでたい趣向だった。

  祇園祭礼信仰記
二、金閣寺(きんかくじ)
            
此下東吉実は真柴久吉  梅 玉                     
雪姫  菊之助             
十河軍平実は佐藤正清  錦之助                  
松永鬼藤太  松 江                 
狩野之介直信  歌 六                   
慶寿院尼  東 蔵                   
松永大膳  三津五郎

菊之助が三姫の一つ、雪姫に初役で挑む、昼の部いちばんの注目狂言。
菊之助は美しく気品があるのはもちろんだが、親の敵を討とうとする芯の強さがよく出た。ここのバランスが上手い。大抵の雪姫はお姫様らしく綺麗だと弱くなり、気が強そうだと品がなくなる。前者は玉三郎、後者は亀治郎が代表か。綺麗だけど退屈だった玉様、面白いがお姫様らしくなかった亀ちゃん。それに対し、菊之助は凛とした姿に、夫を思う切なさ、なんとしても助けたいという意志の強さがあり、その思いが通じればこそ爪先鼠の奇跡が起きたと納得させられた。ただ単に絵が上手いから、ではないのである。
もちろん、縛られて桜の花びらが舞う中で嘆く姿の美しさは絶品。いやぁ、なんか嗜虐趣味を刺激されてしまうわ。

三津五郎の大膳も悠然とした悪人の大きさがあり堂々として立派。こういう時代物やっても風格が出てきたなあ。あの大仰な鬘に負けない魅力がある。ま、ただし、英雄色を好む、と言う雰囲気はまだ弱いかなぁ。元々あんまり色気ない人だから。

久吉は梅玉で、この人らしいすっきりとした二枚目振り。いかにも智将という雰囲気がぴったりで爽やか。

歌六の狩野之介というのが意外な配役だったが、これが予想外に良かった。二枚目でほんのり色気もあって。最近すっかり老け役専科の歌六さんだが、白塗りお似合いじゃないですか!もっとこういう役もやってほしいなあ。

ところで、爪先鼠のところで降る花びらが、菊ちゃんは比較的少な目だった。どうやら玉様に倣ったらしい。亀ちゃんとかどさどさ降ってたもんなあ。あれはあれで楽しいけど。

  盲長屋梅加賀鳶
三、加賀鳶(かがとび)
  本郷木戸前勢揃いより  赤門捕物まで             
天神町梅吉/竹垣道玄  菊五郎                  
女按摩お兼  時 蔵                 
春木町巳之助  三津五郎                    
魁勇次  又五郎                  
虎屋竹五郎  錦之助                 
昼ッ子尾之吉  菊之助                   
磐石石松  松 江                  
数珠玉房吉  亀三郎                  
御守殿門次  亀 寿                 
金助町兼五郎  松 也                     
お朝  梅 枝                   
妻恋音吉  権十郎                   
天狗杉松  秀 調                 
御神輿弥太郎  團 蔵                
道玄女房おせつ  東 蔵                 
伊勢屋与兵衛  彦三郎                   
雷五郎次  左團次                  
日蔭町松蔵  吉右衛門

始めの木戸前勢揃いは筋なんかあってなきがごときで、花道にずらりと並んだ鳶のツラネの名調子をただほお~と聞くのみ。最後の締めが吉右衛門と来てるから、ただただその格好良さにしびれる。
さらに菊五郎の梅吉も加わって、命を張ったやりとりとなる。理屈抜きに格好いいと思わせる役者でなけりゃ務まらない。ここも菊五郎と吉右衛門がびしっと決めて気持ちよい。いなせ、というのはこういうのを言うんだろうなあ、と二人に惚れ惚れ。

盲長屋に代わっては、菊五郎の道玄が悪党ながらおかしみを見せる。前回はかなり滑稽さが前に出た感じだったが、今回は悪い奴の面の方が強く感じた。それでも、松蔵にやり込められた時の慌て振りや、幕切れ赤門前でのだんまりのおかしみなどはさすがにこの人らしい垢抜けた喜劇性があって嬉しい。

時蔵のお兼も、道玄と一緒に悪巧みするような女なのだが、どこか憎めない愛嬌があり、なによりドロドロした悪婆にならないのがこの人らしい。菊五郎との息もぴったりでさすが名コンビ。

吉右衛門の松蔵は木戸前に続いて申し分ない格好良さ。まあ、とにかく台詞の調子の見事さといったら、今右に出る人はいないだろう。「空も朧の御茶ノ水」と歌い上げるような調子の心地よさ。先月の青果の台詞とはまったく違う、黙阿弥ならではの七五調の台詞を聞く醍醐味を存分に味わあせてもらった。さらにいいのは菊五郎とのやりとりの間。この二人で世話物をやると、一気に気持ちが江戸に持って行かれる。ああ、楽しかった。

お朝の梅枝が健気でいじらしい。
おせつの東蔵も哀れさと生真面目さがあり上々。
彦三郎の伊勢屋も人の良さと大店の主らしい落ち着きがあり立派。

筋書を読むと、木戸前勢揃いに出る人のほとんどが、あそこでとちらないか緊張すると言っているのが面白かった。一人とちると伝染するらしい。吉右衛門も昔やってとちりそば出したことあるとか。観る方はただワクワクするだけだが役者さんには嫌な場面なのかも。
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