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大阪松竹座 壽初春大歌舞伎 昼の部 [舞台]

1月3日(火)

例年通り、お正月は実家で迎えたので、初芝居も大阪の劇場で。今年は文楽の初日昼がチケット取れなかったので、松竹座を先に見ることになった。

一、傾城反魂香(けいせいはんごんこう)
  土佐将監閑居の場        
浮世又平後に土佐又平光起  翫 雀              
狩野雅楽之助  海老蔵              
土佐修理之助  笑 也                
土佐将監  市 蔵               
将監北の方  家 橘             
又平女房おとく  秀太郎

翫雀の又平を観るのは二度目かな。前は藤十郎のおとくだった。前回はちょっと力が入りすぎという気もしたが、今回はだいぶ余裕が出てきた様子。朴訥だが一途に師匠の名字がもらいたい懸命さが真っ直ぐに伝わる。絵の奇跡が起こってからの後半、名字を許されて喜ぶ様に愛嬌がある。

秀太郎のおとくが絶品。こういう女房をやらせたらこの人がいちばんでは。情があって可愛いげがあって、夫に尽くす良くできた女房の風情がぴったり。

市蔵師匠も品格ありなかなか。厳しいが暖かい様子。
笑也の修理之助が行儀良い美少年の風情。さすが前髪が良くお似合い。
海老蔵の雅楽之助、相変わらず力みすぎだが、まあこれは他の人と絡まないから別にいいや。

幕切れは師匠が手水鉢を断ち割って吃りが治り、花道をおとくが歩き方を教えて引っ込む型。初見ではないが珍しい。前に翫雀がやったときもこうだったかしら。成駒屋の型?でも藤十郎が團十郎とやったときは違ったねえ。

二、修禅寺物語(しゅぜんじものがたり)
面作師夜叉王  我 當              
源左金吾頼家  海老蔵                
下田五郎  市 蔵                 
妹娘楓  吉 弥                  
春彦  進之介                 
姉娘桂  扇 雀

岡本綺堂作。新歌舞伎の名作、と言われているがどこが面白いのかさっぱりわからない演目。正直言って、お正月から観たくはないよな。かなり忍耐がいる。
役者達は悪くはない。
我當の夜叉王は気難しい芸術家気質の老人を手堅く演じてさすがに上手い。
扇雀も気位が高く、上昇志向の姉娘の頑なさ、可愛げのなさがよく出た。この人は義太夫狂言より新歌舞伎の方が良いかも。
新歌舞伎が良いのは海老蔵もで、古典だとさっぱり聞き取れない台詞が、この頼家では比較的ましだった。節回しのある台詞の方が良いのだろうか。ま、この頼家は脇役でそれほどの長台詞もないが、将来的には「番町皿屋敷」の播磨や、「頼朝の死」の頼家などできるようになってほしいものである。

三、積恋雪関扉(つもるこいゆきのせきのと)
  逢坂山関所の場         
関守関兵衛実は大伴黒主  團十郎              
良峯少将宗貞  海老蔵   
小野小町姫/傾城墨染実は小町桜の精  藤十郎

つい10日ほど前に中村座で観たばかりだが、まあやる人が違えばこんなに趣が違うのかと思うくらい、別ヴァージョン。いやもちろん、やってることは一緒なんだが。勘太郎と菊之助という若さ溢れる二人に対しベテラン大御所二人。
踊りの巧拙だけなら若い勘菊の勝ち。だがこの芝居(踊りではなく)の、ある意味訳の解らない、不可思議な世界観や空気を濃厚に表したという点では團藤はさすが。
特に團十郎のおおどかさは貴重。おおらかでちょっぴり滑稽味もある関兵衛から、古怪で不気味な迫力ある大伴黒主への変化が鮮やか。

藤十郎も小町姫としては赤姫の艶やかな様子が品良く。墨染では傾城らしいしとやかな色気がたっぷり。そして最後には小町桜の精として怪しげな美しさを見せ、どれもそれは濃厚な味わい。菊ちゃんのが若木の爽やかさとすれば、こちらは爛熟とでも言おうか。

たっぷりとした、まさに「大人の芸」とでも言える、ふくよかな関の扉の世界を堪能した。

松竹座1201.JPG
今月の松竹座には櫓が。
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