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12月国立劇場「元禄忠臣蔵」 [舞台]

年明け最初の記事が去年の観劇記事で申し訳ありません。

12月26日(月)

この日が千秋楽。実を言うと月初から3回目の観劇。

12月国立.JPG

元禄忠臣蔵(げんろくちゅうしんぐら)

《江戸城の刃傷》
第一幕 江戸城内松の御廊下
第二幕 田村右京太夫屋敷大書院
同 小書院
梅玉の内匠頭、歌六の多門伝八郎、歌昇の片岡源五衛門、東蔵の田村右京大夫

梅玉の内匠頭がさすがに本役。大名らしい品格をもちながらもやや癇性なところもしっかり見せ、吉良を討ちもらしたことへの無念さを強くにじませた。
少し前に南座で、同じ元禄忠臣蔵の「仙石屋敷」を観たが、そこで仁左衛門の内蔵助が討ち入りの理由をただ主君の無念をはらさん為、ととうとうと述べて涙を誘われたが、この内匠頭の死を前にしての思いを良くくんだことよ、と話の流れがはっきり見えた気がした。

歌六の多門は熱血漢と言うよりは、同じ武士として内匠頭に同情を寄せる懐の深さを見せた。

《御浜御殿綱豊卿》
第一幕 御浜御殿松の茶屋
第二幕 御浜御殿綱豊卿御座の間
同 入側お廊下
  同 元の御座の間
  同 御能舞台の背面
吉右衛門の綱豊卿、又五郎の助右衛門、、芝雀のお喜世、魁春の江島、梅玉の新井勘解由

吉右衛門何十年ぶりかの綱豊が注目の舞台。月初はいささか台詞の入りが悪くてドキドキした(苦笑)。だがさすがに楽日、そういうこともなく、余計なことに煩わされずに芝居に入り込んで観られた。
この綱豊を当たり役にしているのは当代では梅玉、仁左衛門など。私自身は、口跡はよいが爽やかすぎる仁左様より、綱豊の抱える鬱憤や悩みが見える梅玉さんの方が好き。
さてでは吉右衛門は、と言うと、赤穂家再興を将軍に上奏しようか迷っているというより、しない理由を自分に納得させたくて助右衛門に問いただす、と言う風に見えた。だから、御座の間を出る寸前助右衛門に「再興の議は…!」と懇願されて、「そちゃ、俺に憎い口をききおったぞ」と応えるところが他の役者と違って何とも暖かみのある、助右衛門に侍心を見いだし、納得がいった満足感をたたえた口調になった。
次期将軍と見込まれる器量優れた殿様の貫禄、気品、懐深さ溢れる、さすがに立派な、新たな綱豊卿。

又五郎の助右衛門が出色。口跡の良さはもちろん、助右衛門の無骨で不器用、一途な男の必死さが綱豊の胸をも打ったであろうと思われる素晴らしさ。吉右衛門との問答で一歩も引かぬ、ややもすれば優勢な場面さえある立派さ。

芝雀の喜世も可憐で楚々とした様子。第一幕では吉右衛門綱豊が喜世を可愛がっている様子がよく見える、二人のラブラブな様子がおかしかった。
魁春江島も有能な祐筆らしい落ち着きと、さばけた様子もあり上々。
梅玉の勘解由は学者らしい沈着さと貫禄。

《大石最後の一日》
細川屋敷下の間
同 詰番詰所
  同 大書院
  同 元の詰番詰所

吉右衛門の内蔵助、芝雀のおみの、錦之助の十郎左衛門、鷹之資の内記、歌六の堀内伝右衛門、東蔵の荒木十左衛門

こちらの内蔵助は播磨屋当たり役の一つ。最後まで仲間の行く末に気を配り、見守り、あるときは叱咤する真のリーダーとしての内蔵助を演じてさすがは当代一。
おみのを十郎左右衛門と会わせるかどうかの葛藤、逡巡から二人を前にしての心の広さと優しさが胸を打つ。
上使から吉良家断絶を聞き、ついに胸のつかえが取れた晴れ晴れとした顔つきに感涙。
最後は「初一念が届きました」と思い残すことなく胸をはって花道を入っていく姿の堂々たる様子に震えるほど感動。

芝雀のおみのが立派。女心と、武士の娘としての一分を立てたい思いに揺れる娘の健気さと凛とした筋目を見せた。
錦之助の十郎左衛門も二枚目で純粋な若侍の風情がぴったり。
歌六の伝右衛門が暖かい。
東蔵の荒木も上使ながら情のあるところを見せた。

鷹之資の内記は、長い台詞のある役は初めてらしいが、若殿様らしい気品ある様子が立派で、丁寧で心のこもった演技にほろり。「天王寺屋!」の大向こうも懐かしく嬉しく、また富十郎さんの不在を改めて寂しく感じた。

2011年最後の観劇を播磨屋の大石で締めくくれる幸せ。「初一念」の重さを胸に帰途につく。吉右衛門さん、この一年素晴らしい舞台の数々ありがとうございました。来る年もよろしくお願いします。




タグ:吉右衛門
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