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秀山祭九月大歌舞伎・夜の部 [舞台]

9月20日(火) 新橋演舞場

吉右衛門丈の人間国宝認定に、又五郎と歌昇の襲名と、おめでたいことが続く播磨屋一門。その襲名披露公演とあって、劇場中が何となく華やいだ雰囲気。

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一、沓手鳥孤城落月(ほととぎすこじょうのらくげつ)
  二の丸乱戦の場   
  城内山里糒庫の場                   
淀君       福助 (芝 翫 代役)                
豊臣秀頼  歌 昇改め又五郎                   
千姫       芝 雀               
大住与左衛門       錦之助                 
石川銀八       児太郎                 
大蔵の局       吉 弥                  
正栄尼       東 蔵               
大野修理之亮       梅 玉                 
氏家内膳       吉右衛門

芝翫さんが初日だけ出た後休演されてしまい、代役は福助。ピンチヒッターだから仕方ないとは言え、ただのヒステリー狂女としか見えない淀君にうんざり。確かに正気を失っている設定だが、それでもなお見せる品格というのが見せ所の芝居だろうに、これではあんまり酷い。
酷いと言えば息子の児太郎の裸武者も酷すぎて笑えるくらい。型としての立ち回りに全然なってなくて、ただ長刀を振り回してるだけ。相手をする三階さんたちが気の毒なくらい。
親子でこれでは、成駒屋の将来が思いやられる。

新又五郎の秀頼というのは、歌昇時代あまり白塗りの役を見たことがないので意外だったが、台詞の上手い人なので無難にこなして新境地。これからどんどん役の幅を広げてほしい。

梅玉に吉右衛門、芝雀などが付き合うが、大して見せ場もなく、まあご馳走と言えばご馳走。

二・口上                      
歌 昇改め又五郎                       
種太郎改め歌 昇                            
幹部俳優出演

初日だけは芝翫が仕切っていたそうだが、休演で吉右衛門が最初に挨拶。「真ん中で話すのは慣れてなくて(初めてなので、だったかな)」、とか仰ってやや口ごもり気味に話されるのがまた吉様らしくて微笑ましい(と言っては失礼だが)。他の幹部の方がたも、先代又五郎さんにはいろいろ教えていただいた、とかあまり脱線せず。藤十郎さんが、又五郎のお父さんの先代歌六さんとは竹馬の友でした、と仰ったのがちょっと意外だったのでへえ~。最年少、新歌昇の弟種之助くんもきびきびとご挨拶で好印象。

  菅原伝授手習鑑
三、車引(くるまびき)
梅王丸  歌 昇改め又五郎                  
松王丸       吉右衛門                  
杉王丸  種太郎改め歌 昇                 
藤原時平       歌 六                   
桜丸       藤十郎

夜の部の襲名披露狂言。
又五郎が二日目だかに脚のアキレス腱を痛める不運があり、ギブスをしての演技。従って、梅王の見所の一つである花道の六法での引っ込みはなしになってしまった。だが、口跡の良さ、荒事らしい力強さとおおらかさが溢れて、脚の不安を忘れさせるほどの出来。つくづく、お怪我がなければどれほどかと思うが、途中からは怪我のことも気にならないような立派な梅王だった。

松王の吉右衛門が良いのは言わずもがな。出てきた瞬間空気が変わるような存在感と大きさ。見得で決まった姿の美しさ。いやもう何も言うことありません。

そして出色が藤十郎の桜丸。上方風と言うことで隈を取らず、前髪の若衆のような出で立ちにはんなりとした色気が立ち上るよう。まさしく和事が衣装着て立ってるような。この桜丸があって、なお梅王松王が引き立つんだなあ。

新歌昇の杉王も一生懸命。行儀良くきっちりと。
歌六も一門として時平に付き合う。ニンとは言い難く、青隈の古怪さは今ひとつだが貫禄は見せた。

去年の芝翫・吉右衛門・幸四郎の車引きも見物だったが、充実感では負けていない。良いものを見せてもらった、と素直に感動した。

四、石川五右衛門(いしかわごえもん)
    市川染五郎宙乗りにてつづら抜け相勤め申し候               
石川五右衛門       染五郎                 
三好長慶       松 江                 
三好国長       亀 寿                  
左忠太       廣太郎                  
右平次       種之助                 
次左衛門       錦 吾                
呉羽中納言       桂 三                 
此下久吉       松 緑

染五郎が叔父さんの持ち役で憧れの五右衛門に初挑戦。ほんとに嬉しそうなんだな~。正直言うと、五右衛門には染めちゃんはまだ線が細いし、大盗賊のふてぶてしさも足りないし、「山門」の場の「絶景かな、絶景かな」の名台詞もおじさんみたいに胸のすくような名調子には至らない。でも、そんな細かいことをあげつらうほどの芝居でもないし、何しろ楽しそうにやってる染ちゃん観てたらこっちまでにやにやしてしまえるので、まあいいか!?という感じでした、ハイ。

久吉の松緑がなかなかの出来。正直言うと二人のニンが逆じゃないかと思うのだが、意外にすっきりした二枚目ぶり。芸の幅が広がったかな、松緑君。こういうのができると、いつかは実盛とか、石切梶原とか、やらせてみたいな。もちろん、この五右衛門の方も。

錦吾の次左衛門に朴訥とした味。
種之助と廣太郎というフレッシュコンビもきびきび。

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劇場の外で案内してる職員の人もそろいの法被姿。格好いい!
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nori

 mamiさんの記事を待っていました。4日に見ましたが、口上で吉右衛門が慣れないのでといったのは、あまり型苦しくしたくないという意向だったのかもしれませんね。3週間近くたっても同じことを言っておられたようですから。藤十郎、松緑の芸については全く同じ印象を受けました。いつまでも変わらない芸を見せるベテランと、見る度に芸の幅を広げる中堅に感激しました。福助は、キャラに合わない役を代役でということで、仕方がない面もありますね。
by nori (2011-09-25 13:10) 

mami

noriさん、こんばんは。
口上での台詞は、基本的に初日から楽までほとんど同じみたいですね。特に今月はアドリブ言うような方もいらっしゃらなかったし。

藤十郎さんは、桜丸も昼の忠兵衛もほんとに素敵で、上方和事を体現して素晴らしいです。まだまだがんばっていただきたいです。
松緑君もこの数年充実していて、先が楽しみですね。

by mami (2011-09-26 21:44) 

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