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松竹大歌舞伎・巡業西コース [舞台]

9月24日(土) 川口リリアホール

巡業チラシ.JPG

松嶋屋一門を中心とした巡業。今年の巡業は、中央と東コースが震災の影響で中止になってしまったので、この西コースだけという寂しいものになってしまった。それだけに期待は大きい。

一、雨の五郎(あめのごろう)
曽我五郎時致  片岡 愛之助

愛之助はむき身の隈もよく似合い、すっきりとした二枚目ぶりで美しい。踊りとしてはそう難しいものでもないそうだが、若い五郎の元気の良さや勢い、廓通いの色気なども見えて上々。しかし、愛之助のこういう拵えを見ると、去年の顔見世の外郎売りを思い出しますなあ。

二、義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)
   下市村茶店の場   
同  釣瓶鮓屋の場    

茶店           
いがみの権太  片岡 仁左衛門            
主馬小金吾  片岡 愛之助            
若葉の内侍  市川 高麗蔵             
弥左衛門  坂東 彌十郎              
小せん  片岡 秀太郎    

すし屋           
いがみの権太  片岡 仁左衛門               
お里  片岡 孝太郎               
お米  坂東 竹三郎             
梶原景時  坂東 薪車            
若葉の内侍  市川 高麗蔵             
弥左衛門  坂東 彌十郎      
弥助実は平維盛/小せん  片岡 秀太郎

仁左様の権太、久しぶりに見たけどやっぱり泣けるわ~。
はじめ出てきて小金吾から金を騙り取るところの悪党ぶりとその後の妻子とのじゃらじゃらした感じとの落差が大きく、三人で仲良く引っ込んでいくところのほのぼの感が後の悲劇を思うとあまりに切なく、ここからすでに泣ける。
母親に金をせびるところの甘えっぷりも可笑しく笑わせた後、後半、内侍若君と偽って小せんと善太を連れて登場するところから顔つきが一変。もうこの出から、悲しみ辛さを押し隠してから元気でいるのが見えていて胸がつぶれそう。特に、二人に向かって「面ぁ上げろい」とわざと邪険に足を向けるところなど、もう切なくて切なくて涙腺崩壊。
そしてそうまでしたのに、打ち明ける前に父に刺されてしまう哀れさ。
本当に、ちょっとした仕草や表情に権太の胸の内が表れていて、凄くわかりやすいのにあざとくない。そして妻子や親への情に溢れて、もう最初から最後まで泣ける泣ける。いろんな人の権太を見てるけど、泣けるという意味ではいの一番の仁左様だった。

秀太郎の二役も秀逸。小せんでは良くできた女房で母で、でも昔は女郎だった色気も失っていないはんなりした風情。権太に意見しながらも、結局じゃらじゃら仲良い様子がしっくり伝わってくる。
弥助では優男の柔らかさ、維盛に戻ってからは気品を見せ、変化が自然なのが良い。終盤の出家を決意するところの毅然とした様子に気高さがあってさすがに立派。

孝太郎のお里も可愛らしさと弥助大好きの一途さ健気さがあって上々。孝太郎はここ数年色気が出てきて綺麗になったなあ。
愛之助の小金吾も、お主大事の律義で真面目な若侍と言うのがぴったりで、討ち死にの場面では無念さ哀れさがあって見せた。
彌十郎は以前より少し痩せたかしら。ちょっと前まではこういう老人役には脂っ気が多い気がしていたが、すっかり板についた様子で、この弥左衛門も、気骨ある風情が出ていてなかなか。
竹三郎の老母も息子が可愛い様子がよく出て滋味があり、高麗蔵の内侍も品があって上々。
薪車の梶原というのはちょっと若すぎて気の毒な感じも。がんばってはいたけど、もうちょっと貫禄のある人でないとつとまらない役。まあ巡業だし仕方ない。

こぢんまりした一座の巡業のおかげか、全体のアンサンブルも良く、息が合っていて見ていて気持ちの良い舞台だった。

タグ:仁左衛門
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コメント 2

とみた

mamiさん、こんにちは。
私も川口行きました。
「すしや」は好きな話ではなかったんですが、
たぶん権太が大好きな仁左衛門さんと、うまい
役者さん達があんなに丁寧に演じてくれたので、
良くできた話だということがよくわかりました。
「すしや」は、この巡業の舞台が私の一生を通じての
ベストになるだろうと確信しています。
by とみた (2011-10-03 12:43) 

mami

とみたさん、おひさしぶりです。
本当に素晴らしい「すし屋」でしたねえ。
仁左様はもちろん、秀太郎さんも気持ちが入っていて、どっぷり引き込まれてしまいました。
巡業にはもったいないくらい(失礼)名舞台でしたが、大劇場ではなくああいう一回り小さい劇場だからこそ、ああいう濃密な舞台になったのかも、と言う気もします。
by mami (2011-10-03 21:11) 

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