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国立文楽劇場4月公演第一部 [舞台]

4月11日(月)

今月の公演は、綱大夫改め九代目竹本源大夫、清二郎改め二代目鶴沢藤蔵、と言う親子揃っての襲名披露公演。ところが残念なことに源大夫さんが直前に体調を崩して休演、口上のみの出演という、まあ前代未聞(?)なことになってしまった。お年でもあり、無理は禁物だが、誰よりご本人がいちばん悔しい思いをされているだろう。しっかり養生して、来月の東京では元気なお声を聞かせていただきたい。

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源平布引滝(げんぺいぬのびきのたき)
玉女の実盛、勘十郎の瀬尾、和生の九郎助、清十郎の葵御前
  竹生島遊覧の段 松香・呂勢・三輪・芳穂・靖、清治
竹生島の段は掛け合い。さすがに三輪大夫が安定感あり。
清治さんがこういう場しか出ないのは、ほんとに宝の持ち腐れだと思う。相三味線という仕組み上仕方ないのかもしれないが、何とかならないのかなあ。

 竹本綱大夫改め 九代目竹本源大夫
 鶴澤清二郎改め 二代目鶴澤藤蔵   襲名披露口上
文楽の口上は、歌舞伎と違ってご本人は一言もしゃべらない。頭を下げてるだけ。
住大夫を中心に、寛治さん、清治さん文雀さんと、人間国宝が並んでの口上。
住さんの奥様は源大夫さんの妹さんなのですね。「身内」という言葉が住さんから出ました。
清治さんは藤蔵さんのお師匠さん。最初の弟子だそうです。初めてのお稽古の時、藤蔵さん(中学生)は緊張のあまり真っ青で、結局稽古にならなかったとか(笑)。

  糸つむぎの段 咲甫・清馗
  瀬尾十郎詮議の段 住・錦糸
 襲名披露狂言
  実盛物語の段 英・藤蔵

切り場じゃない段に住大夫が出るなんて、襲名披露のご馳走だなあ。お得意の泣かせる箇所ではないけれど、さすがにじっくり聞かせた。
物語の段が本来なら源大夫だったが、休演で英大夫。代役ながら、近頃の好調ぶりを印象づける出来で、丁寧かつ豪快に急展開する場面を語った。新藤蔵は一生懸命。やや力が入りすぎ?という感じもしないではないが、今はそれくらいの方が良いだろう。瀬尾の再登場からの緊迫した場面を畳みかけるように豪快に弾いていた。

玉女の実盛は大きさがあり、またすっきりとした知恵者の武将の颯爽とした様子がよい。老け役よりこういうのがまだお似合いだな。
勘十郎の瀬尾が、こちらも豪快で、特に戻りから自分で自分の首を落とす(!)ところまで、手足を大きく見せてさすがに見映えがして立派。
和生の九郎助もご馳走。老父の嘆きと気概をしっかり見せて上手い。
清十郎の葵御前は、品良く楚々とした御台所の風情があり綺麗。

歌舞伎と違うのは、葵御前が産気づいて、あっという間に若君が生まれるので、太郎吉が産室を覗こうとして実盛に止められる(叱られる)場面がない。まあ、あれは子役の見せ場だからねえ。とは言え、実盛が源氏の白旗をお守りにしようと柱に掛け終わる前に生まれちゃうって、どうよ~?

それにしてもこの話、実盛の颯爽とした物語が眼目ではあるけれど、母親の切断された腕を触ったりだの、おじいちゃんは目の前で首を切って、それを自分は手伝ったりだの、太郎吉にとっては酷い話なんだよね。現代だったら、トラウマが残ってまともに育たない話になりそうなんだが、江戸時代は無邪気というかおおらかというか、太郎吉くんはまったく屈託ない様子で…(苦笑)。

艶容女舞衣(はですがたおんなまいぎぬ)
  酒屋の段 文字久・喜一朗、千歳・宗助、津駒・寛治
  道行霜夜の千日 文字久・咲甫・つばさ・希・小住、 富助・清馗・清丈・清公・錦吾
文雀のお園、玉也の宗岸、玉輝の半兵衛、亀次の半兵衛女房、紋秀の丁稚長太、簑二郎の三勝、勘彌の半七

文雀さんのお園はねえ、人形なのに、何故か生娘ってわかるのですよ。嫁に来たのに、愛人がいる夫に顧みられず、一度も枕を交わしていない可哀想なお園。そのくせ舅夫婦に尽くし、あげく「自分さえいなければ…。」なんて言っちゃう、現代では考えられない健気なお園さん。そんなお園の哀れさ、優しさ、苦悩を、文雀さんはまざまざと見せてくれる。なんなんですかね、あの技は。玉男さんの世界とも、簑助さんのとも違う、何とも言えない独特の空気が文雀さんの人形にはある気がする。

酒屋の段の、三組の義太夫が秀逸。文字久さん、良い声になってきたなあ。丁稚のチャリも楽しい。千歳さんも前から好きな大夫さん、ほんとはもうちょっと長く聴きたいんだが、双方の親の嘆きをしっかり。最後は津駒さんが、お園のクドキをしっとり、半七の書置きに悲しむ一家の様子をじっくり聞かせた。

道行は初見。二人の死に至るまでがちょっとくどくて疲れた。話としては中途半端でも酒屋の段で終わる方が良い。

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タグ:文雀 文楽
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