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国立文楽劇場4月公演第二部 [舞台]

4月10日(日)

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大阪に帰るのはお正月以来。今年は全国的に桜が遅めだったので、劇場外の桜もちょうど見頃だった。

文楽劇場も震災後3月の公演はほとんど中止になり、今月も危ぶまれたらしいが、無事に開催となって一安心。だって、停電の心配もない大阪でなんで自粛せなあかんの?おかしいやん。
ロビーでは開演前や幕間に大夫さん、人形遣いさんらが出て募金の呼びかけをなさっていた。人間国宝の住大夫さん、簑助さんらも自らお立ちになっていて頭が下がる。わずかながら募金をしたら、住さんに直々に「おおきに」と言っていただき、こちらこそ、と泣けるくらい感激した。

碁太平記白石噺(ごたいへいきしらいしばなし)
  浅草雷門の段 芳穂・寛太郎 呂勢・清志郞
 
  新吉原揚屋の段 嶋・團七
簑助のおのぶ、清十郎の宮城野、勘緑のどじょう、玉也の惣六、幸助の観九郎

嶋さんの語る、おのぶの奥州訛りの台詞が傑作。もう、可愛くて可愛くて、まさに「萌え~」になってしまった(笑)。いやもうほんとに、嶋さんが若い娘を語るのが大好きなんだが、このおのぶちゃんは娘と言うよりまだ子供で、訛り丸出しという文楽でも珍しいキャラ。字幕見ないで聞いてると半分くらいしか意味わかんないのだが、でもそれは昔の江戸時代の人だってそうだったろう、それで良いんだと思う。でもそれで、幼いときに別れた姉を捜して一緒に親の敵討ちをしようというおのぶの、必死で健気な様子がひしひしと伝わって胸を打つのだから、訛りなんてどうだって良いんだほんとうは。

人形はまず簑助のおのぶが、子供らしいちょこちょこした動きの中に一途な覚悟が見えてさすがに上手い。
師匠のおのぶを受けての清十郎の宮城野は、品がありすっきりと綺麗なのはこの人らしい。簑助さんが見ている前での宮城野のクドキはきっと緊張だろうなあ。もうちょっと嘆きが前面に出ても、と言う気もした。

玉也の惣六も親方らしい貫禄と懐の深さ。
幕開きのどじょうの手品が楽しい。最後にかごから紙がひらっと出てくると、「頑張ろう日本」の字が。泣かせるなあ。

女殺油地獄(おんなころしあぶらのじごく)
  徳庵堤の段 三輪・南都・津國・相子・文字栄・靖・希、團吾
  河内屋内の段 睦・龍爾、英・清介
  豊島屋油店の段 咲・燕三
和生のお吉、勘十郎の与兵衛、紋壽のお沢、玉女の徳兵衛、勘壽の七左衞門

2月には染・亀で歌舞伎版を見たばかり。少なくとも殺しの場面は、文楽で見る方が私は好き。人間ではできない、人形がつつーっと滑っていく表現が面白いし、それにやっぱりああいう残酷な殺しは、生身の人間でやられるとたとえ芝居とわかってはいても目を背けたくなってしまっていささか観るのが辛くなるのよね。

なんと言っても勘十郎の与兵衛が凄い。ちょっとした顔の角度、肩の動きで与兵衛の浅はかで見栄っ張りで自己中心的な性格が見て取れてしまう。歌舞伎で与兵衛をやりたい人はまずこれを見るべきだ。そして豊島屋の場面では、おとなしげにお吉に借金を申し込み、次には不義になって貸してくれと言い、それでも断られて殺意を抱いていく心の動きが、本当にちょっとした手の動かし方、頭のうつむき加減で見えていく。そして最後の凄絶な殺し、まさに体を張った動きで舞台狭しと動くのは一瞬たりとも目を離せない。ここは左も足もほんっと大変だろうな。いや~、勘十郎さん、凄いよ、凄すぎ!

お吉は今回は和生。徳庵堤での甲斐甲斐しい世話好きな様子が上手い。豊島屋では与兵衛の両親の嘆きを受ける様子に情があり、殺しの場は勘十郎同様激しい動きを息も乱さずに見せてそれは立派。
人形遣いさんってね、こんな凄惨で怖い激しい場面でも、自分は表情ほとんど変えないんだよね。ある意味感心するのだわ。

玉女の徳兵衛も、なさぬ仲の息子への愛情と義理に悩む父の悲しさを見せた。でももうちょっと老け作りでも良いか。
紋壽のお沢はさすがに立派。出来の悪い息子でも、勘当はしても愛情は捨てられない母親の優しさ切なさが胸を打つ。

義太夫では、河内屋の英大夫が、徳兵衛とおさわの苦悩と悲しみを聞かせて上々。
豊島屋の段の咲大夫と燕三が、前半ではじっくりと、後半殺しの場では緊迫感に満ちた語りで迫力満点。今こういう勢いのある語りでいちばん脂がのってるのは咲さんだな。

と言うことで夜の部は見応え十分。なのに客の入りが酷く悪くてほんとにもったいない。後半は昼夜入れ替えになって少しましになるかとは思うが、こんな面白いの見なきゃ損なのになあ。
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