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ル・テアトル銀座 二月花形歌舞伎第二部 [舞台]

2月6日(日)

この日は第一、二部と続けて観劇。でも各部とも3時間足らずで終わってしまうので、両方でも体力的には年末南座の顔見世の一部と変わらないくらい(苦笑)。

油地獄.JPG

女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)
河内屋与兵衛  市川 染五郎                        
お吉  市川 亀治郎                      
芸者小菊  市川 高麗蔵                      
小栗八弥  坂東 亀三郎                     
兄 太兵衛  中村 亀 鶴                     
妹 おかち  澤村 宗之助                   
叔父 森右衛門  松本 錦 吾                   
豊嶋屋七左衛門  市川 門之助                    
父 徳兵衛  坂東 彦三郎                     
母 おさわ  片岡 秀太郎

染五郎二度目の与兵衛と言うことだが、前回は観ていない。
この与兵衛と言えば、一昨年の仁左衛門の「一世一代」の名舞台が目に焼き付いていて、染五郎としても相当の覚悟を持って臨んだのではないかと思う。
結果、染五郎の与兵衛はおそらくかなり仁左衛門譲りではあろうけれど、甘ったれでわがままで、でも小心者と言う特徴をよく捉えて見応えのあるものになっていたと思う。
いかにもぼんぼんという可愛い顔もするくせに、すぐにかっと逆上せて親にさえ手を上げる。そのくせ侍の叔父に首打たれるかと思えば怯えて震える。そういう、どこにでもいそうな、困った若者、と言う風情を、すねた目つき、ふてくされた顔、怯える顔、ところころ変わる表情で上手く出していてなかなか。仁左衛門がこの与兵衛は若い人がやる役、と言うのがちょっとわかる気がした。
特に今回は、殺しの後の場面がつくことで、殺人を犯しておきながらまた平気で花街で遊び、逮夜に豊島屋を訪れる無反省で軽すぎる与兵衛のありようが見えて、ある意味、普通に殺しの場で終わるよりも戦慄が走る感じがした。最後に与兵衛が見せた表情は、強がりなのか、あきらめなのか、全て終わったという安堵なのか。

亀治郎のお吉は、人妻らしい色気と世話焼きな雰囲気があるが、この人のニンとしてややキツイ感じ。ちゃきちゃきしてるというか。母親らしい感じももう少しほしいところではある。この役は孝太郎の方が好きだな。

見せ場の殺しの場、油まみれになっての熱演だが、仁左衛門だと凄味と共に練り上げた型の美しさが際立つが、若い二人がやるとよりリアルな感じがしてなんだか凄惨さの方が強くて観ていて疲れる。ちょっと格闘技を観ているような雰囲気。真剣勝負の取っ組み合いとでも言うか。こういう感じ前にも観たな~、と記憶をたどると、やはり染亀でやった盟三五大切の殺しのシーンもこんなんだったなあ、と思いだした。亀ちゃんは、堅気のおかみさんよりああいう芸者みたいな粋な役の方が似合う。

殺し場の後、染五郎は大急ぎで綺麗な姿に戻って、客席を通って登場。観客をいじったり、流行の(?)謎かけなどしながら舞台に上がるサービス付。

この第二部も周りの水準が高くて十分な見応え。
彦三郎の徳兵衛は、はじめなんだか武張った感じで、徳兵衛って侍出身か?と思ってしまったが(笑)、律義で義理堅く、先代に遠慮しながらも与兵衛を心配する様子が悲しげで、勘当された与兵衛を見送って、亡くなった先代に後ろ姿が生き写し、と嘆く場面が哀れ。

秀太郎のおさわもご馳走。子への愛情と夫への義理のはざまで嘆く姿に滋味があってそれはそれは立派。豊島屋に来て、取り落とした金とちまきを徳兵衛に見つかってわびる様子に母の愛が溢れて、徳兵衛と手を取り合って帰って行く姿に涙が出た。
与兵衛もこの二人を見て感じ入っていたはずなのに…。

門之助の七左衞門に堅物の商人の雰囲気がありさすがに上手い。
高麗蔵の小菊に芸者らしい色気と軽さが見える。
錦吾の森右衛門も本役。物堅い武士の様子。
亀鶴の太兵衛、弟と違ってまっとうに育った兄の律義さと、終幕で弟を心配する様子がよく出て上等。出番少なくてもったいないな。
宗之助もおかちも健気な妹の可愛さがあり上々。
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nori

 若手による女殺油地獄がどんな風なのか興味があります。3年前に大阪で海老蔵の与兵衛でみて、その後海老蔵の休演で代役の仁左衛門でみられたという幸運なことがありましたが、こういう演目はリアル過ぎてもいけないし難しいと思います。4月には国立文楽劇場で文楽の上演もありますので、はじめて文楽でも見られるのが楽しみです。
by nori (2011-02-09 02:55) 

mami

noriさん、
仁左様のは円熟した芸が到達した、練り上げられた型の美しさと怖さがありましたし、染めちゃんのはまた若さ(と言うほどでもないんですけどね実際は)故に体からほとばしるエネルギーの熱さを感じますし、それぞれに良さがあると思いました。
文楽の人形はまた違って、人間以上にリアルな反面、人形ならではの動きもあって面白いですね。4月の公演が楽しみです。
by mami (2011-02-09 23:52) 

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