SSブログ

2月文楽公演・第二部 [舞台]

2月7日(月)

今月の文楽は恒例の三部構成。この日は第二・三部を続けて観劇。
劇場前の梅がかなり咲き始めていた。毎年この2月公演でプチ梅見をするのも楽しみ。
SN3N0068.jpg

菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
    道行詞甘替 呂勢・咲甫・南都・文字久・小住、富助・團吾・清馗・清丈・龍爾
    吉田社頭車曳の段 松香・芳穂(始代役)・睦・相子・津國、宗助
    茶筅酒の段 千歳・團七
    喧嘩の段 文字久・清志郞
    桜丸切腹の段 住・錦糸
一輔の桜丸(道行)、清五郎の苅屋姫、幸助の斎世親王、文司の梅王丸、簑助の桜丸、玉佳の杉王丸、玉也の松王丸、、勘緑の時平、勘十郎の白太夫、清十郎の八重、勘彌の春、勘壽の千代

「寺子屋」はよくかかるけど、今回は比較的上演の少ない段。でもどこを切って出しても名場面揃いの菅原だから、どの段もそれぞれ見応えがある。

「道行詞甘替」は特に滅多に上演されないんじゃないかな。少なくとも歌舞伎では観たことがない。その前の加茂堤から逃げ出した苅屋姫と斎世親王に追いついた桜丸の道行。飴売りに扮した桜丸の軽妙な様子と、姫と親王の切ない恋の甘やかさと悲しさが胸を打つ場面。
呂勢と咲甫ってこの頃並ぶこと多いな。イケメンお二人なのでついつい舞台より床をチラ見(爆)。いえもちろんお声も艶があって素敵です。

「車曳」は歌舞伎でもおなじみ。あ、でも歌舞伎では普通「車引」って表記するけど。ここは三つ子もだけど、時平役の太夫が見せ場、じゃなくて聞かせ場。津國太夫が時平の大笑いを豪快に聞かせた。

「茶筅酒」以降が歌舞伎でいう佐太村の段。
歌舞伎と違って、三人の嫁が柄は違うがおそろいの鶯色の着付けなのが綺麗。
千歳と團七が、嵐の前の静けさのような場面の、のどかに三人の嫁が仲良く膳の支度をする様子をユーモラスに、かつ白太夫の心の底の悲しみをふとのぞかせる様子も丁寧に聞かせてさすがに上手い。

「喧嘩」は文字久が梅王と松王の争いを力強く聞かせてなかなかの出来。

そして今月いちばんの見物聞き物は住大夫の「桜丸切腹の段」。
住大夫の舞台はいろいろ聞いてきたけれど、今までの私の体験の中でひとつだけ選べといわれたらこの段にすると思う。この前いつ聞いたか覚えてないのだが、もう本当に恥ずかしいくらいぼろぼろ泣いた記憶がある。
今回も期待に違わず、切腹する桜丸の覚悟、八重の驚き悲しみ、白太夫の悲痛をじっくりしみじみ聞かせてくれて、やっぱりぼろぼろ泣いてしまった。特に白太夫が鉦を叩きながら八重に「泣くな」と言い、八重も「アイ」と答える場面、そうは言いながら泣いている二人の悲しみが胸に迫って痛いほど。住大夫さんて、本当にこういう、人が死んでいく場面が情が溢れて上手いんだよねえ。

人形では勘十郎の白太夫が気骨のある老人の風情。桜丸が切腹の覚悟を語る場面で、横でじっとうつむいている姿に、悲しみとあきらめとが見える巧さ。

桜丸は簑助で、さすがに品のある、悲痛さを秘めながらも落ち着いた姿が美しい。

八重は清十郎。思えば、私の中で清十郎さんのポジションがぐっと上がったのが、6年前の中堅若手公演でのこの八重だった。もちろんそれまでも何度も観ていたのだが特に注目していなかったのが、その時に八重を見て「あ、この人の遣い方、好きだな」って初めて感じた、いわば思い出の役(笑)。今回も期待通り、嫁とは言えまだ初々しい、可愛らしい娘らしさの抜けない八重を見せ、前半の甲斐甲斐しく舅の世話を焼く姿と、後半の悲しみにくれる姿とを、大げさにでなく品良く見せた。

今回は上演されない、その後の筋も知っていて見ると、この可愛い八重さんも後で死んでしまうのね、と思うと余計に切なく、また桜丸の死ぬ場面では、大詰めの「寺子屋」での松王丸の「桜丸が不憫でござる」が聞こえてくるようで、二重に悲しく、最後まで泣けてしようがなかった。まったく、よく書けた作品だと改めて感じた。
タグ:住大夫 文楽
nice!(5)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:演劇

nice! 5

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました