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六月博多座大歌舞伎・夜の部 [舞台]

6月21日

続けて夜の部を観劇。夜の部は1階5列目。

一、鬼平犯科帳(おにへいはんかちょう)
  大川の隠居
長谷川平蔵  吉右衛門           
船頭友五郎  歌 六            
長谷川久栄  福 助             
井上玄庵  染五郎             
木村忠吾  松 江           
大黒屋徳兵衛  桂 三            
小房の粂八  歌 昇             
佐嶋忠介  梅 玉

3年前に初演された「大川の隠居」。再々演ということでだいぶこなれた感じになってきた。顔ぶれも梅玉、染五郎が新しく加わった以外はほとんど同じで、チームワークが取れている様子。

吉右衛門の平蔵についてはもう何も言うことはない。テレビからそのまま抜け出してきたようで、「おお、生の鬼平だ~」とわくわく。
友五郎や粂八を相手のさばけた様子が気持ちよく、忠吾を叱りつけるところに厳しさと優しさが見えて惚れ惚れ。
大詰めの友五郎との台詞の応酬に人柄が滲んで、捕り物の立ち回りこそないものの、鬼平の魅力が横溢する爽やかな芝居。

歌六の友五郎もすっかり手に入っていて、盗賊ながら筋の通った気骨ある老人の風情。あの独特の笑い声が耳についてしまった(笑)。終盤は平蔵と一歩も譲らぬやり取りを聴かせて、台詞劇の趣も面白い。歌六はやっぱり味のある芝居が上手い。
歌昇の粂八も、律儀な人柄が出て上々。
福助の奥方は、初演の時は違和感があったが、だいぶ馴染んだ様子。
松江の忠吾も、おとぼけ者の雰囲気が上手く、梅玉の佐嶋が切れ者の雰囲気。染五郎の玄庵は今回の新しい役だが、話の筋には絡まないが上手く溶け込んでいた。

二、恋湊博多諷(こいみなとはかたのひとふし)
  毛剃
毛剃九右衛門  吉右衛門            
傾城小女郎  福 助             
座頭盛市  翫 雀          
じゃがたら三蔵  染五郎            
中国弥平次  松 緑            
長門市五郎  種太郎           
徳島平左衛門  吉之助            
浪花の仁三  桂 三          
小倉屋伝右衛門  由次郎            
奥田屋お松  東 蔵            
小松屋宗七  藤十郎

博多が舞台の、いわばご当地物の芝居。
この何年か團十郎の専売特許のような毛剃だが、吉右衛門も2回目とのこと。
序幕では海賊らしい謎めいた雰囲気と大きさを見せ、どうかと思った独特の鬘と衣装も意外に似合って、汐見の見得で悠々とした様子。
二幕目では海賊という陰は見せず、豪放磊落で太っ腹なお大尽のよう。小女郎に頼み事をされてうれしくてしかたないようすがおかしく、一転宗七が現れるので手下を押し止めて宗七に仲間になれと説得するところが、無茶な理屈ながら腹の太さと誠実さが見えて面白い。海賊とはいえ、純情さと性根の座った様子の見える、気持ちの良い九右衛門。

藤十郎の宗七は、対称的に和事の二枚目で、こういう役をやらせたらこの人の右に出る役者はいない。ただこの宗七は、封印切りの忠兵衛のようにただなよなよしているわけではなく、芯の強い様子。はんなりとした中にもきっちりとした雰囲気があり、また小女郎との場では二枚目らしい色気もあるのがさすがに上手い。
吉右衛門と藤十郎という、いわば江戸と上方の二枚目の違いが生きた舞台。

福助の小女郎も色気と可愛さがあって、傾城らしい華やかさもあり上々。
東蔵のお松が、諸事心得た女将らしい風情。

時折混ぜられる「よか、よか」などの方言もご当地には余計に楽しく、お客さんも喜んでいた。
それにしても、今月の吉右衛門さんは、昼は盗賊、夜は警察長官と海賊、と追われる役と追う役ばかりというのも可笑しい。

三、勢獅子(きおいじし)
鳶頭鶴吉  染五郎             
鳶頭亀吉  松 緑
鳶の者   松江・亀寿・亀鶴・種太郎

よくかかる演目だが、今回は染五郎と松緑という踊り上手が揃って見応えがあった。二人とも江戸っ子の鳶頭らしい、颯爽としてキリッとした様子が気持ちよく、また二人の息もよく合って、ぼうふら踊りも獅子舞も楽しく見せた。
若い鳶の者4人もよく揃って盛り上げ、全体にすっきりとした江戸前の味が感じられる華やかで楽しい打ち出し。気持ちよく席を立つことが出来た。

今月は昼の部も夜の部も、あまり重い演目がなく、どれもすっきりと後味の良い芝居だった。吉右衛門さんも腹芸と言うより、やっていて楽しそうなご機嫌な役だったし。

終演が8時40分くらい。空港へ急いで、羽田行きの9時40分の最終便に無事間に合い、家にたどり着いたのは日付も変わって0時半頃。朝家を出たのが6時半頃で、まさにとんぼ返りの大強行遠征。さすがに疲れてぐったりだったが、でも無理しても行ってよかったです。
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nori

 博多まで遠征されたのですね。それだけの値打ちがあったようでなによりです。私も、博多で吉右衛門の公演があるのを知って、山口にいくついでに博多まで足を延ばそうかと思ったのですが、行ったことのない秋芳洞、秋吉台に行ってしまいました。7月19日に東京に行く用事がありますので、夜の部を見に行くことにしました。新橋演舞場には行ったことがないので、それも楽しみです。
by nori (2010-06-27 21:19) 

mami

noriさん、こんばんは。お久しぶりです。
ちょっと日程的にきつくて、どうしようかと思ったのですが、やはり吉右衛門さん見たさに行ってしまいました。でもがんばって行って良かったです。

7月19日の夜の部ですか!一緒ですよ。今度はお目にかかれるといいですね。直前にnoriさんのブログの方にメッセージ入れさせていただきます。
by mami (2010-06-27 23:15) 

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