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2月文楽公演・第三部 [舞台]

2月15日

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立春を過ぎた頃からほんとに寒い。今年は暖冬って言ってなかったっけ。しかもこの日は昼頃から雨。今にも雪に変わりそう。こんな日に夕方から出かけるのって、ちょっとユウウツ~、と思いながら家を出る。

今月の公演は、「吉田簑助文化功労者顕彰記念」公演となっている。簑助さんが出演するのはこの第三部のみ。
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ロビーにはこんなパネルも展示され、またプログラムにはチラシと同じ写真の絵はがきが特別におまけで付いていた。

毎回、東京の文楽のプログラムには、有名人の「文楽と私」という文章が巻頭に載るのだが、今回は歌舞伎の片岡仁左衛門さん。驚いたのは、簑助さんが平成10年に倒れた日、仁左衛門さんは大阪の文楽劇場で昼夜観劇していたとのこと。実は私も同じ日に昼の部だけ観に行っていたのだ。簑助さんは昼は普通に出られて、夜の部の前に倒れられたとその翌日の新聞で知ってそれはびっくりしたのだが、まさか同じ場内に仁左衛門さんもいらしたとはねえ。
それはともかく、病気が病気だけにもう舞台に復帰するのは無理ではと思われた簑助さんが、数年後に見事に舞台に帰ってこられたときのうれしさは忘れられない。ほんとに、文楽の神様が簑助さんをファンのところに帰してくれはったんやなあ、と言う思いだった。これからもまだまだ素晴らしい舞台を見せていただきたい。

曾根崎心中(そねざきしんじゅう)
  生玉社前の段 英・團七
  天満屋の段 嶋・清友
  天神森の段 津駒・文字久 他 寛治・清志郎 他
簑助のお初、勘十郎の徳兵衛、玉輝の九平次

勘十郎と簑助によるこの演目は4年前の同じ2月公演でも観ている。その時は玉男さんの代役として徳兵衛を遣った勘十郎、本公演では初演だったろうか。プログラムに載っている舞台写真は玉男さんのもので、懐かしい。4年前に比べれば、勘十郎も格段に進歩していて、簑助の相手役としてしっかり伍しているのは立派。とは言え、やはり全体的に簑助のお初がリードする形なのは展開から言って無理のないこと。歌舞伎で藤十郎がやるときもそうで、心中の決意を促すのも、死に場所へ引っ張っていくのもお初の方なのだ。

簑助のお初は全身に徳兵衛恋しの心が表れて、生玉社前で出会って徳兵衛の膝にすがって顔を見上げる仕種の愛らしさと色気は本当に惚れ惚れするよう。視線の送り方、首の傾げ方といったほんの少しの動きがすべて心を写し出しているのだ。
天満屋では徳兵衛を中に引き入れてから、九平次の悪態をじっとこらえて聞く様子に苦しさがあふれ、徳兵衛に足で合図を送る眼目の場面では人間がやる以上の官能美を見せつけて息を呑むような圧巻。
いやもう、ほんとに凄いものを見せてくれる。

勘十郎の徳兵衛もすっきりした二枚目の男ぶり。九平次に打ちのめされた悔しさ、天満屋の縁の下でお初の足を手にとっての無言のやり取りの切なさをじっくり見せて上々。あの場面は窮屈な状態で遣うので大変だろうなあ。最後の心中の場面が悲しくも美しい。

義太夫はなんと言っても天満屋の嶋大夫がいつもながら素晴らしく、お初の哀しさ切なさを抑えた語りの中でもじっくりと聞かせてさすがに上手い。特に九平次に対し、「私をかわいがらしゃんすと、お前も殺すが合点か」との台詞に凄みがあって迫力満点。こういう女心の切ない場面は嶋さんは本当に上手い。何とも言えない色気と可愛さが語りにあって、引き込まれてしまう。

天神森の段は連れ弾き。寛治がリードしてさすがに聴かせる。この最後の場面の曲はもの哀しさと華やかさが同居する名曲。
タグ:文楽 簑助
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