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二月文楽公演・第二部 [舞台]

2月8日

引き続き第二部を観劇。

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おさん・茂兵衛 大経師昔暦(だいきょうじむかしごよみ)
   大経師内の段 松香・喜一朗、綱・清二郎
   岡崎村梅龍内の段 文字久・清馗、住・錦糸
   奥丹波隠れ家の段 三輪・津國・文字栄・南都・芳穂・富助
文雀のおさん、和生の茂兵衛、清十郎のお玉

初めの「大経師内」だけは歌舞伎で観たことがある。他は全くの初見。
おさんと茂兵衛が密通してしまうに至る経過をたどるのが「大経師内の段」。要は人違いから、お互いをそうとは知らずに肌を合わせてしまい、しかたなく駆け落ちすることになるのだが、そんな無茶苦茶な、と思ってしまう(苦笑)。 そもそも悪いのは好色な旦那じゃん。

この段の切りは綱大夫と清二郎。来春揃って襲名することが発表になった。綱さんは去年は体調不良で休演も多く、秘かにこれはそろそろご引退か、とまで心配したほどだったが、今日聞いた感じでは、声量こそ昔ほどではないものの、だいぶお元気になられたようで良かった良かった。襲名を励みにまだまだ頑張っていただきたい。この段では、おさん、お玉、茂兵衛のそれぞれの心情をじっくり聴かせて上手い。

「岡崎村梅龍内の段」お玉と伯父、おさんと両親それぞれの苦しい立場と別れの情愛の場面。
前半は文字久大夫で、武士の梅龍の毅然とした様子と、お玉のしおれた様子を丁寧に語って上々。文字久さんは、この1年ばかりですごく情の深い語りになってきて、私的には株が上昇中。
切りは住大夫で、両親の娘を想う思い、おさんと茂兵衛の申し訳なさなど、いつもながら情にあふれる語り口で切々と聞かせる。
幕切れ近く、おさん茂兵衛とお玉の三人の影が、処刑された姿のように映るのが工夫。歌舞伎では確か「大経師内の段」の幕切れでおさんと茂兵衛が逃げるところでこのシーンがあったように思う。

「奥丹波隠れ家の段」は終幕。道行ではないので、他の心中物のような華やかな曲ではないのが寂しい。ストーリー的にはなんだかなあ、の話で(苦笑)、好き合ってもいない(いや、でも最後はどうなんだろう。一緒に逃げているうちに情がわいたりしたんだろうか)二人が偶然から密通して捕らえられてしまうというのは、何とも見ていて切ない。「鑓の権三」もそうだが、恋人同士の心中はまだ、来世では幸せになってね、と思えるけど、こういうのは救いがないのよねえ。

人形では文雀のおさんが、町人とは言え大経師という家柄のおかみらしい、おっとりと品のいい姿を見せる。こういう、眉を落とした人妻の役をやらせたら右に出る人はいないなあ。それが一転追われる身になってしまう哀しさ。自らの過ちとは言え、茂兵衛やお玉を巻き込み、親へも不孝をする切なさを、決して派手な動きではなく、つっとした肩の落とし方俯き方で見せる。渋くて上手い。いつもながら惚れ惚れ。
4月の大阪での定高、やっぱり見たいなあ。

和生の茂兵衛が律儀な二枚目の風で立派。さっきはおさんと茂兵衛には情はわいたろうか、と書いたが、文雀さんと和生さんの人形で見ていると、やはり最後までそういう感じではなかったような気がした。逃亡中に男女の関係を続けたかもしれないけれど、恋人同士と言うよりは一緒に逃げる同士のような親密さで終わったのではないか。そう思わせたのは二人の間に「濃い」情念のような空気が感じられなかったから。

清十郎のお玉も下女とはいえきちんとした育ちの娘の様子があって上々。
玉女がおさんの父親で付き合う。
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