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「麗しのうつわ」展 [美術]

2月2日
出光美術館
http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan/exhibition/present/index.html
麗しの器.jpg

昨夜降った雪も朝には止んだようだが、まだ屋根の上などにはかなり残っていた。でも出かける昼頃には家の周りでは道には積もっていなかったので一安心。実は昔、雪道で見事にすってんころりんと転んだことがあって、雪が降るとその思い出がよみがえる(笑)。

「本展は出光コレクションから、猿投(さなげ)、古瀬戸、志野、織部、古唐津、楽、京焼、古九谷、柿右衛門、鍋島、そして近代におよぶ日本陶磁の名品を一堂に展示し、やきものに託されたさまざまな美の姿を通して“麗(うるわ)しさ”とは何かをさぐります。」(チラシより)

とある通り、日本の陶磁器を古くは奈良時代の猿投、新しいところで板谷波山などの昭和の作品までずらりと並べて見せてくれて、一通り日本の焼き物の流れが解る素晴らしい展覧会。
いやもう、ほんっとに名品揃いで、一つとして見過ごすことが出来ないようなものばかり。恐るべし、出光コレクション。こういうのを見ちゃうと、先日見た魯山人なんて、やっぱりしょせんは偉大なる素人、文人の手なぐさみ、としか思えなくなってしまうから怖い。

最初のコーナーは、「京の美、艶やかなる宴」として、野々村仁清、尾形乾山などの京焼。
チラシの作品が仁清の「色絵芥子文茶壺」。華麗だが抑えた色味が品のいい、存在感たっぷりの名作。
仁清は他にも小さな香合などもあって、どれも意匠が愛らしくて美しい。
(この後の写真はすべて絵葉書ではなく、図録を写メしたものなので、ちょっと歪んでいます。ご了承下さい。)

仁清.JPG
仁清「色絵梅花文四方香炉」。愛らしさではこの展覧会中随一かも。蓋の兎も、象も、梅の花も本当に可愛くて素敵。どこのお姫様が使ってらしたのかしら。

乾山になるとさらに凝った作りで、器一つで物語の世界を表してしまうものも。
乾山.JPG
「色絵紅葉文壷」。大胆な紅葉の色使いが楽しい。

第二コーナーは「幽玄の美 ゆれうごく、釉と肌」として、猿投や志野、唐津など。
解説パネルで「徒然草」から
「すべて、何も皆、事ととのほりたるは、あしき事なり。し残したるをさて打ち置きたるは、面白く、生き延ぶるわざなり」
という文を引用して、余白を愛でる日本人の感性に触れていたが、確かにそう言う未完成の美を美と感じる心がなければ、志野焼など存在しないだろう。

志野.JPG
「志野橋文茶碗」。このあまりにもなんて事なさの美しさ。欧米人には理解しがたいのではと思う。

第三コーナー「うるおいの美 磁器のまばゆさと彩り」
ここでは染め付けや、色絵など、現在にまでつながる磁器の美しさをまとめて見せてくれる。

鍋島.JPG
鍋島の「色絵花筏文皿」。染め付けの青い波、筏と、色絵の花の取り合わせがうっとりするほど美しい名品。
これを見たら、やっぱりいつか鍋島のお皿を買うぞ~、なんて思ってしまった。

柿右衛門.JPG
こちらは柿右衛門「色絵花鳥流水文蓋物」。展示されていた柿右衛門の中では柄としては大人しい方。でも写真ではわかりにくいかもしれないが、白磁の素地に流水文が刻まれて、その波間に花鳥が漂う様子がなんとも優美。

九谷.JPG
古九谷「色絵虎文皿」。九谷らしい深い緑に虎の黄色が良く映える豪奢な一枚。でも虎の顔が何ともユーモラスで可愛い。

波山.JPG
こちらはぐっと時代が下がって、昭和初期の波山作「葆光彩磁花卉文花瓶」。写真がピンぼけのように見えるがそうではない。葆光彩(ほこうさい)というのは波山が生み出した技法で、艶消しの釉薬をかけることでまるですりガラスを通したような微妙な淡い光を放つ。これは中でも傑作の一つとか。何とも不思議な味わいで、手にとって触ってみたくなった。

最後の第4コーナーは「いつくしむ美 掌中の茶碗」として茶器を。特に楽茶碗の名品が並ぶ。
楽茶碗って、千利休と結びつきが強いだけあって、いかにもわび寂びといった趣味が濃厚なものばかり。うっかり素人が見ると、どこがそんなに名品なのかと思うのだが(苦笑)、でもやっぱり年月を経た逸品には何とも言えない佇まいのようなものが感じられるから不思議。

楽.JPG
「黒楽不二茶碗」。銘は餘光。楽家十一代、江戸時代末から明治初期の慶入の作。一見単純な図柄だが色合いの複雑さに深みがあって美しい。

とにかくどれもほんとうに素晴らしいものばかり、焼き物のお好きな方はどうぞお見逃しなく。

なお、会場では光琳と抱一の梅の絵も特別展示中(2月14日まで)。抱一の銀箔地の紅白梅図がとても品が良くて素敵だったが、絵葉書がなくて残念。
タグ:出光美術館
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コメント 4

palette

いいですね〜!
仁清って、梅が好きなのかしら。ウサギと象、遊び心満点ですね!
出光美術館は、静かでじっくりと見られるので、お気に入りです。休憩所から、皇居方面を眺められるのも、いいですよね^^
この企画展、行ってみます!まだずいぶん長くやっているみたいですね。ご紹介ありがとうございます。
by palette (2010-02-04 10:03) 

mami

paletteさん、
仁清のこの香炉、ほんとに可愛くて、今回の中でいちばんのお気に入りです。レプリカがあったらほしいくらいでした(笑)。

出光美術館は大きさも手頃で、良いところですよね。休憩所の眺めもいいし、無料でお茶がいただけるサービスもうれしいです。

本当に見応えがあって良い展覧会でしたので、ぜひ行ってみて下さいね。

by mami (2010-02-05 00:17) 

yk2

mamiさん、こんにちは。
こちらで教えていただいたお陰で、11日に抱一の紅白梅図屏風を観て来られました。うつわも大変素晴らしく、勿論じっくり鑑賞して来ましたが、今はまだ、あたまの中じゅうずっと梅図屏風です(^^;。
今回、拙blog記事内からmamiさんのblogのtopページへのリンクを入れさせて頂きました。事後承諾になり大変申し訳ありませんが、ご容赦下さいませ。
by yk2 (2010-02-14 11:45) 

mami

yk2さん、抱一の展示期間に間に合って良かったですね。
せっかくならこの展覧会期間中見せてくれればいいのにと思いました。
絵はがきもないですし~。
お宝がいっぱいの出光美術館の中では、それほど厚遇されてないのかしら(笑)。

もちろん、リンクOKですよ。こちらこそありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
by mami (2010-02-14 23:37) 

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