SSブログ

三月大歌舞伎・昼の部 [舞台]

3月16日 歌舞伎座

元禄忠臣蔵2.JPG

「歌舞伎座さよなら公演」も三月目。今月は昼夜「元禄忠臣蔵」。正直言うと、新歌舞伎も青果も苦手なので、こればっかり観るのは辛い。国立劇場で前にやったときは3ヶ月にわたってで、一回の上演時間も今回よりは短かったし。と言うわけで、いささか気力体力の消耗を覚悟して劇場に行く。

一・江戸城の刃傷
梅玉の内匠頭、弥十郎の多門、我當の田村右京太夫
「仮名手本」と違って、浅野内匠頭と吉良上野介の争いの理由は明らかにされないのね。
梅玉の内匠頭はさすがに手にいった風で、吉良を討ち逃した無念、最期に及んでの覚悟を大名らしい品格をもって見せた。幕切れ辞世を詠みながら、桜舞い散る庭先の源五右衛門と無言の別れをする姿が切ない。
弥十郎の多門伝八朗が、武士らしい男気を感じさせる目付役で、弁も立ち、内匠頭への心遣いも見せる細やかさも持つ様子が、ただの官僚で終わらない風でなかなか。
萬次郎が多門の意見を採らない上役で、いかにも官僚的な役人の風。ちょっと意外な配役だったが、嫌味な台詞もよく聞かせたのは収穫。
我當が田村というのはちょっともったいないが、お膝が悪いのだろう、立ち座りに家来の手を借りていたのが心配。

二・最後の大評定
幸四郎の内蔵助、歌六の井関徳兵衛、種太郎の紋左衛門、魁春のおりく、巳之助の松之丞
本来この前にある「第二の使者」が割愛、この段(と言うのか?)もかなりのカットがあり、ちょっと話が解りづらくなっている。家中の混乱や対立が描かれていないし、内蔵助の人となりを見せる部分も不十分でかなり欲求不満な形となってしまった。
この段での内蔵助はよく泣く(いや、内蔵助だけではないが)。その点、幸四郎は由良之助よりこの内蔵助の方が向いていると思う。なにしろ義太夫狂言で泣きすぎる人だから。また台詞も、時代物の時のようなもごもごした口跡でもなく、しっかり聞かせたのはなによりで、内蔵助の苦衷と覚悟をよく示した。

歌六の井関は初役だろうか。国立劇場での富十郎に比べると、さすがにこの人物の複雑さを浮かび上がらせるところまでは行かないが、乱暴な言葉遣いの中で屈折した浅野家と内蔵助への思い、息子への情を見せた。
種太郎が落ちぶれていても父を敬い慕い、お城勤めの武士に憧れる無垢な少年の哀しみをよく見せてなかなか。
巳之助の松之丞も行儀良い出来。

三・御浜御殿綱豊卿
仁左衛門の綱豊卿、染五郎の富森助右衛門、芝雀のお喜世、秀太郎の江島、富十郎の新井勘解由
「伏見橦木町」をカット。従って、今月唯一女形がたくさん出る場面となり、見た目も華やか。
富十郎以外は一昨年も同じ配役で上演されているが、格段に今回の方が良くなっていた。
もっとも進歩が見えたのは染五郎で、前回はまだ綱豊に一方的に攻め込まれている風だったが、今回は綱豊の言葉に反発し、反駁し、ついにはからかい半分だった綱豊を本気に怒らせるまでの気迫を見せて充実ぶりを示した。

一方の仁左衛門の綱豊も、口跡の良さ、弁舌の鋭さは前もあったが、前回はいささか爽やかすぎる感があったが、今回は世間をはばかるために遊興にふけるふりをする鬱屈、武士道に立って浅野浪士を応援したい気持ち、内蔵助と自分の心を重ね合わせてみる深い心などを見せてそれは立派。
二人の台詞の応酬が高揚感を誘う、見応えある一幕となった。

芝雀のお喜世、秀太郎の江島も手にいった風。
富十郎の新井もさすがに風格を見せて場を締めた。

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

トラックバックの受付は締め切りました

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。