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二月文楽公演第二部 [舞台]

2月16日国立劇場小劇場

敵討襤褸錦(かたきうちつづれのしにき)
 春藤屋敷出立の段
 郡山八幡の段
 大安寺堤の段

簑助の助太郎、玉女の次郎右衛門、清十郎の新七、和生の助太郎の母、勘十郎の高市武右衛門、玉也の宇田右衛門、簑二郎のお霜

平成3年以来の上演という珍しい作品で、初見。
「春藤屋敷出立の段」では前半咲甫と清志郎が、新七とお霜という若い二人の恋人同士の初々しい様子を描き、楽しげ。後半では、様子が一変して、父が殺されたと知った次郎右衛門と新七、母親と長男の助太郎ら春藤家の人々の苦悩を嶋大夫と富助が情緒に溢れた描写で聞かせてさすがに秀逸。特に生来の愚鈍さ故に敵討ちの足手まといになると、助太郎を手に掛ける気丈な母の悲しみ、新七の嫁になれないと思い極めて自害したお霜と新七の井戸越しの対面の哀れさをたっぷりと聞かせた。嶋大夫さんはやっぱりこういう情に溢れた場面は上手いなあ。

「郡山八幡の段」は千歳と清介で、後の段に続くつなぎと言った形でちょっと千歳大夫にはもったいない感じがしなくもないが、さすがにきっちり。

「大安寺堤の段」は切が住大夫と錦糸。乞食に身をやつした次郎右衛門と新七が互いにいたわり合う様子や、刀の試し切りにやってきた宇田右衛門、武右衛門と次郎右衛門の緊迫したやり取りを聞かせてさすがに大きさを見せた。
奥は文字久が休演で代役は咲甫、それに宗助。だまし討ちにあって手負いとなった次郎右衛門と、泣きすがる新七、助けに現れた武右衛門を丁寧に語った。

人形では、玉女の次郎右衛門、清十郎の新七がそれぞれニンに合った様子。
次郎右衛門は春藤屋敷では諸事心得た総領息子らしい落ち着き、大安寺堤では乞食のなりはしていても志を失わず、また弟や国元に残した母や妻を思いやる懐の深さも見せて立派。
新七も心優しい少年のいいなづけとの恥じらいに満ちたやり取りから、敵討ちに出て苦難を経てなお兄を案じるいじらしさを見せた。

てっきり母親が簑助と思っていたら助太郎で、母は和生。簑助がまるでチャリ場のような助太郎の愚かな様子を上手く見せ、和生は息子を愛しながらも家名のためにその命を絶たざるをえない悲しさ哀れさを見せて立派。
勘十郎が兄弟に心を寄せる武士の大きさを出した。

全般にいささか地味な内容で、あまり上演されないのも無理ないかなと言う気もしないではないが、親子、兄弟の情など、涙を誘う場面もあり、思ったより面白く見られた。
でも敵討ち物なのに、成就の場面は描かれず、台詞で「やがて敵を討ち果ほせ名を万天に輝かす…」と言われてもちょっと肩透かしというか、溜飲が下がらないのが残念ではあった。

売店で住大夫さんのご本を購入。見本を見たら、吉右衛門さんとの対談が載っているし、「直筆サイン入り、後2冊です!」との声に負けてしまった(笑)。

なほになほなほ―私の履歴書 (私の履歴書)

なほになほなほ―私の履歴書 (私の履歴書)

  • 作者: 竹本 住大夫
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2008/12
  • メディア: 単行本



前のご本が出たときは、住大夫さんご本人がロビーに出てサインをして下さって、握手もしてもらったので今回もそれを期待していたんだけど、ちょっと残念。
これは最近出た文庫本の方。

文楽のこころを語る (文春文庫)

文楽のこころを語る (文春文庫)

  • 作者: 竹本 住大夫
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/01/09
  • メディア: 文庫



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