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二月大歌舞伎・夜の部 [舞台]

2月9日 歌舞伎座

昼の部の終演時間が遅いので、夜の部の開場が4時15分くらいになっていて入り口は大混雑。夜の部は終演も早いんだから、開演を遅らせるとか工夫すればいいのに。時々、こういう風に時間配分がうまくいってないことがあるのよね、歌舞伎座って。

一・倭仮名在原系図 蘭平物狂
三津五郎の蘭平・実は伴義雄、橋之助の与茂作・実は大江音人、福助のおりく実は妻明石、翫雀の在原行平、秀調の水無瀬御前、宣生の繁蔵

実は初見。話は結構入り組んでいて、よく見ていないと誰が誰やら、と言う感じだが、まあストーリーを追うよりも蘭平の物狂いの様や大詰めの立ち回りを堪能するべき作品という感じ。
三津五郎が、繻子奴の軽快さを上手く見せ、さらに物狂いでは切れのよい踊り、立ち回りでは豪快な動きを見せてそれは立派。この人の踊りは、観ていて本当に気持ちが良い。又終盤では子を想う親の情もしっかりと見せた。

福助にしっとりとした色気と美しさがあり、松風に扮しての行平とのやり取りには滑稽さがある。
橋之助は行儀はよいがいささか淡泊で面白味に欠ける。
翫雀はニンじゃなさそうな感じだったが、まあそこそこ無難に勤めていた。
宣生が一生懸命の舞台で、観客にも暖かく観られていたよう。筋から言うともうちょっと大きい子の方がいいんだろうけど(なにしろ曲者を追いかけていって、首を取ってくるんだから)、これくらいの子の方が素直に健気で可愛い感じが出て、歌舞伎の子役としてはいいんだろう。終盤ではしっかり隈も取ってもらって、きっとご満悦なんだろうな~。

忘れちゃいけないのが、後半の大立ち回りの四天の人たちの活躍。とんぼはもちろん、梯子や棒を使って舞台狭しと動き回る。この日は最前列で拝見していたので、役者さん達の緊張感がひしひしと伝わってきた。三津五郎はもちろん、相手に怪我をさせず、自分も怪我をしないように、細心の注意を払いながら、高いところから飛び降りたり物を投げたり、本当に大変そう。千秋楽まで、一人の怪我人も出ないように祈ってます。

二・勧進帳
吉右衛門の弁慶、菊五郎の富樫、梅玉の義経、染五郎の亀井、松緑の片岡、菊之助の駿河、段四郎の常陸坊

本公演では久しぶりの吉右衛門の勧進帳。私は06年10月の国立劇場での特別公演を拝見しているので約2年半ぶりか。
吉右衛門の弁慶は、まずなんと言っても口跡が素晴らしい。花道で義経に「いかに弁慶」と問われた返事の「はあ~」という低い声音から緊迫感が伝わってくる。舞台に移って、富樫とのやり取りの気迫、勧進帳の読み上げ、山伏問答の火花が散るような熱気、まさに手に汗握るような熱演である。もちろん台詞だけでなく、表情、動きとも細心にして大胆、豪快にして繊細とでも言うのか、弁慶の心情を余すところなく伝えていく芸の確かさに目を見張る思い。
もちろん、吉右衛門はいつだってどんな舞台だって、手を抜いたりすることのない人だが、先月の「対面」の五郎と言い、この弁慶と言い、いつにも増して気力が漲っているような気がするのは、やはり歌舞伎座さよなら公演だからだろうか。ただ観客に見せるのではない、いわば「歌舞伎座の神様」に奉納でもしているような、そんな気配すら感じさせて、観ていてこちらも何だか厳かな気持ちになっていた。
そしてさらには、染五郎や松緑という、次の世代の弁慶役者達にも、「俺の芸をしっかり観ておけ」と言っているような気がした。

菊五郎の富樫も、さすがにこの弁慶相手に譲らぬ気迫を見せてそれは立派。智と情にすぐれた侍らしい気品ある姿で清々しい。
この頃は富樫の多かった梅玉の義経も、当代一の貴公子ぶりで品のある様子が美しく、また弁慶への情も篤い様子が見えてさすが。そして最後の引っ込み際で、ほんの少し足を止めて、見送る富樫に笠に手をやって感謝を示す、それだけの仕草に、義経の武将としての心根の大きさを見せたのは、他の役者ではなかなか出ないものだと感動した。

四天王にこれだけ豪華な顔ぶれが揃うのは滅多にないことで、詰め寄りなどさすがに迫力いっぱい。若い3人は、いずれ彼らでこの勧進帳を演じることもあるだろうが、きっとこの舞台で吉右衛門と共演できたことを忘れないだろうと思う。
番卒に至るまで、まさに当代の決定版「勧進帳」とでも呼びたいような、素晴らしい舞台だった。

三・三人吉三巴白波 大川端庚申塚の場
玉三郎のお嬢、松緑の和尚、染五郎のお坊、新悟のおとせ
確か一昨年の秋、孝太郎のお嬢に、松緑、染五郎で観ているが、玉三郎のお嬢は初めて観たような気がする。
玉三郎は初めの娘姿がさすがに美しい。だが、男と顕わしてからは、発声がどうも良くなくて、例の名台詞も調子そのものは悪くはないが何とはなしに聞きづらい感じ。おそらく男役で台詞を言うことに慣れてないんだろうなあ、という風だった。
染五郎は前に見たよりも手に入った風で、侍崩れの盗人の、しかしまだすっかり悪に染まりきってもいないお坊の育ちの良さのようなものも見せ、色気もあってなかなか。
松緑がこの面子で兄貴分の和尚というのは本来辛いのだが、世話物の気っ風の良い味を見せて上々の出来。いなせな感じが板に付いてきたようで頼もしい。
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コメント 4

愛染かつら

吉右衛門さんの弁慶は本当に素晴らしかったですね。
アッという間に終わってしまった感があります。
まだまだ観ていたかったなぁー。
若手の四天王が三人ともに食い入るように弁慶を見ていたのが印象的でした。
by 愛染かつら (2009-02-13 03:22) 

mami

愛染かつらさん、こんばんは。コメント&TBありがとうございます。
吉右衛門さんの弁慶、本当に力が漲っていてすごかったです。圧倒されてしまいました。
染ちゃん達も気合いが入っていましたね。
by mami (2009-02-13 23:53) 

oaktree

吉右衛門の評はMAXですね
混んでましたか?
ここまで聞くと
一幕見席で勧進帳を見たくなってきたぞよ・・・


by oaktree (2009-02-14 01:19) 

mami

oaktreeさん、こんばんは。
吉右衛門さんの勧進帳は、贔屓目を差し引いても素晴らしいと思います!
お時間があったらぜひご覧になって下さい。観ないと一生の損ですよ(笑)。
夜の部はまだチケットのある日もあるようですし、幕見なら当日並べば入れますからね。
by mami (2009-02-14 23:14) 

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