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2009国立劇場初春歌舞伎公演 [舞台]

1月11日

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恒例のお正月公演、まだ鏡餅や繭玉飾りなどはあったが、獅子舞などはもう終わっていてちょっぴり残念。

一・象引
團十郎の簑田源二猛、福助の弥生姫、三津五郎の大伴大臣褐麿
「歌舞伎十八番のうち」ではあるが滅多に上演されない演目の復活である。さらには病気療養していた團十郎の半年ぶりの復活でもあり、めでたい幕開けになった。
物語としては同じく十八番の「暫」によく似た趣向で、悪人に窮地に陥れられた人々を駆けつけたヒーローが見事に救う、というもので、そこに異国から渡来した珍しい象が絡むのが歌舞伎でも異彩を放つ。「暫」同様、話としてはある種のたわいのなさもあり、筋を追うと言うよりは、主人公猛の超人的な活躍に喝采を送りたい楽しい演目。
なんと言っても半年ぶりの團十郎だが、登場前に揚げ幕内から聞こえる声にも力がこもり、病の影響をまったく感じさせない堂々とした舞台姿にまずホッとする。その後も終始荒事らしい稚気に溢れる大きな姿で、さすがは團十郎、当代一の荒事役者、という期待を裏切らない立派な出来で、歌舞伎好きとして心から復活をお祝いしたい、めでたい気分になった。

三津五郎は公家悪は初めてということで、大きさもあり立派だが、悪人らしい憎々しさに欠けるのは、こういう古風な狂言ではかえって良かったかもしれない。
福助の弥生姫も赤姫らしい品の良い出来。
若君葵丸の巳之助も行儀良くなかなか。

象は中に人が入った張りぼてで、耳も鼻も動くのがご愛嬌。猛と褐麿がしっぽと鼻を引っ張って引き合うのが、何とも可笑しい。
幕切れは花道を猛が象を引いて勇ましく六方で引っ込んでいった。

二・十返りの松
昭和三年、昭和天皇即位の御大典と同じ年に作曲された箏曲に、今上陛下御即位二十年記念として芝翫があらたに振り付けもした舞踊。芝翫に福助、橋之助、橋之助の息子の国生・宗生・宣生と成駒屋三代の共演というのもめでたさに花を添えた形。
舞台には箏曲と鳴り物連中が並び荘重な音楽を聴かせる。歌舞伎の舞台に女性がのるのはこういった箏曲の時くらいなので珍しい気分。
観る前は、勝手に衣装は三番叟みたいな雰囲気だろうと予想していたが、元禄風だったので意外。
まずは子供達三人が行儀良く舞うが、やはり長男の国生君はもうしっかり踊れていて感心。
芝翫はもとより福助橋之助も、品良く、いたってお行儀良い踊り。
といって、正直言って観ていて面白いと言うほどのことはなく、いちばん観客に受けていたのが子供達だったりしたのは、良いのか悪いのかよくわからない。

三・誧競艶仲町(いきじくらべはでななかちょう)
三津五郎の南方与兵衛、橋之助の与五郎、福助の都・お早、巳之助の長吉、團蔵の郷左衛門、市蔵の権九郎
南北作の珍しい狂言の約200年ぶりの復活上演で、役名からもわかるとおり「双蝶々曲輪日記」の書き換え物。舞台を大坂から江戸に移し、元の人物設定をうまく生かして作り替えてある。逆に言えば「双蝶々~」を観たことがないと面白味が半減するかも。また他の南北作品に比べると陰惨な場面がなく、お正月に観るにはふさわしい気がする。

橋之助の与五郎にいかにも江戸っ子の気っ風の良さがある。鳶の頭としてはもう少し懐の深さも欲しい気もするが、正義感が強くでも女に弱い、といった風が上手く出て上々。
福助は遊女の都ではそれらしい色気がありはまり役。だがお早としてはちょっと作りすぎというか、いかにもぶりっ子になっていて、面白くはあるが興醒め。もっと普通に素直に可愛らしい娘に出来ないものか。去年の「野崎村」のおみつで良いのに。この人の悪いやりすぎがここでは出てしまった感じ。
三津五郎の与兵衛が、田舎の郷代官にしては言葉遣いが大身の武士風なのがちょっと変だが、真っ直ぐな暖かい気性の男ぶりでさすがに魅せた。今年も三津五郎からは目が離せない気がする。
團蔵、市蔵は手に入った悪党ぶり。
巳之助がここでも若旦那の柔らかみを見せてなかなか良かった。思えばこんなに芝居している巳之助を観たのは初めてかも。今年は10代最後の年とか、一段の飛躍を期待したいところ。

「双蝶々」は「引窓の段」で泣かせるが、こちらはそういう愁嘆場はなく、最後は悪人が斬られて大団円、めでたしめでたしという感じで幕となった。これも初芝居としては気持ちよく見終わることが出来た。
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