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新秋九月大歌舞伎・初日夜の部 [舞台]

9月1日 新橋演舞場

普段あまり初日には足を運ばないのだが(やっぱり台詞が入ってない役者さんがいたりするし)、今月はそうも言っていられないスケジュールなので、まずは演舞場から。
雨がやっと上がったと思ったらまた暑さがぶり返した。しばらく涼しい日が続いた後の暑さは堪えますねえ。

一・加賀見山旧錦絵
時蔵の尾上、亀治郎のお初、海老蔵の岩藤

文楽でも歌舞伎でもしばしば上演されるが、序幕から観るのは久しぶりかも。
俗に「女忠臣蔵」とも呼ばれる作品だが、その序幕では御殿の中で女同士で剣術の試合をするというのが何ともコミカルで珍しい。
亀治郎が似合いの役で、主人思いの甲斐甲斐しい雰囲気が良く出て、健気な可愛さがあって上々。この人は赤姫などよりこういう溌剌とした感じの方が向いてるんじゃないかと思う。

時蔵の尾上もニンにあって、ひたすら辛抱役だが、律儀で控え目だが芯のある様子が良く出て立派。岩藤に草履でぶたれた後の嘆きや悔しさも十分出して、哀れにも美しいのはこの人らしい。

海老蔵の岩藤は、まあ予想通りというか、ほとんど出てくる毎に笑いが起きてしまう。顔がコワイのは役柄だから良いとしても、台詞がまるでおかまみたいな発声なのはどういうつもりなんだか。まだ7月の狐を引きずっているのか!?この人って、時代物の立ち役以外だと、町人なんかでもこういう気持ち悪い声を出すことが多い。何とかならないのかしら。今回も、女形だからと言ってそこまで無理に声を出さなくて良いだろうに。そのくせわざとかは知らないが、歩き方や打ち掛けの裾捌きなどは乱暴だし、尾上やお初に向かってあのぎょろ目をむいて見せたり。確かに岩藤は敵役だが、仮にもお局様なんだからそれなりの品はあるべきだろう。

三幕目でお初が尾上の部屋に戻ってくると、普通はもう尾上は事切れていたと思うが、今回はそうではなかった。
また終幕でも、お初は岩藤を討つ前に、手下の男との立ち回りがあったはずだがこれはカットされていた。
などなど、時々、あれ?と思うところもある演出だった。

二・色彩間苅豆 ~かさね
亀治郎のかさね、海老蔵の与右衛門

海老蔵はこういう色悪の雰囲気はそれはお似合い。地のまんまじゃないか、と思ってしまうくらい(苦笑)。でも踊りとしてみるとあんまり上手いとは言えない。なんだか、長い手足を持て余してる、と言う雰囲気がありあり。
それに今回は、不思議と悪人の凄みが弱く、何かに流されるように悪事を重ねてきた男のように見えたのは意図的かどうか。

一方の亀治郎は、最初から化粧がなんだかきつくて、随分気の強そうな女に見えてしまったのはいただけない。海老蔵の与右衛門が弱く見えたのはそのせいかもしれず、なんだかかさねがそそのかしてここまで来てしまったように見えた。踊りの方は亀治郎はさすがにいつもながら手の使い方などが美しく、魅せたけれど。

思えばこういう殺しの場を延々と、しかも様式化して美しく見せる舞台というのも、歌舞伎と文楽以外には世界でもあまりないのではないかしら。一昨年この演目がローレンス・オリヴィエ賞の候補になったというのも、その衝撃があったのか、と思ったりする。

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