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コクーン歌舞伎「夏祭浪花鑑」 [舞台]

6月16日 Bunkamuraシアターコクーン

勘三郎の団七九郎兵衛、橋之助の一寸徳兵衛、扇雀のお梶、彌十郎の釣船三婦、勘太郎のお辰、七之助の琴浦、亀蔵の大鳥佐賀右衛門、笹野高史の義平次、芝のぶの玉島磯之丞

(ネタばれあり)

すっかりおなじみとなった串田和美演出のコクーン歌舞伎。海外公演も経ての凱旋公演というところだろうか。この日も立ち見も出る盛況ぶりだが、客層が歌舞伎座とはやはりちょっと違う感じ。

開演前から幕は開いている。そして開演時間の5分くらい前から、役者や鳴り物の人が三々五々客席の通路を通って舞台へ上がったり、また中には2階、3階の客席にまでやってくる役者さんもいて、始まる前からわくわくする感じ。
そうこうするうち、いつの間にか芝居が始まっていて、乱暴者を止めようとして怪我をさせた団七が捕らえられ、そしてすぐに場面が変わって、琴浦にいれあげた磯之丞を諫めるため、お梶が徳兵衛らに頼んで一芝居打つ、普段はこの演目では上演されない発端の場面がスピーディーに展開する。その間にも、義平次が客席を通り過ぎざま、観客のバッグを引ったくっていって他の登場人物が慌てて取り返したり、と導入部から観客を引き込む運びが上手くできている。

住吉神社の場からはほぼ普通の展開になるが、それでもやはり刈り込んであって、冒頭のお梶と三婦のやり取りなどはカットされている。
次の三婦内はほとんど普通通り。

義平次殺しの場は、照明を落とし、ほとんどロウソクの灯りだけの中で演じられ、時折団七が型を決めるときだけスポットでシルエットが映る。雰囲気は面白いのだが、如何せんちょっと暗すぎて、二階席からは役者の表情がよく見えない嫌いがあった。
団七内ではシーンによって照明が変わるのが、ちょっと凝り過ぎかな、という気も。
最後の捕り物の場面は、ミニチュアの家並みの中。花道、客席通路まで使っての大立ち回りで見せる。さらに大詰めでは団七と徳兵衛が舞台奥の壁をぶち破って外に走り出て行ったかと思うと戻ってきて、そこにパトカーが乗りつける、というNY公演でもおなじみの演出。ただしパトカーがドイツのもの、と言うのがご愛嬌か。また、フラッシュ照明を多用したり(ちょっと目が痛くなった)、最後はストップモーションのような動きを見せたり。
去年の「三人吉三」に比べても、古典歌舞伎とは大分離れた演出がたくさん見られた芝居だった。

音楽は去年のようにエレキなどの音楽は使わず、ただ舞台両袖近くに「鼓童」のような大太鼓と笛を配して、祭囃子などを聞かせて雰囲気たっぷり。

確かに面白くはあったのだが、そう言った「斬新」な演出も初めて見れば驚き感心もするが、再演となるとそうはいかないのが難しいところだな~、などとも感じてしまった。

役者はほぼみな再演とあって手に入った様子。
勘三郎はいつもの熱演だが、余裕があるように見えたのは何より。侠客とは言ってもまだ若い、無分別なところもある男の悲しさが出た。
橋之助はすっきりとした男伊達ぶり。終幕の団七に寄せる友情が熱く気持ちよい出来。
扇雀が情のあるおかみさん。
亀蔵は手に入った三枚目の悪党ぶりで上手い。
彌十郎はこの頃老け役が多くなったが、この三婦の恰幅にはいま少しという感じ。特にお辰に向かって「(顔に色気があるから)磯之丞を預けられない」と言う場面、なんというか、台詞に深みがなくて、なんだかお辰を見下しているような雰囲気になったのは残念。

そのお辰は今回勘太郎と七之助のダブル・キャストで、前半は勘太郎。まずは大健闘と言っていいだろう。きっぱりとした風情と色気も出て台詞もよく聞かせてなかなかの出来。難は、所作の一つ一つが、いかにも習ったとおりにやってます、と言う風に見えてしまうことで、あれがもっと身について自然な動きになればもっといいだろうと思う。

七之助の琴浦は傾城らしい色気と、軽薄な雰囲気もあり上々。
笹野高史もすっかり溶け込んでいて、「淡路屋!」の大向こうも自然に聞こえる。殺される場面では泥水にどっぷり浸かって、ご苦労様である。
芝のぶが、日程前半は磯之丞、後半は琴浦。抜擢に応えて、色男で浅はかな磯之丞を好演。

8月もほぼこの顔ぶれを中心に納涼歌舞伎だが、正直言って、そろそろ勘三郎には古典でもうちょっと頑張ってほしい気もするのだが。
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氷白蓮

お邪魔致します。自分も観てきました。
mamiサマの記事は勉強になります。
by 氷白蓮 (2008-06-20 18:40) 

mami

氷白蓮さん、こんばんは。nice!とコメント&TBありがとうございます。
面白い公演でしたね。普通の歌舞伎と思うとちょっと違いますが。

勉強になるなんて、とんでもないです~。好き勝手書いてるだけですので。またお気軽にのぞきに来て下さいね。
by mami (2008-06-20 23:34) 

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