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六月大歌舞伎・昼の部 [舞台]

6月9日 歌舞伎座

一・新薄雪物語
 序幕  新清水花見の場
 二幕目 幸崎邸詮議の場
 三幕目 園部邸広間の場
        同 奥書院合腹の場
幸四郎の園部兵衛、芝翫の梅の方、芝雀の薄雪姫、錦之助の左衛門、吉右衛門の伊賀守、魁春の松ヶ枝、染五郎の奴妻兵、福助の腰元籬、富十郎の秋月大膳・葛城民部

歌舞伎では初見。文楽では大分前に観たはずなのだが、どうしても序幕しか覚えていない。序幕だけの上演だったのだろうか。あるいは後半爆睡したか…。したかもしれない。自信ない(苦笑)。

序幕は、先月の「白波五人男」のそれがこれをパロディ化したもの、と言うのが観た順番は逆だがよくわかる。それにしても、こういう花見で幕開きの芝居の舞台って、たいがい清水寺なのはなんでですかねえ。
序幕での若い二人の恋の始まりが、後の事件と悲劇の発端となっていくつながりが上手くできている。
赤姫の薄雪姫、前髪の左衛門から国崩の大膳まで、あらゆるタイプの歌舞伎的登場人物が出てきて時代物の見本帳のよう。

序幕では腰元の福助と奴の染五郎が活躍。それぞれのご主人の仲を取り持とうと一生懸命な様子を多少滑稽さも見せて演じている。特に福助はいつものことだがちょっと砕けすぎかなという気もしないではないが、すべて飲み込んだ腰元という様子があり、おかしみと色気もあって綺麗。
染五郎の方は威勢のいい奴の雰囲気が良く出て、最後の水奴との立ち回りも颯爽として気持ちよく見せた。終わりの、花道に並んだ奴達が妻平に蹴り上げられて次々に起きあがって引っ込んでいく様子が面白かった。

芝雀はお似合いのお姫様で美しく、初々しい様子が上々。秀逸なのは三幕目で、舅・姑に迷惑はかけられないと逃げ落ちるのを拒む様子に健気さいじらしさがしっかりあって泣かせた。
錦之助が凛々しくうぶな若者の雰囲気が良く出て、品もあり、二幕目で思わぬ嫌疑を掛けられて戸惑う様子も自然で、和事風の柔らかみもあってなかなか。

吉右衛門と幸四郎は役を取り替えても良さそうな似た境遇の二人。二幕目詮議の場で、花道で二人で話し合う場面など観ていると、ちょっと前まで仲悪かったんだよねえ、などと不思議な感覚が沸いてしまう(笑)。
どちらかというと伊賀守の方が老け役の作りで、終幕で蔭腹を切って登場、花道を足取り重く歩いてくるところなど、細かいところまでさすがに吉右衛門はきっちり見せる。母を訪ねてきた左衛門を、力を振り絞ってしかりつけるところなど圧巻。子供を思う親心の切なさを見せて上等。

幸四郎も息子の身を案じ、預かった薄雪姫に情けを掛ける温かい人柄が良く出て立派。伊賀守から届けられた刀を見て謎解きをする場面の表情の変化が上手く、魅せた。
芝翫の梅の方は、温情のある様子で薄雪姫に落ち延びるように説得する場面などは上々だが、伊賀守が左衛門の首を打ったと聞かされたところから急に世話物風になるのが気になる。特に伊賀守が訪れても、腹を立てて口もきかないところとか、この人にはよくあることだが、どうも武家の奥方ではなく商家のおかみさんみたいに見えるのだ。よく言えば可愛いと言えなくもないのだが、私は気に入らない。
魁春が優しい上品な母親の風情。

富十郎の存在感が圧倒的で素晴らしい。序幕では大敵の大膳をたっぷりと演じ、王子の鬘もよく似合ってさすがの大きさ。二幕目では、一転して捌き役の民部で、いかにも諸事心得た懐の深い様子が良く出て、それはそれは立派。この人の前ではさすがの吉右衛門と幸四郎も影が薄いかと感じるほどだった。声の張りもあり、すっかりお元気そうで嬉しい限り。

最後の三人の笑いが、涙を誘って切ない幕切れ。しかし、あそこから空の首桶を持って出仕すると言うが、無理だろ~!とつっこみたくなってしまった(苦笑)。それに、結局悪人はつかまらないのか!?と、大団円を期待する者にはいささか欲求不満な終わりではあった。

二・俄獅子
福助の芸者、染五郎の鳶頭
吉原で、芸者と鳶頭が、絡んでくる火消しをあしらいながら踊る、粋な一幕。福助に艶やかさと芸者らしい粋があり、染五郎もいなせで颯爽とした雰囲気があって上々。
ただ、染五郎の立ち回りは先程の妻平のものと印象がかぶり、なんだかもったいない気も。夜に「三人形」をやるなら、そっちと入れ替えた方がよかったのではないかという気もする。
とは言え、悲劇の後の気分直しの打ち出しとしては上々。
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