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新橋演舞場五月大歌舞伎・夜の部 [舞台]

5月12日 新橋演舞場

新橋演舞場での吉右衛門中心の興行も3年目。これまでは吉右衛門が得意とする演目が主だったような気がするが、今回は初役で伊右衛門を演じる「四谷怪談」。最初にこのニュースを聞いたときは、なんだかニンじゃなさそうなのになぁ、という気がしたが、さて。

通し狂言 東海道四谷怪談
吉右衛門の民谷伊右衛門、福助のお岩・小仏小平・女房お花、芝雀のお袖、染五郎の佐藤与茂七、段四郎の直助権兵衛、歌六の按摩宅悦、錦之助の奥田庄三郎

「四谷怪談」は数年前に勘九郎のお岩さんで観ている。あの時は勘九郎得意の受け狙いが炸裂して、怖いより可笑しい方が強く場内爆笑だった。
それに比べると今回の福助は、予想よりはるかにまっとうにつとめていて、夫に裏切られ、親切を恩に感じていた伊藤家からの非道い仕打ちを恨みながら死んでいくお岩の無念さ、悲しさをきちんと表現した上で、恐い恐いお岩さまになっていったのが印象的だった。もちろん、お歯黒や髪すきのシーンでは笑いがもれたが、あそこはまあ誰がやってもそうだろうし、むしろ普段何かというとやりすぎの福助にしては抑えていたと思う。でもあの髪すきのときの声はちょっと…。やっぱり福助だわ、と言う感じ(笑)。
おそらく吉右衛門の意向もあるのだろう、「四谷怪談」を恐いが面白可笑しいで終わらせず、きちんと人間の業を描いたドラマとして見せようとする姿勢が感じられたように思う。

しかし、あの特殊メークは恐かった(苦笑)。初めに顔が崩れていると宅悦が気づくところでもう充分醜いのが、髪すきの後ではそれこそ二目と見られぬ顔になっていて、宅悦でなくても逃げ出したくなるくらい。宅悦にいたく同情してしまった。一列目で観たので、なんだか夢に出てきそう。
福助は、お岩の他に小平とお花も早変わりでつとめて大奮闘。よく頑張りました~。

吉右衛門は「色悪」のイメージから遠い人で、初めはやっぱり違和感があった。だがだんだん雪だるまのように罪に罪を重ねて人を殺すことを何とも思わなくなっていく男の業の深さを示したのはさすが。お岩さんや子供の着物まで剥いで持っていってしまうような酷い男には全然見えないのだが(笑)、そこをきちんと憎たらしく冷酷に見せたのが芸というものだろう。隠亡堀ではメークもあって凄みを感じさせ、ゾッとする怖さを見せた。

段四郎の直助がふてぶてしい悪人の風情が十分。そういえば、直助は最後まで上手く逃げおおせてしまったのかしら。
染五郎と錦之助は、どっちがどっちでもいいような役回りで、すっきりした二枚目ぶり。
芝雀のお袖はいかにもこの人らしい純朴そうな人柄がでた。この人はお岩さんはやらないだろうな。
歌六の宅悦が、人が好く、伊右衛門とお岩に振り回される哀れさと気の毒さを感じさせてなかなか良い味だった。

「戸板返し」とか「提灯抜け」とか、江戸時代に考えついた人は偉いと思う。CGや特撮を見慣れた現代人でも「おお~!」と感心するもの。あの「戸板返し」の早変わり、いつ観てもどうやってるんだろうと思ってしまう。

最後は生世話ものによくある、立ち回りの途中で「本日はこれきり~」で終わる。あれって、ちょっとすっきりしなくて好きじゃない。でも福助がお岩じゃなくてお花になって終わるのは、何となく後味が良いかも。

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