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團菊祭五月大歌舞伎・夜の部 [舞台]

5月19日 歌舞伎座

歌舞伎座の團菊祭に新橋演舞場の吉右衛門一座と、今月も忙しい。文楽もあるし。
毎年こういう風に両座で公演があるが、仕方のないことだが顔ぶれが一定になっている。それはそれでアンサンブルが良くなっていいのだろうが、今月に限らず、例えば菊吉の共演などが最近ほとんどないのが少し寂しい気もする。

一・通し狂言 青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ) 白波五人男 
菊五郎の弁天小僧菊之助、團十郎の日本駄右衛門、左團次の南郷力丸、時蔵の赤星十三郎、三津五郎の忠信利平、東蔵の浜松屋幸兵衛、海老蔵の宗之助、梅玉の鳶頭清次、富十郎の青砥左衛門藤綱

「浜松屋の場」と「稲瀬川勢揃の場」は何度か観ているが、通しで他の場も観るのは初めて。
「三人吉三」などと同様に、黙阿弥らしい因果で絡み合った人間関係を基調に物語は展開するが、筋がどうこう言うより、場面場面の様式美溢れた美しさや面白さを堪能できる作品。
序幕、初瀬寺の場での時代物風の美しさ。稲瀬川谷間の場のだんまりの面白さ。
二幕目、一転して世話物風に展開する浜松屋の場での痛快さ。稲瀬川勢揃いの場の華やかな様式美。
大詰、極楽寺屋根立腹の場の立ち回りとがんどう返しの豪快さ、山門でのふたたび時代物に帰ったかのような壮麗さ。
次々に展開するこれらの場面それぞれが面白く、役者も揃って文句なしに楽しめた。

序幕では梅枝の千寿姫が品があり綺麗だが、相変わらずちょっと硬い雰囲気。まあお姫様だからこれくらいでいいか、とも思うが。考えてみれば、この物語でいちばん可哀想なのはこのお姫様で、この人を死に至らしめたが故に最後に弁天小僧は死ななければいけないのだろうと思う。
姫付きのお局柵で田之助が出るのは贅沢。
時蔵の十三郎にいかにもお小姓風の優しげな品の良さがあり、三津五郎の利平に大きさがあって立派。

菊五郎の弁天小僧は、当たり役の一つであり家の芸でもあり、さすがの出来。こういう小気味いい役では当代随一だろう。序幕では千寿姫の許婚小太郎と見せかけてからの顕わし、浜松屋ではお嬢様から盗賊へ、それぞれ変化の様子が鮮やかで痛快。眼目の名乗りの名台詞も流れるように聞かせて期待通りの心地よさ。(あそこで、手にした煙管をくるくる回すのが、器用だな~と妙に感心してしまった(笑))
難を言えば菊之助や七之助のような、いかにも不良少年のような初々しさは当然望めないが、それでも舞台の上であれだけの若々しさを見せられるのは芸の力だろう。

團十郎の日本駄右衛門がさすがに大きく、腹もあって立派。それが浜松屋蔵前の場で、宗之助が実の息子と判る場面で一挙に世話に砕けるのも可笑しい。最後の山門の場では石川五右衛門張りの大盗賊の風格。
左團次の南郷も、菊五郎との息もぴったりで大きさとおかしみを見せた。
「五人男」としては今の役者ではほぼベストの顔ぶれが揃ったと言ってもいいのではないだろうか。

東蔵の浜松屋幸兵衛はいつもながら手堅い出来。
梅玉の鳶頭もいなせな味があり上々。
海老蔵の宗之助は、まったくニンでなく、こういう世話物の町人役になるとどうしてああいう変な台詞廻しになるのだろう。
最後は富十郎が付き合って、貫禄を見せて舞台を大きくした。

二・三升猿曲舞(しかくばしらさるのくせまい)
松緑の此下兵吉
歌舞伎座の本興行で上演されるのは初めてという珍しい舞踊。
若い頃の秀吉(兵吉)が、先輩の奴に絡まれながら槍の名手ぶりを見せて踊るという趣向。
松緑はこういう”やんちゃ”な雰囲気の役はお似合いで、これも切れの良い動きと粋の良さを見せて、なかなか面白く拝見できた。ちょっと扇の扱いをミスしたようだったが(苦笑)、絡む奴達をあしらう立ち回り風のところなど派手な所作で見映えも良い。これからも取り上げられても良い演目のような気がした。


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