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「金刀比羅宮書院の美 ~応挙・若冲・岸岱」展 [美術]

http://www.asahi.com/konpira/
東京芸術大学大学美術館

「こんぴらさん」の愛称で知られる香川県琴平町の金刀比羅宮。ここの書院を飾る障壁画を、可能な限り実際と同じ形に再現してみせる貴重な展覧会。壁に描かれたものなど移動できない部分は、デジタル複製画を使用。最新の技術は、素人目にはオリジナルと判別が出来ないほどで、まるで本物の書院の部屋の中にいる気分にさせてくれる。

展示された障壁画は、タイトルにあるとおり、丸山応挙、伊藤若冲、岸岱、それに邨田丹陵のものも。
中でも圧巻は、応挙の「遊虎図」。部屋の三方を囲む襖に全部で8頭の虎の絵。昨年の「プライスコレクション展」でも多くの虎の絵があったが、応挙の描く虎も、迫力がありながらもどこかユーモラスな感じがするのは、実物を見ず、あくまで想像で描いているからだろうか。だが毛並みまで丁寧に描き込まれた細かさと、大胆な構図はさすが応挙のもの。

同じく応挙では他に「芦丹頂図」「七賢図」などもあり、どれも見応え十分。

岸岱では「水辺柳樹白鷺図」が素晴らしい。白鷺が飛び立ち、空を舞い、そして降り立つまでの様々な姿態をストップモーションの連続写真のように描き出した、その細やかな観察眼と、大振りな柳の描き方との対比が見事。

若冲は「花丸図」。まるで花の図鑑のようにいろいろな花を襖いっぱいに並べて描き込んであり、一つ一つの花は若冲らしく葉の虫食いまで細密に描かれている。あまり大きな部屋ではないので、なんだか息が詰まるような感覚に襲われる。

若冲の部屋を出た後では、邨田丹陵の描いた富士の絵の広々とした姿になんだかほっとする思い。
丹陵はさらにその隣の部屋に、鎌倉時代の源頼朝による、富士の裾野での鹿狩りの模様を描いた「富士巻狩図」を配するという洒落た趣向を見せる。この鹿狩りといえば、歴史に名高い曽我兄弟の仇討ちの舞台となったところ。絵の中にその場面があるわけではないが、歌舞伎好きとしては興味津々。

全部で10室分の、江戸から明治までの日本を代表する画家による障壁画を堪能できる貴重な機会。現地に行っても普通は非公開ということなので、この機会をお見逃しなく、ということ。

これらの障壁画の他にも、絵馬や、金刀比羅さんに奉納された舟の模型などもあり興味深い。
なお、音声ガイドのナレーションは歌舞伎俳優の片岡愛之助。「こんぴらさん」は歌舞伎ファンにもおなじみですもんね。


チラシ・ポスターに書かれたキャッチコピー。「この夏は、上野の山へ シュラシュシュシュ。」お堅いイメージの公立美術館にしては、ユーモアがあって上出来と思いませんか?

さらにこの展覧会のチケットで、同時開催の「芸大コレクション展 歌川広重《名所江戸百景》の全て」も観ることができる。http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2007/collection200707/index.htm
有名な絵なので、どこかで観たことがあるものも多いが、100枚(正確には120枚)一度に観たのはもちろん初めて。どれも色が美しく、江戸の粋を感じられる楽しい絵ばかり。全てに絵と詳しい土地の説明があるのも親切。ただ、「金刀比羅宮展」を観た後では、百枚全部を丁寧に観ていく気力体力が残っていなかったのが残念。広重のファンならこちらだけ観てもいいくらい。


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