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壽 初春大歌舞伎 夜の部 [舞台]

1月9日(月) 歌舞伎座

北條秀司 作・演出
一、井伊大老(いいたいろう)
井伊直弼    幸四郎
仙英禅師    歌六
長野主膳    染五郎
水無部六臣   愛之助
老女雲の井   吉弥
宇津木六之丞   錦吾
中泉右京    高麗蔵
昌子の方    雀右衛門
お静の方    玉三郎

幸四郎と玉三郎の顔合わせって珍しくない?しかも新歌舞伎で。
でも実を言うと、二人とも何をやっても同じような台詞回しになる人なので、義太夫狂言で共演するよりは遥かに馴染みが良いように感じた。少なくとも、玉三郎と吉右衛門で感じた肌合いの違いはそこまでは感じなかった。

玉様は可愛い純粋なお静様。直弼への愛だけで生きている女のいじらしさと悲しさが溢れる。
幸四郎の直弼は自分の意志とは違うところで生かされ抗いながら責任を果たそうとする男の辛さを、お静の前でだけ見せる。二人にしかわからない絆の強さと愛情が切なくも優しくあたたかい。

正室昌子の雀右衛門がいかにもおっとりお育ちの良いお姫様。おつきの腰元が京屋シスターズで、下屋敷からの鶴姫重病の手紙を「本当でしょうか。。。」とちょっと意地悪げに言うところが最強。

歌六の禅師が飄々として、深い。洞察力に優れ、お静を温かく見守る。
染五郎の主膳は、一生懸命怜悧さを出そうとしてるが、少なくとも幸四郎相手には貫禄が不足しているので、あくまで安政の大獄を押し進めようとする胆力が見えないのが辛い。
愛之助の水無部六臣も勤王一途の心底は誠実な男を懸命に見せるが、ちょっと空回り気味。

今回、終幕の襲撃の場をやらず、雛祭りの場で終わったのは正解だと思う。正月だし、というのもあるけど、この先は誰でも知っている。知っているけど、このまま二人がずっと幸せでいられたらいいのに、という儚い希望を抱かせてくれるのが好きだ。

五世中村富十郎七回忌追善狂言
二、上 越後獅子(えちごじし)
角兵衛獅子  鷹之資
もう七回忌なのか。年月のたつのは早いものだ。そして、11歳で父を亡くした鷹之資が一人で歌舞伎座の大舞台で追善の踊りを踊る。それだけでも既に胸が熱くなるのだが、踊り自体が実に立派だった。まさに楷書の踊りと言うべきか、行儀良く、それでいて堂々として、きびきびとした動きが気持ちよい。後半の晒しを使った部分も鮮やかで目を見張る。はじめは、子供ががんばってるわね~とゆるく見ていた観客が、引き込まれていくのがわかる。
これまでも勉強会などで拝見して、しっかりと稽古を積んでいるのはわかっていたが、改めて大物ぶりを発揮。富十郎さんも喜んでおられるだろうと思うと涙が出そうだった。そろそろ声変わりも終わったろうか?これからは踊りだけでなく、芝居にも出してもらえると良いな。


下 傾城(けいせい)
傾城   玉三郎
幕開きには花魁道中の模様も見せるサービス付き。
玉様があのお衣装で出てきたらため息しか出ないわ。ああいうゆっくりした踊りは正直苦手なのでよくわかりませんが、お姿拝めただけで、はあ、めでたい、良い正月だ、という気分。


三、秀山十種の内 松浦の太鼓(まつうらのたいこ)
松浦鎮信   染五郎
大高源吾   愛之助
お縫    壱太郎
宝井其角   左團次

染五郎の松浦侯は去年の巡業が初役。その巡業初日を観たが、播磨屋のを一生懸命コピーしたな、という感じだった。その時に比べると、コピー感はかなり薄くなり、自分なりの殿様を作ろうとしているのかなと思った。それはそれでいいと思う。播磨屋の殿様はあの年齢に達したからの至芸で、真似て真似られるものではないだろうから。
だが、改めてこの芝居、意外に難しいと言うことが浮き彫りにもなった。播磨屋がやれば、小身とは言え大名のお殿様が気まぐれや癇癪を起こしたり、へそを曲げたり、一転急にご機嫌になったり、といった変化が可愛くもあり、面白くもあるが、如何せん染五郎では「御前様」の貫禄がなく、可愛くはあるけど、面白さには欠ける。まあ、そもそも「ばか、ばか、ぶぁか」だけで芝居になる播磨屋が特別なんだが。でも以前見た他の役者みたいに馬鹿殿ではなかったし、今後続けてやっていってほしい。

左團次の其角が飄々として温かい人柄がよくでて、一人出色の出来。
壱太郎のお縫は可憐だが、何だろう、この人は武家より町娘の方が似合う。
愛之助の源吾はきりっとした様子で、今月の役でこれがいちばん良いように思う。ただ、終幕で討ち入りの様子を物語るところなどはやや力みが過ぎる。気持ちはわかるが、ここはもう少しさらっとやって爽やかに終わってほしい気も。
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