松竹座壽初春大歌舞伎昼の部 [舞台]
1月2日(月) 松竹座
前の記事でやっと去年の記録が終わりまして、これからやっと今年の分です。改めまして、本年もよろしくお願いいたします。
松竹座の年明けは芝翫とその息子さんたちの襲名披露。正月気分と相俟っていっそうめでたい気分。
一、吉例寿曽我(きちれいことぶきそが)
鴫立澤対面の場
工藤奥方梛の葉 秀太郎
曽我箱王 宗生改め福之助
曽我一万 宜生改め歌之助
小林朝比奈 国生改め橋之助
腰元久須美 芝喜松改め梅花
腰元宇佐美 新悟
近江小藤太 亀鶴
八幡三郎 松江
75年ぶりとか何とかの珍しい狂言。よくやる対面の、工藤の代わりに奥方がでて、並び大名でなく腰元たち、と女方がずらりと並ぶのでなんとはなしに華やいだ雰囲気。場面が雪の中というのも珍しい。曽我兄弟も対面の十郎五郎より幼く見えるのは、元々そういう設定なのか、今回の二人に合わせて書き換えたのかはわからない。
初日故、福之助、歌之助の兄弟は力が入って一生懸命。まだまだ勉強しないといけないことはいっぱいだけど、懸命さが清々しい。がんばって。
お兄ちゃん橋之助の朝比奈も同様だが、さすがに一日の長はあり、荒事らしい力強さを見せる。
秀太郎の奥方は最後の方でやっと姿を見せるだけだが、さすがの貫禄。若手の多い舞台をしっかりと締める。
当然初めて見る演目だったが、予想以上に楽しかった。月末に掛けてきっともっと盛り上がるようになるだろう。
二、梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり)
鶴ヶ岡八幡社頭の場
梶原平三 橋之助改め芝翫
大庭三郎 鴈治郎
奴菊平 進之介
梢 児太郎
俣野五郎 国生改め橋之助
川島八平 松之助
山口十郎 橘三郎
剣菱呑助 彌十郎
六郎太夫 東蔵
昼の部の芝翫襲名披露縁目。
芝翫梶原は羽左右衛門型。刀に下げ緒を巻かないし、最後は手水鉢の向こう側から正面向いて斬る。播磨屋型より派手な印象だが、芝翫には似合う。
その芝翫の梶原だが、全体に爽やかで気の良い様子。もうちょっと大庭兄弟を食ったような感じもあって良いと思うが、まず手堅くまとめてはいる。でもこの芝居、きちんとやられても面白くないわけで、他愛のない、言ってしまえば馬鹿馬鹿しくもある内容を面白く見せるのは役者の腕次第。台詞回しの調子の良さで聞かせるにはまだまだなんだなあ。播磨屋と比べるのは気の毒だが、どうしてもあの名調子を思い浮かべてしまうと、物足りなく感じてしまう。芝翫にはさらに上を目指してほしい。
児太郎の梢が可憐。こういういじらしい娘がよく似合うようになった。
東蔵の六郎太夫は手に入った様子。娘思いの情の深い父親。
鴈治郎の大庭、ガラでなさそうだが、きっちり。「大庭は大名」は「だいみょう」と発音。「でえみょう」と言う人もいるが、あれは江戸風と言うことだろうか。前からちょっと不思議に思っている。
橋之助の俣野、さっきの朝比奈よりもさらにやんちゃでちょっとお馬鹿な様子をがんばって出していた。
呑助は彌十郎、やや真面目な呑助。
恋飛脚大和往来
三、新口村(にのくちむら)
亀屋忠兵衛/父親孫右衛門 仁左衛門
万歳 松江
才造 亀鶴
忠三郎女房 竹三郎
傾城梅川 孝太郎
忠兵衛と孫右衛門二役をやるのは仁左衛門以外では見たことがない。あまり好きなやり方ではない。というのは孫右衛門をやっている間は忠兵衛は吹き替えになるので、ちゃんと顔を見せられず演技も半端。あそこの、家の中からでるに出られず苦悩する忠兵衛の無言の演技も大事だと思うのである。
まあそれはともかく、忠兵衛は文句なしの二枚目色男。幕開き、むしろを開いた様子の美しさに息を飲む。まさに金も力もない優男だが、梅川を愛し、父親への義理も情もある。情けなくも愛おしい男。
孫右衛門としては、養い親への義理を持ちながら、実の親としての情があふれ出る。梅川を恨めしいと思いながらも優しさに感謝もし、なにより忠兵衛の無事を祈る。ほんの刹那抱き合って、突き放すように早く逃げろと急き立て、そっちだそっちだと見送る。見えなくなっても声が届かなくなっても祈りながら見送る。その悲しさ、切なさ。胸が締め付けられる。
仕草などには、若干普段老け役をやり慣れていないぎこちなさも感じないではなかったが、そういうことを凌駕する、情のこもった、いやあふれ出る孫右衛門だった。
孝太郎の梅川、しっとりとして情が濃くて優しい女。こういう情の細やかな役が自然で上手い。自分故に忠兵衛が罪人になったという負い目と、嫁と名乗れずに孫右衛門に尽くす切なさが胸を打つ。拵えも黒の着物がよく似合う。傾城などの絢爛な衣装よりこっちが引き立つように思う。
竹三郎が忠三郎女房で達者なところを見せたのも嬉しい。おかしみと軽妙さがあってさすがに上手い。
今月の祝幕。これも佐藤可士和さんのデザイン。ポップで楽しい。
前の記事でやっと去年の記録が終わりまして、これからやっと今年の分です。改めまして、本年もよろしくお願いいたします。
松竹座の年明けは芝翫とその息子さんたちの襲名披露。正月気分と相俟っていっそうめでたい気分。
一、吉例寿曽我(きちれいことぶきそが)
鴫立澤対面の場
工藤奥方梛の葉 秀太郎
曽我箱王 宗生改め福之助
曽我一万 宜生改め歌之助
小林朝比奈 国生改め橋之助
腰元久須美 芝喜松改め梅花
腰元宇佐美 新悟
近江小藤太 亀鶴
八幡三郎 松江
75年ぶりとか何とかの珍しい狂言。よくやる対面の、工藤の代わりに奥方がでて、並び大名でなく腰元たち、と女方がずらりと並ぶのでなんとはなしに華やいだ雰囲気。場面が雪の中というのも珍しい。曽我兄弟も対面の十郎五郎より幼く見えるのは、元々そういう設定なのか、今回の二人に合わせて書き換えたのかはわからない。
初日故、福之助、歌之助の兄弟は力が入って一生懸命。まだまだ勉強しないといけないことはいっぱいだけど、懸命さが清々しい。がんばって。
お兄ちゃん橋之助の朝比奈も同様だが、さすがに一日の長はあり、荒事らしい力強さを見せる。
秀太郎の奥方は最後の方でやっと姿を見せるだけだが、さすがの貫禄。若手の多い舞台をしっかりと締める。
当然初めて見る演目だったが、予想以上に楽しかった。月末に掛けてきっともっと盛り上がるようになるだろう。
二、梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり)
鶴ヶ岡八幡社頭の場
梶原平三 橋之助改め芝翫
大庭三郎 鴈治郎
奴菊平 進之介
梢 児太郎
俣野五郎 国生改め橋之助
川島八平 松之助
山口十郎 橘三郎
剣菱呑助 彌十郎
六郎太夫 東蔵
昼の部の芝翫襲名披露縁目。
芝翫梶原は羽左右衛門型。刀に下げ緒を巻かないし、最後は手水鉢の向こう側から正面向いて斬る。播磨屋型より派手な印象だが、芝翫には似合う。
その芝翫の梶原だが、全体に爽やかで気の良い様子。もうちょっと大庭兄弟を食ったような感じもあって良いと思うが、まず手堅くまとめてはいる。でもこの芝居、きちんとやられても面白くないわけで、他愛のない、言ってしまえば馬鹿馬鹿しくもある内容を面白く見せるのは役者の腕次第。台詞回しの調子の良さで聞かせるにはまだまだなんだなあ。播磨屋と比べるのは気の毒だが、どうしてもあの名調子を思い浮かべてしまうと、物足りなく感じてしまう。芝翫にはさらに上を目指してほしい。
児太郎の梢が可憐。こういういじらしい娘がよく似合うようになった。
東蔵の六郎太夫は手に入った様子。娘思いの情の深い父親。
鴈治郎の大庭、ガラでなさそうだが、きっちり。「大庭は大名」は「だいみょう」と発音。「でえみょう」と言う人もいるが、あれは江戸風と言うことだろうか。前からちょっと不思議に思っている。
橋之助の俣野、さっきの朝比奈よりもさらにやんちゃでちょっとお馬鹿な様子をがんばって出していた。
呑助は彌十郎、やや真面目な呑助。
恋飛脚大和往来
三、新口村(にのくちむら)
亀屋忠兵衛/父親孫右衛門 仁左衛門
万歳 松江
才造 亀鶴
忠三郎女房 竹三郎
傾城梅川 孝太郎
忠兵衛と孫右衛門二役をやるのは仁左衛門以外では見たことがない。あまり好きなやり方ではない。というのは孫右衛門をやっている間は忠兵衛は吹き替えになるので、ちゃんと顔を見せられず演技も半端。あそこの、家の中からでるに出られず苦悩する忠兵衛の無言の演技も大事だと思うのである。
まあそれはともかく、忠兵衛は文句なしの二枚目色男。幕開き、むしろを開いた様子の美しさに息を飲む。まさに金も力もない優男だが、梅川を愛し、父親への義理も情もある。情けなくも愛おしい男。
孫右衛門としては、養い親への義理を持ちながら、実の親としての情があふれ出る。梅川を恨めしいと思いながらも優しさに感謝もし、なにより忠兵衛の無事を祈る。ほんの刹那抱き合って、突き放すように早く逃げろと急き立て、そっちだそっちだと見送る。見えなくなっても声が届かなくなっても祈りながら見送る。その悲しさ、切なさ。胸が締め付けられる。
仕草などには、若干普段老け役をやり慣れていないぎこちなさも感じないではなかったが、そういうことを凌駕する、情のこもった、いやあふれ出る孫右衛門だった。
孝太郎の梅川、しっとりとして情が濃くて優しい女。こういう情の細やかな役が自然で上手い。自分故に忠兵衛が罪人になったという負い目と、嫁と名乗れずに孫右衛門に尽くす切なさが胸を打つ。拵えも黒の着物がよく似合う。傾城などの絢爛な衣装よりこっちが引き立つように思う。
竹三郎が忠三郎女房で達者なところを見せたのも嬉しい。おかしみと軽妙さがあってさすがに上手い。
今月の祝幕。これも佐藤可士和さんのデザイン。ポップで楽しい。
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