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鳳凰祭三月大歌舞伎・夜の部 [舞台]

盲長屋梅加賀鳶
一、加賀鳶(かがとび)
本郷木戸前勢揃いより
赤門捕物まで
天神町梅吉/竹垣道玄 幸四郎
女按摩お兼 秀太郎
春木町巳之助 橋之助
魁勇次 勘九郎
虎屋竹五郎 松 江
盤石石松 歌 昇
数珠玉房吉 廣太郎
御守殿門次 種之助
昼ッ子尾之吉 児太郎
お朝 宗之助
伊勢屋与兵衛 錦 吾
金助町兼五郎 桂 三
妻恋音吉 由次郎
天狗杉松 高麗蔵
御神輿弥太郎 友右衛門
雷五郎次 左團次
日蔭町松蔵 梅 玉

序幕の鳶の勢揃いではずらりと並んだ中で勘九郎の姿の良さが目を引く。血気盛んさと粋でいなせな空気を身にまとった格好良さ。江戸っ子だねえ、という感じ。
後は、初日近くと楽日間近に観た間に児太郎の台詞がぐんと良くなっていた。伸び盛り。

盲長屋の幸四郎は前回よりは愛嬌が増したか。それでもやや不気味な怖さが顔をのぞかせる。去年やった不知火検校みたいな。うん、あれは怖かったな。
秀太郎のお兼は強欲だが道玄に対しては可愛げも見せる。可愛い悪女の秀太郎さんは最強。
梅玉の松蔵はニンとは言いにくいが、鳶頭らしいさっぱりとした格好良さ。昼の工藤もだが、はまり役ではなくても常に及第点を取る高砂屋には感心する。

二、歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)

武蔵坊弁慶 吉右衛門
富樫左衛門 菊五郎
亀井六郎 歌 六
片岡八郎 又五郎
駿河次郎 扇 雀
太刀持音若 玉太郎
常陸坊海尊 東 蔵
源義経 藤十郎

吉右衛門の弁慶に菊五郎の富樫。悪かろうはずがない。どれだけ素晴らしいものを見せてくれるかという事前の期待のはるか上を行く凄い舞台だった。
吉右衛門弁慶のなんとしても義経を守り通して関所を通るという気迫。勧進帳読み上げと山伏問答の朗々とした口跡。やむを得ず義経を打擲した後の、申し訳なさにうちしおれた姿の痛々しさ。。。最後の六方の引っ込みまで、どの場面を切り取っても信念と力が漲り、そして片時も義経から意識が離れない、まるで仏を守護する不動明王か神将のような弁慶にただただ圧倒される。

対する音羽屋の富樫も気力に満ち、厳しさを持ちながらも、弁慶の気持ちに打たれて見逃す決心をする、その武士としても高貴さと官吏としての鎌倉方への忠義との間に揺れる悲しさつらさと、すべての責を負う覚悟を決めた落ち着きとを一身にまとう。「今は疑い晴れもうさん」の言葉にこもる厚情と覚悟の悲壮さに思わず涙。

火花散るような山伏問答、義経を打つ弁慶と止める富樫の緊迫、まさに手に汗握るよう。ただ息をのんで観るばかり。

さらに忘れてならない、藤十郎の義経。もうほんとになんにもしない。天地人の見得だって、ほとんど身じろぎもしない。にもかかわらず、いるだけで御大将の気品がある。そりゃ番卒でなくても強力には見えないぞ。「判官御手を」のあふれるいたわりに胸がふるえる。

四天王はこの頃は若手が務めることが多かったが今回は中堅(?)で。特に又五郎の熱さが目に付いた。義経が弁慶をねぎらうところでは本当に泣いているようで眼が赤かった。胸熱。

もう、いくら語っても、わたくしの拙い文ではこの舞台の素晴らしさを伝えることなんて不可能。こけら落としの一年を締めくくる、歌舞伎座の神様への奉納の舞台と言って過言ではない、神がかりの奇跡の舞台。
吉右衛門さんは風邪をひかれたり、喉の調子もいまいちだったりしたにもかかわらず、そんな不調も気力でねじ伏せて一ヶ月おつとめになった。その気力に菊五郎さんもたっぷりと深く、熱く応えた、清々しいほどに気高い舞台。歌舞伎と歌舞伎座への感謝と祈りがこもった勧進帳。こんな素晴らしいものを見せていただけたことにただひたすら感謝。

余談だが、弁慶の後見が種之助くん、義経の後見は翫雀さん。種ちゃんの真剣な眼差しにぐっと来て、翫雀さんのいかにも不慣れな膝歩きにドキドキしました。


三、日本振袖始(にほんふりそではじめ)
大蛇退治
   
岩長姫実は八岐大蛇 玉三郎
稲田姫 米 吉
素盞嗚尊 勘九郎

玉三郎はこういう人外の役を、それも踊りでやると抜群。怨念に取り憑かれた妖しさと悲しさとが、一層美しさに輪をかける。こんな綺麗な姫が、世の美人をみんな喰ってやる、なんておかしいでしょ。ご自分がいちばん綺麗なのに、と思っちゃうがそれだと話にならないんだな。
後半、大蛇に変化してからはものすごいメークで誰だかわからないくらい。別の人がやっててもきっと気がつかない。

勘九郎の素盞嗚尊が颯爽としてそれはそれは格好いい。この人の踊りの決めのびしっとした形の良さと言ったら惚れ惚れするくらい。跳躍の高さ、揺らぎもしない片足立ち、いいなあ。だから、もっと歌舞伎の舞台に立ってほしいのよ。

米吉の稲田姫はおっとりとしてほんとに可愛い。白くてぷっくりして、岩長姫でなくても食べたくなるような(笑)。
惜しむらくは、素盞嗚尊と稲田姫の間に愛情の通いが見えなかったこと。これは勘九郎の方に問題ありだが、なんだかただの同士のようだったなあ。

大蛇の分身に扮する役者さんも大活躍で、立ち回りやフォーメーションもとても見応えがあって楽しかった。この舞台は1階じゃなく上の階から観た方が楽しめた。
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