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平成中村座3月夜の部 [舞台]

3月11日(日)

2月演舞場に続いて、勘九郎の襲名披露公演。

一・片岡十二集の内 
傾城反魂香(けいせいはんごんこう)
  土佐将監閑居の場         
浮世又平後に土佐又平光起       仁左衛門               
土佐将監光信       亀 蔵               
土佐修理之助       新 悟               
狩野雅楽之助       猿 弥              
又平女房おとく       勘三郎

片岡十二集と言うが、仁左衛門の又平は初見。この1月に秀太郎がおとくを務めていたが、この時は翫雀の又平で、「松嶋屋のとはいろいろ違う」と秀太郎さんがブログに書いてたっけ。

仁左衛門はいつも通り、一つの視線、一つの手の動きもおろそかにしない緻密な芝居。この人の凄いところは、それだけ細心な演技をしながらも、それがあまりに自然なので見ている方に意識させないところ。計算ずくのはずなのにわざとらしさがない。
この又平も、花道の出からとぼとぼと肩を落として歩く様子に又平の落胆や不安が表れて、その後も師匠への必死の訴えの悲痛、おとくとの情愛、奇跡を起こした喜びなど、余すところなく伝えてくれる。

おとくの勘三郎も情があって、それは甲斐甲斐しい女房ぶり。他の役者達の又平夫婦よりずっと仲の良い夫婦に見えた。又平が死を決意して、おとくが「私も一緒に」と言ったとき、又平が涙を浮かべた顔をおとくに向けて微笑んだ様子の美しかったこと。

だが、にもかかわらず、私には終始違和感があった。なんというか、仁左衛門の又平はすっきりして人品骨柄卑しからぬ人物のように見えてしまう。「又平って、こんな良い人じゃないんじゃない」って言う疑問がずっとあった。六助や十兵衛とは違い、又平はもっと泥臭くて功名心が強くて身勝手で卑屈で、そういう男が夫婦の愛情と決死の覚悟といわば馬鹿の一念で奇跡を起こし、大逆転を起こす。そこに晴れ晴れとした喜びがある物語だと思っていたのに、これでは心正しい夫婦が起こした美しい奇跡の物語で、まるで壺坂観音霊験記じゃないか。美しい「夫婦愛」じゃなくて、「美しい夫婦」の愛情物語。
こんな風に考えるのは私がひねくれてるからかもしれないけど。絶賛の嵐だが、私はあんまり驚きの連続だったので、素直に感動できなかった。

亀蔵の将監は手堅いがニンとは言い難い。せっかくなら我當に出てほしかった。
新悟が行儀良い弟弟子。
猿弥が珍しく(?)真面目に。

なお松嶋屋型では北の方が出ずに下女が出る形だが、これもあまりいただけない。やはり奥方が出た方がしっくり来る。着替えを下女が手伝ってチャリ場めくのもいささか興醒め。

二、六代目中村勘九郎襲名披露 口上(こうじょう)
先月に続いての松嶋屋を始め、海老蔵、扇雀、笹野高史などが並び、中村座という場の雰囲気もあってか一層和やかな様子。

三、曽我綉侠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)
  御所五郎蔵                
御所五郎蔵  勘太郎改め勘九郎               
星影土右衛門       海老蔵                 
傾城逢州       七之助                 
梶原平蔵       亀 蔵                 
新貝荒蔵       男女蔵                 
秩父重介       国 生                
二宮太郎次       猿 弥                
花形屋吾助       笹野高史                 
傾城皐月       扇 雀                
甲屋与五郎       我 當

中村座だから両花道出来ないだろうと踏んでいたら、休憩時間に上手側通路に即席の仮花道を作っていた。え~、2階右側の席だからあんまり見えないんですけど~。かろうじて五郎蔵の後ろ斜めからの顔は何とか見えた。

勘九郎の五郎蔵は、う~ん、確かに格好いい。粋な風情もある。でもまだあまりにも若くて、恋女房を傾城務めさせてまで主人に忠義を尽くす苦さとか、その妻に偽の縁切りされて逆上するところなどが、理詰めでやってるように見えるので、正直ちょっといらっとするところがある。色気ももう少し。
とは言え、特に最後の殺しの場などの数々の見得の決まり方はさすがに美しく颯爽としていて、ほれぼれするくらい。はやく夏祭りの団七見たいな。やはりまだ芝居より踊りのレベルの方が高い人らしい。

もっとも今回は敵役が海老蔵だから、あまり芝居でも引けを取ることなくすんで良かったのかも。海老蔵はこういう役ははまり役。ツラネの台詞は相変わらず不明瞭だが、存在感たっぷり、典型的な色敵。

扇雀の皐月がさすがに先輩格らしく落ち着いた演技。美しさと哀れさを出した。
七之助の逢州も綺麗。全盛の傾城らしい華やかさと、皐月を気遣う優しさを見せて上々。
笹野の花形屋が軽妙で味がある。
我當の留め男甲屋がさすがの貫禄で場を締めた。

四、元禄花見踊(げんろくはなみおどり)
元禄の衆       児太郎                   
 同       虎之介                    
 同       鶴 松                    
 同       宜 生                    
 同       国 生

最後は若手、というよりまだ十代の子ばかりの踊りで、筋書を買ってないのでどれがどの子やら状態。正直、特に目を引く子もいなかったけど、みんな歌舞伎の将来を担う御曹子達。がんばっていただきたい。



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コメント 2

おくみ

こんばんは!
初めて中村座に行って小屋の良さを満喫。
急に行ったのに松席の前から2番目で口上の皆さんが
和気あいあいで楽しかった。
ども又の仁左衛門さんは意外性が面白かった。
勘三郎さんは逆に作り過ぎで、この役は秀太郎さんとかの方がいい。
御所五郎蔵は勘九郎さんは一生懸命過ぎてイマイチな感。
一言で言うとニンではないのかな。
あと10年位すれば無理しなくていいおとなの味になるのかと。
対する海老蔵さんは、物凄くオーラを抑えて付き合っていたけど
やはり持ってるものが違うと言う感じがした。
狭い小屋一杯一杯に見える凄みと色気あり。
最後の踊りは空席も目立ち一寸若手には可哀想。
それにしても、中日でだれていたのかあまり全体に盛り上がりが少なかったと思う。

by おくみ (2012-03-18 01:18) 

mami

おくみさん、こんばんは。(はじめまして、でしょうか?)
中村座、舞台と客席の距離感が良いですよね。私はいつも二階ばっかりですが一階だともっと近くて良いでしょうね。うらやましいです。
by mami (2012-03-19 23:26) 

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