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吉例顔見世大歌舞伎夜の部 [舞台]

11月6日(日) 新橋演舞場

実はこの日は昼夜通しで拝見したのだが、昼の部はもう一度観る予定なので、とりあえず夜の感想を。

今月は、七代目梅幸と二代目松緑の追善興行と言うことで、縁の演目が並ぶ。残念ながらお二人とも私は生の舞台には接していない。映像では見たことあるが……。

一、歌舞伎十八番の内 外郎売(ういろううり)
外郎売実は曽我五郎    松 緑             
小林朝比奈    権十郎              
茶道珍斎    亀三郎             
近江小藤太    亀 寿              
曽我十郎    松 也              
大磯の虎    梅 枝              
八幡三郎    萬太郎             
化粧坂少将  尾上右 近              
梶原景時    亀 蔵             
小林妹舞鶴    萬次郎              
工藤祐経    三津五郎

当代松緑は二代目には孫に当たる。子供の頃お父様が早世され、おじいさまもまだ少年の頃亡くなって、苦労しただろうなと思う。でもこの数年の充実振りを見ると、お祖父さんもお父さんも喜んでおられるのでは。
この外郎売りは早口の言いたてが見せ所だが、松緑は声がいいので、明瞭な台詞回しで聞かせて危なげない。むき身の隈を取った顔も立派で、荒事らしいやんちゃな雰囲気もあって上々の五郎。松緑の荒事は、この世代ではピカ一だと思う。

周りは若手を中心に。梅枝の美しさが目を惹く。亀三郎の珍斎は今後持ち役になる可能性があるが、もっと剽軽さが欲しいところ。
三津五郎の工藤が中ではさすがの貫禄。この人も今後こういう役が増えていくんだろうな。

二、京鹿子娘道成寺(きょうかのこむすめどうじょうじ)
  道行より鐘入りまで             
白拍子花子    菊之助               
妙念坊    松 也               
喜観坊  尾上右 近               
雲念坊    男 寅               
阿観坊    小 吉               
仙念坊    團 蔵               
謹請坊    田之助

夜の部、と言うより、今月最大の注目演目。
菊之助はこの数年、二人道成寺、男女道成寺で充実した舞台を見せてきた。満を持しての一人での娘道成寺の再演である。(前回はH.11年とのことだが、たぶん見ていない)

竹本に乗っての「道行」では黒地の綸子の衣装。花道で開始を客席に投げるところの色っぽい仕草にゾクゾク。
本舞台に来て、所化とのやりとりの後烏帽子をつけてからは長唄と。この烏帽子を渡しに来るためだけに田之助が出演。国立劇場でなく、演舞場に出られるの随分久しぶりじゃないだろうか。菊五郎劇団上げての追善公演だからだろう、お元気そうでよかった。

菊ちゃんは艶やかで華やかで、色気も可愛げもあって、本当に素敵な花子だった。ただただうっとり。この大曲を踊り抜いて、汗一つかいてないんだよ。表情は余裕たっぷりだし。強いて言えば、終盤の鐘への執念が薄いか。女の怖さ、のようなものはまだあまり感じられなかった。
あ、途中の鞨鼓のところだったか、見慣れない紫地のお衣装。これも綺麗だった。
それにしても菊ちゃん、去年12月の玉手、5月の鏡獅子と、本当にこのところの進境著しい様には目を見張る思い。目が離せない。

この日の所化の舞の講釈は右近。落ち着いてしっかり。男寅、小吉が大きくなってびっくり。

余談だが、手ぬぐい撒きのところで、1階通路脇に座ってたおばさんが立ち上がって通路を前に突進していった。。。唖然。でももらえずにすごすご引き返してきたけど。自分の席で立ち上がるのも厚かましいと思うのに、もう開いた口がふさがらなかったです。長年見てるけど、初めてだわ、あんな人。

  梅雨小袖昔八丈
三、髪結新三(かみゆいしんざ)
髪結新三    菊五郎              
手代忠七    時 蔵              
下剃勝奴    菊之助            
白子屋娘お熊    梅 枝           
家主女房おかく    亀 蔵            
加賀屋藤兵衛    権十郎              
車力善八    秀 調           
白子屋後家お常    萬次郎             
家主長兵衛    三津五郎            
弥太五郎源七    左團次

今月の狂言立ては、團十郎抜きの團菊祭みたいな趣だが、成田屋贔屓には申し訳ないが菊五郎劇団だけで十分魅力的。
この新三も、菊五郎の魅力満載。小悪党だが粋で小気味がよくて、ほどよい軽さとおかしみもあり、いや~、つべこべ言いたくない、ただかっこよかったの一言であります。
菊五郎の世話物は、ほんと惚れ惚れするほど格好いい。江戸っ子を絵に描いたよう。理屈抜きに、スカッと気持ちいいんだよね。二枚目の役者は他にもいっぱいいるけど、こういう格好良さはこの人がまだまだ随一だと思う。

三津五郎の家主もだいぶ板についてきて、菊五郎との息も合って上々。芝居が上手い人だから、老け役も難なくこなしちゃう。でも本当は、まだまだ老け役なんかじゃなく、それこそ新三でもやって欲しい人なのだが、この頃踊り以外ではあまり役に恵まれていない気がして、本当にもったいないと思う。

左團次の源七も手に入った役。親分の風格と、新三にやり込められた悔しさとを見せ、やや落ちぶれかけていく焦りが見えてさすがに上手い。
時蔵の忠七も、二枚目だが頼りない男の情けない感じが上手い。

亀蔵がここに出ているのはちょっと意外だが、業つくな家主の女房がいかにもこの人らしい可笑しさ。
梅枝のお熊が可憐。

昼の部の記事はまた書きますが、昼夜とも見応えあって、歌舞伎って楽しい~!と思える今月の演舞場です。

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コメント 2

nori

 今月の新橋演舞場は充実していますね。菊之助の二人道成寺を見てよかったので、娘道成寺も見てみたいですね。髪結新三は昨年の松竹座での秀山祭とほぼ同じような配役です。源七が左團次でなく、團十郎でしたが。吉右衛門の新三もよかったですが、悪役ながら少しひょうきんなところもあるという味は菊五郎にしか出せないのかも。
 今月は大阪での文楽に行く予定です。正月の文楽の初日もチケットが取れたらいいのですが。
by nori (2011-11-10 22:04) 

mami

noriさん、
菊ちゃんの道成寺はまさに時分の花、この先何十年も踊るでしょうけど、今見られて幸せと思えるものでした。
菊五郎さんの世話物は天下一品ですね!観ていてほんとに気持ちいいです。

今月の文楽、行けなくて残念です。特に「沼津」が評判良いようなので、楽しんできて下さいね。
私もお正月には文楽行くつもりです!
by mami (2011-11-10 23:52) 

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