五嶋みどり ヴァイオリン・リサイタル

6月20日(月)　サントリーホール



五嶋みどり(Vn)
オズガー・アイディン(Pf)

プログラム
モーツァルト： ピアノとヴァイオリンのためのソナタ第1番　ト長調　K301
ヤナーチェク： ヴァイオリン・ソナタ
ラヴェル： ヴァイオリンとピアノのためのソナタ　ト長調

サッリネン：　4つのエチュード　op.21
ベートーヴェン： ヴァイオリン・ソナタ第9番　イ長調　op.47　「クロイツェル」

アンコール
ドビュッシー：　亜麻色の髪の乙女

みどりちゃんのリサイタルを聴くのは何年ぶりだろう。もう5，6年はたってしまっただろうか。日本でいちばん聴けない日本人アーティストと言っても良い。まさに待望のリサイタル。

曲目は、モーツァルトから現代のサッリネンまで。時代も曲想もさまざま。そのどの曲も的確に弾き分けていく音色の深さに舌を巻く思いがした。
前半の白眉はヤナーチェクのソナタ。たぶん初めて聞いた曲だが、哀切のこもったメロディーが切々と何かを訴えるようで、特に第2楽章が悲しいまでに美しく、心に響いた。

ラヴェルは、ご本人の曲目解説によると｢最終楽章は、ヴァイオリニストの技量が限界まで試されるような｣という難曲だが、みどりちゃんはもちろん苦もなく弾ききる。そしてそこにはこれ見よがしな派手さはみじんもなく、うっかり聞いていると全然難しそうに聞こえない。第2楽章のブルース風なメロディーを用いたラベルの洒脱でありながら、どこか皮肉っぽさを隠したような晦渋をほんのり感じさせる解釈の見事さ。

そしてこの夜のクライマックスはなんと言っても｢クロイツェル｣。雄大で、懐深くて、力強くて、でもどこまでもどこまでも美しい。ひょっとしたら、これはそれはそれは凄い歴史的名演に立ち会っているのではないかしら、とさえ思えたほど。感動のあまり、気がついたら手を思いっきり握りしめていて、痛くなった。

紗矢香ちゃんとか、ヒラリー・ハーンとか､後を追ってくる若手ヴァイオリニストは枚挙にいとまないが、みどりちゃんはまさしく世界のMIDORIで、現代最高のヴァイオリニストの一人として君臨していることを改めて確認した一夜でした。

ピアニストのアイデンも、出過ぎず、と言って出るところは出る、きっちりした、そして美しい音色で好サポート。なんか名前に聞き覚えが、と思ったら、ヴィオリストの清水直子さんのご主人でしたね。

たぶん、みどりちゃんって、とてもストイックに演奏会や録音に取り組んでいるんだろうな。これだけの人にしてはどちらも少ないもの。もっと聴きたい、でもこういう姿勢だからこういう演奏ができるのかも、とファンの心は揺れるのでした。
素晴らしい演奏をありがとう。また近いうちに来日して下さいね。

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コメント 6

＞来日して下さいね

う・・・そうか・・・来日なんだ・・・。（汗）
by ユキタロウ (2011-06-25 09:16) 

五嶋みどりさんどころか、コンサート自体
最近行けてませんが
生のバイオリン、聞いてみたいですね。
疑似の世界である、オーディオのバイオリンでも
嵌るとうっとりしますからね。
by そらへい (2011-06-25 20:57) 

そらへいさん、
クラシックに限らずですが、やっぱり生の音は良いです。ライヴは病みつきになりますね。
by mami (2011-06-25 23:57) 

ユキタロウさん、
みどりちゃんくらい外国暮らしが長いと、帰国と言うより来日ですね。
ウィーン・フィルとかアルゲリッチとかみたいに毎年のように来日するアーティストより、よっぽどレアな演奏会です。
by mami (2011-06-25 23:58) 

最近、ある女性演奏家のコンサートに行って、ちょっとがっかりして帰ってきました。いただいたチケットだったので、文句を言う筋合いではないのですが、やっぱり、コンサートは選びたいわ（^^;
五嶋みどり、いいですね〜＾＾
by palette (2011-07-03 16:31) 

paletteさん、
もらったチケットだと、テンションも低いですしね(笑)。
歌舞伎はともかく、コンサートに関しては最近は厳選して行っているので、あまりはずれることはないですが、それでも｢あれ？｣と思うことはたまにあります。でも特にクラシックだと、演奏家の技量の良し悪しより、感性が自分と合わないのかな、と割り切るようにしています。
by mami (2011-07-03 23:29)