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マネとモダン・パリ展 [美術]

4月20日
三菱一号館美術館

今月丸の内にオープンしたばかりの美術館に行って来た。平日なのに結構混んでいたのは、展覧会そのもの目当てよりも、新しい物好きのお客さんがかなりいた模様。また、場所柄かスーツ姿の男性もちらほらいて、仕事さぼってんじゃないの~(笑)なんて思ってしまった。

「三菱一号館」は、1894(明治27)年、開国間もない日本政府が招聘した英国人建築家ジョサイア・コンドルによって設計された、三菱が東京・丸の内に建設した初めての洋風事務所建築です。(HPより)

この、1968年にいったん老朽化のために取り壊された建物を、極力オリジナルに忠実に復元したのが今回出来た建物だそう。外見は赤レンガのレトロなビル。こういう建物が周囲にしっくり溶け込むのが丸の内らしい。
外見はいいのだが、問題は中。

間取りなども元の通りにしたらしく、とにかくひとつひとつの部屋が狭い。近頃の国立新美術館などに慣れた身には狭苦しくて仕方がない。その狭い部屋の四面の壁に絵を飾り、部屋によっては中央に展示台まで置くから、ちょっと大きい絵を数歩下がって見るのも一苦労という有様。この日程度の混雑でこれでは、土日などは無茶苦茶ごった返すのではないかと心配だ。

庭園美術館を思っていただければ近いと思うが、あそこは邸宅を転用しているからしかたないが、これは美術館として使用するのを念頭に置いての再建築である。間取りまで事務所だった昔通りにする必要があったのだろうか。しかも床が板張りと来ていて、こつこつと足音が響いてうるさい。いくら私立の施設とはいえ、雰囲気重視で利便性が二の次というのはいただけない。外見はともかく、展示室の構造はもっと来場者の身になって考えるべきだったと思う。

さて、その開館記念展は「マネとモダン・パリ展」。
http://mimt.jp/manet/
IMG_0002.jpg

ただの「マネ展」ではなく、マネの生きた時代のパリの変貌と共にたどるという趣向。従って、マネの絵とパリの歴史を物語るような絵や写真も展示されている。都市計画や建築に興味のある人には面白いだろう。
私自身はそれほどそう言うのに関心がないので、もっぱらマネの絵だけを見る。

マネを中心とした展覧会はひさしぶりな気がする。
ほぼ年代順に生涯をたどりながら作品を見ることが出来る。残念ながら、「オランピア」や「草上の昼食」と言った代表作が来ているわけではないが、かなり水準の高い作品が揃っていて見応えがある。

今回改めて思ったのは、マネはゴヤの直系だなあ、ということ。専門家の人には何を今さら、と思われるかもしれないが、これまであんまりそう言う見方をしたことがなかった。
この展示では「第一章:スペイン趣味とレアリスム」として、マネがベラスケスの絵に学んだことが紹介されていてゴヤについての言及はなかったのだが、私はベレスケスよりゴヤに影響されているように感じた。

IMG_0003.jpg
例えばこの「ローラ・ド・ヴァランス」

ゴヤ:アルバ.jpg
こちらはゴヤの有名な「黒衣のアルバ女公爵」
もちろんマネの絵がスペイン風の衣装のせいもあるけど、それ以上に絵の醸し出す空気が近い気がする。

IMG_0004.jpg
ついでにもう一つ。マネの「黒い帽子のマルタン夫人」。これを見て思いだしたのは

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ゴヤの「マリアーノ・ゴヤの肖像」
ね、なんだか雰囲気が似ているでしょう?
この他にもカリカチュアっぽい版画とかもゴヤを思わせるものが多くあって、なんだかとても面白かった。
技術的にどうこうと言うより、対象へのクールな眼差しが感じられるのが似ているのかも。

他には、ベルト・モリゾ(マネの弟子で後に弟と結婚した女性で画家)を描いた一連の絵なども見物。
チラシの絵がその代表格「すみれの花束をつけたベルト・モリゾ」。これは前にオルセー美術館展か何かで見たことがある。解説では「近代ヨーロッパの肖像画の最高傑作」と持ち上げていたが、それほどとは思わないけど(笑)。

この展覧会、展示にも問題があって、例えばベルト・モリゾとマネの関係を紹介した説明板がある部屋にモリゾの絵は一枚もなく、二部屋くらい先になって展示されていたり、いきなりオペラ座関連の作品の展示があってから次の部屋でやっと説明があるといった具合に、なんだかちぐはぐで不親切。学芸員の質が低いんじゃないのかしら。

せっかく丸の内という便利なところに出来た美術館で、かなり期待していたけれど、残念ながらこのままではお気に入りの場所にはなりそうもない。後日改善されることを望みたいが、どうだろう。
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コメント 6

palette

お気に召さなかったようですね^^
部屋が狭いのは、ほんとにそう思います。あれで、混み合ったら、アウトですね。もう少し規模の小さな展覧会を中心にやっていったらいいんじゃないかと思いますが、今回はオープニングなので、力みがあるのかもしれないですね。
by palette (2010-04-23 17:39) 

mami

paletteさん、
場所といい外見といい、期待が大きかったものですから、余計にがっかりしてしまいました。
狭い、うるさい、展示の要領が悪い、と3点セットですもの。

お城や寺院、教会などなら元通り復元する意味もあると思いますが、こういう商業施設(と言っていいかわかりませんが)の再建にそこまでこだわる意義がわかりません。
進取の気性に富んでいた彌太郎がこれを見たらどう思うでしょうね(笑)。

マネの絵自体は好きなだけに残念です。
by mami (2010-04-23 23:49) 

リュカ

ここ、建物はいいんですけどね~^^;
実際に絵画が展示されるようになったら
どんなふうになるんだ?と思っていたのですが
やはりイマイチなのですね。
今後改善されるといいのですが・・・
by リュカ (2010-04-24 14:36) 

mami

リュカさん、そうなんです。建物の雰囲気はいいし、立地は良いし、うまくいけばすごく良い美術館になると期待していたんですけど。。。
土、日などには絶対に近づきたくないです。
まあまだオープンしたばかりなので、これから改善されるのを期待しています。
by mami (2010-04-24 23:15) 

PK

う~ん、学芸員の名誉のために言うけれど、ベルト・モリゾとマネの説明パネルは明らかにモリゾの肖像が5点展示されていた部屋に掛っていましたよ!
確かに板張りの床の音はうるさかったけれど、全体のテーマ設定と展示レイアウトは、日本の他の凡百な西洋美術の展覧会には見られない見事なものだったと思いますよ・・・。
by PK (2010-05-01 21:30) 

mami

PKさん、コメントありがとうございます。
モリゾに関する説明パネルは2枚あって、仰るとおり2枚目はモリゾの絵の部屋にありましたが、1枚目は二つ前の部屋にあったのです。私が観た後展示が変わっていなければ、ですが。

この展覧会のコンセプト自体が悪いとは思っていません。
ただ、せっかくの良い展覧会、もっと見やすく居心地の良い展示室で観たかっただけなんです。

by mami (2010-05-02 00:27) 

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