御名残三月大歌舞伎・第二部 [舞台]
3月15日
歌舞伎座さよなら時計は後47日をさしていた。
先週来月公演のチケットの発売があり、千秋楽のチケットの争奪戦にはあえなく敗北。(実はいったん席をおさえたのに、途中で回線が切れた!うっそー(T_T))まあ、なんとか三部とも他の日でチケットは取れたので、良しとしなければ。なにしろさっき見たら、一般発売が始まってすぐに全日全席完売になってるんだもの。来月は普段見ない人もいっぱいいらっしゃるんだろうなあ。
菅原伝授手習鑑
一、筆法伝授(ひっぽうでんじゅ)
菅原館奥 殿の場
同 学問所の場
同 門 外の場
菅丞相 仁左衛門
園生の前 魁 春
戸浪 芝 雀
梅王丸 歌 昇
荒島主税 松 江
腰元勝野 新 悟
局水無瀬 吉之丞
三善清行 秀 調
左中弁希世 東 蔵
武部源蔵 梅 玉
適材適所の配役で芝居を見るのはやっぱり楽しい。もちろん、意外な配役の妙とか、新境地を開く役者を観るのもうれしいが、余計なことを考えず、変な汗を手にかかずに観ていられるのも観劇の醍醐味と言うところ。
この「筆法伝授」はまさしくそんな舞台だった。
通しの上演でないとやらない段なので、文楽では何度か観たと思うが歌舞伎ではどうだったか。ひょっとすると初見かも。
この段ではしどころが多いのは菅丞相よりも源蔵の方。梅玉は今月第一部では「加茂堤」で桜丸をやって、ここでは源蔵に替わっているが、どちらかと言えば源蔵の方がニン。律儀で実直な、勘当されたとは言え忠義心を失わない武士の風情がぴったり。菅丞相との久々の対面に胸がいっぱいで言葉に出来ない様子がひしひしと伝わり、希世の邪魔をものともせずに清書を書き上げるところに軽い可笑しさもあり、門外での立ち回りにキリリとした味がある。
来月の「寺子屋」では源蔵を仁左衛門に譲るようだが、梅玉も当代きっての源蔵の一人だと思う。
菅丞相はこの段でも「道明寺」の段でも、動きが少ない中に品位を見せる難しい役。高潔さと厳しさと、同時に秘めた優しさとを感じさせて仁左衛門がさすがに立派。今他にこの役をやれそうな人がちょっと見当たらないのは、将来を考えると危うい気がするが。
園生の前の魁春に御台らしいおっとりとした上品さと優しさがあり上々。
戸浪の芝雀もはまり役で、今の境遇に恥じらう様子、主人との対面の喜びと別れの辛さが全身に出る様子がこの人らしい。しかし、最後になんで若君を背負うのが源蔵でなくて戸浪なんですかね?
梅王丸は歌昇。主人思いでちょっと気の荒い様子が上手い。
希世は東蔵で、出来の良くないくせに偉そうな弟子を滑稽に演じて嫌味がないのがいい。
吉之丞の局がこの弟子を上手くあしらう様子が、大まじめにやっているのが逆におかしみがあってさすがの味わい。
二、弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)
浜松屋見世先の場
稲瀬川勢揃いの場
弁天小僧菊之助 菊五郎
南郷力丸 吉右衛門
忠信利平 左團次
伜宗之助 菊之助
鳶頭清次 團 蔵
浜松屋幸兵衛 東 蔵
赤星十三郎 梅 玉
日本駄右衛門 幸四郎
もう何度も何度も観ている演目で、次に誰がどういう台詞を言うかもわかっているのに、良い役者が揃うとやっぱり楽しい。歌舞伎って良いなと思うのはこういう時で、この日もそう言う思いをさせてもらえた。
菊五郎の弁天小僧ははまり役中のはまり役で、悪かろうはずがない。さすがに年は隠せないから、原作で言えば二十歳そこそこの若者の中性的な美しさと言うよりは、熟れた感じになってしまうのは仕方がないが、見顕わしの落差の面白さと開き直った様子の可笑しさがさすがに魅せる。「しらざあ言って聞かせやしょう…。」の名台詞もいたずらに張り上げずに、しかししっかり聞かせて惚れ惚れする様子。
吉右衛門の力丸というのは初めて見た気がする。強請たかりの小悪党にはちょっと貫禄がありすぎる気もしないではないが、「大事のお嬢様に傷をつけた」と言いがかりをつけるところのねっちりとした感じとか、ドスの効いた様子とか、こりゃ浜松屋や鳶頭など堅気の相手になれる男じゃないという迫力があり、胡散臭さがプンプンしていて、唸ってしまうような面白さ。この場の力丸ってこんなに見せ場があったっけ、と改めて思ってしまった。
この場はこれまでどうしても弁天小僧が主で力丸は従という感じに見てしまっていたけれど、本来二人の関係は対等で、今回の菊吉のように拮抗する二人でやると相乗効果になって見応え倍増になるのだといまさらながら感心した。
去年あたりから当代の菊吉の競演が増えているのはうれしい。来月は「三人吉三」でまた共演だし、いっそ来年は團菊祭に播磨屋も特別出演とかしませんかねえ。
この二人の親分格の日本駄右衛門であるから、幸四郎くらいを持ってこなければ勤まらないだろう。あまりニンではなさそうだったが、さすがに貫禄のあるところを見せて立派。
東蔵、菊之助も役にあって上々。
番頭の橘太郎がしっかりと盛り上げた。
勢揃いは、台詞なんてほとんど意味のない、ただ役者が揃っていなせに決めてくれればいい場面。5人ともそれぞれの雰囲気を良く出して、まさに錦絵のごとき豪華な舞台。
ああ、面白かった~!歌舞伎の楽しさを満喫させていただきました。
歌舞伎座さよなら時計は後47日をさしていた。
先週来月公演のチケットの発売があり、千秋楽のチケットの争奪戦にはあえなく敗北。(実はいったん席をおさえたのに、途中で回線が切れた!うっそー(T_T))まあ、なんとか三部とも他の日でチケットは取れたので、良しとしなければ。なにしろさっき見たら、一般発売が始まってすぐに全日全席完売になってるんだもの。来月は普段見ない人もいっぱいいらっしゃるんだろうなあ。
菅原伝授手習鑑
一、筆法伝授(ひっぽうでんじゅ)
菅原館奥 殿の場
同 学問所の場
同 門 外の場
菅丞相 仁左衛門
園生の前 魁 春
戸浪 芝 雀
梅王丸 歌 昇
荒島主税 松 江
腰元勝野 新 悟
局水無瀬 吉之丞
三善清行 秀 調
左中弁希世 東 蔵
武部源蔵 梅 玉
適材適所の配役で芝居を見るのはやっぱり楽しい。もちろん、意外な配役の妙とか、新境地を開く役者を観るのもうれしいが、余計なことを考えず、変な汗を手にかかずに観ていられるのも観劇の醍醐味と言うところ。
この「筆法伝授」はまさしくそんな舞台だった。
通しの上演でないとやらない段なので、文楽では何度か観たと思うが歌舞伎ではどうだったか。ひょっとすると初見かも。
この段ではしどころが多いのは菅丞相よりも源蔵の方。梅玉は今月第一部では「加茂堤」で桜丸をやって、ここでは源蔵に替わっているが、どちらかと言えば源蔵の方がニン。律儀で実直な、勘当されたとは言え忠義心を失わない武士の風情がぴったり。菅丞相との久々の対面に胸がいっぱいで言葉に出来ない様子がひしひしと伝わり、希世の邪魔をものともせずに清書を書き上げるところに軽い可笑しさもあり、門外での立ち回りにキリリとした味がある。
来月の「寺子屋」では源蔵を仁左衛門に譲るようだが、梅玉も当代きっての源蔵の一人だと思う。
菅丞相はこの段でも「道明寺」の段でも、動きが少ない中に品位を見せる難しい役。高潔さと厳しさと、同時に秘めた優しさとを感じさせて仁左衛門がさすがに立派。今他にこの役をやれそうな人がちょっと見当たらないのは、将来を考えると危うい気がするが。
園生の前の魁春に御台らしいおっとりとした上品さと優しさがあり上々。
戸浪の芝雀もはまり役で、今の境遇に恥じらう様子、主人との対面の喜びと別れの辛さが全身に出る様子がこの人らしい。しかし、最後になんで若君を背負うのが源蔵でなくて戸浪なんですかね?
梅王丸は歌昇。主人思いでちょっと気の荒い様子が上手い。
希世は東蔵で、出来の良くないくせに偉そうな弟子を滑稽に演じて嫌味がないのがいい。
吉之丞の局がこの弟子を上手くあしらう様子が、大まじめにやっているのが逆におかしみがあってさすがの味わい。
二、弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)
浜松屋見世先の場
稲瀬川勢揃いの場
弁天小僧菊之助 菊五郎
南郷力丸 吉右衛門
忠信利平 左團次
伜宗之助 菊之助
鳶頭清次 團 蔵
浜松屋幸兵衛 東 蔵
赤星十三郎 梅 玉
日本駄右衛門 幸四郎
もう何度も何度も観ている演目で、次に誰がどういう台詞を言うかもわかっているのに、良い役者が揃うとやっぱり楽しい。歌舞伎って良いなと思うのはこういう時で、この日もそう言う思いをさせてもらえた。
菊五郎の弁天小僧ははまり役中のはまり役で、悪かろうはずがない。さすがに年は隠せないから、原作で言えば二十歳そこそこの若者の中性的な美しさと言うよりは、熟れた感じになってしまうのは仕方がないが、見顕わしの落差の面白さと開き直った様子の可笑しさがさすがに魅せる。「しらざあ言って聞かせやしょう…。」の名台詞もいたずらに張り上げずに、しかししっかり聞かせて惚れ惚れする様子。
吉右衛門の力丸というのは初めて見た気がする。強請たかりの小悪党にはちょっと貫禄がありすぎる気もしないではないが、「大事のお嬢様に傷をつけた」と言いがかりをつけるところのねっちりとした感じとか、ドスの効いた様子とか、こりゃ浜松屋や鳶頭など堅気の相手になれる男じゃないという迫力があり、胡散臭さがプンプンしていて、唸ってしまうような面白さ。この場の力丸ってこんなに見せ場があったっけ、と改めて思ってしまった。
この場はこれまでどうしても弁天小僧が主で力丸は従という感じに見てしまっていたけれど、本来二人の関係は対等で、今回の菊吉のように拮抗する二人でやると相乗効果になって見応え倍増になるのだといまさらながら感心した。
去年あたりから当代の菊吉の競演が増えているのはうれしい。来月は「三人吉三」でまた共演だし、いっそ来年は團菊祭に播磨屋も特別出演とかしませんかねえ。
この二人の親分格の日本駄右衛門であるから、幸四郎くらいを持ってこなければ勤まらないだろう。あまりニンではなさそうだったが、さすがに貫禄のあるところを見せて立派。
東蔵、菊之助も役にあって上々。
番頭の橘太郎がしっかりと盛り上げた。
勢揃いは、台詞なんてほとんど意味のない、ただ役者が揃っていなせに決めてくれればいい場面。5人ともそれぞれの雰囲気を良く出して、まさに錦絵のごとき豪華な舞台。
ああ、面白かった~!歌舞伎の楽しさを満喫させていただきました。
いつも観劇の記事を楽しみにしています。28日の千秋楽の第1,2部を見に行きました。歌舞伎座は8回目ですが、わざわざ歌舞伎を見るためだけに上京したのは初めてです。弁天娘女男白浪を一度見てみたかったのと、おそらくこれが歌舞伎座の見納めということもあります。本当に行ってよかったです。関西では4月の文楽、5月の団菊祭と楽しみがあります。今後もよろしくお願いします。
by nori (2010-04-01 05:00)
noriさん、こんばんは。
千秋楽にいらっしゃったのですね。遠征お疲れさまでした。
見応えのある舞台だったので、わざわざいらした甲斐もあったのではないでしょうか。
現歌舞伎座もいよいよ1ヶ月を切り、役者さんたちも力の入った舞台が続きます。
私も今週末文楽へ、GWには團菊祭へ帰省ついでに出かけるつもりです。こちらも楽しみですね!
by mami (2010-04-02 00:26)