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9月文楽公演・第三部 [舞台]

9月8日
第二部に引き続いて観劇。新作一本の上演というのでお客さんの入りが心配だったが、ほぼ満席の模様。

tenpest.JPG
天変斯止嵐后晴(てんぺすとあらしのちはれ)
山田庄一=脚本・演出
鶴澤清治=作曲
シェークスピアの戯曲「テンペスト」を文楽に脚色したもの。舞台を日本の中世に置き換えてある。初演は平成4年だが、文楽劇場での本公演は今年7月が初めてで、それに続いての公演。
新作文楽というと、例えば去年観た「狐と笛吹」の居心地悪さを思い出してしまい、期待半分恐れ半分と言ったところだったが、結果から言うと今回はとても面白かった。
(これから先はネタばれになります。これからご覧の方はお気をつけ下さい。)

幕開きは、定式幕ではなく緞帳が上がると舞台に三味線(と琴)だけがずらりと並ぶ。ここでは音だけで暴風雨を表すという予想外の始まりでちょっとびっくり。三味線の迫力ある演奏が激しい嵐を想像させる。琴をマレットみたいなので弾いていたのが珍しかった。でも人形も何も出てこないので、視覚的には寂しいかなあ。背景に嵐にもまれる船のシルエットくらい出しても良いかも、なんて思った。

第二場以降は普通の演出に近くなるが、人形遣いは最後まで頭巾を被ったまま。
人間の人形は時代物のような衣装と鬘なので、ほとんど違和感なく見られる。
阿蘇左衛門の玉女が威厳のある大きな様子。
美登里の勘十郎に楚々とした愛らしさがあり、春太郎の和生も品のある若者でさすがに綺麗。
面白いのは、人間ではない、妖精とか鳥とか不思議な生き物で、なんだか学芸会の衣装みたいで可愛い(笑)。誰が考えたんでしょうね。

義太夫の台詞も基本的に時代物風。ほとんど翻訳物と言うのを意識せずに聴いていられた。
中心は阿蘇左衛門を語る千歳大夫だが、既に大阪公演を経ているので落ち着いた語り口で、しっかり聴かせていて、特に大詰めでは左衛門が一人舞台に残る独白をこなすという、普通の文楽ではない趣向を面白くやっていた。
第4,5場の呂勢大夫はちょっと声を張り上げすぎ。この人はいつも頑張るとがなってるみたいになってしまう。

清治の作った曲も良くできていて、場面場面にあった様子で立派なもの。普通より三味線の人数も多い場面が多く、音が厚めでかなり迫力があった。

全体としては、原作の筋を追うのに精一杯だったかなと言う感じで、登場人物一人一人の掘り下げなどは浅く、泥亀丸と珍才はどうなったのかとか、何故左衛門がすべてを許す気になったのかも判然としないので、終わりの大団円もいささか物足りない気もしないではない。原作をちゃんと読んだことがないので、シェークスピアがどの程度書いているのか解らないが、左衛門と美登里の親子の愛情とかが義太夫ならもうちょっと聴かせて欲しいところでもある。このあたりをもうちょっと練り直したら深みが出てもっと面白くなるかも。
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