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コクーン歌舞伎「桜姫」 [舞台]

7月27日 Bunkamuraシアターコクーン

コクーン歌舞伎ももう10回目だという。すっかりこの会場での歌舞伎公演も定着したようだ。全部の公演を観てきたわけではなく、この「桜姫」も再演だそうだが私は初見。

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桜姫 串田和美演出
七之助の桜姫、勘三郎の清玄、橋之助の権助、弥十郎の残月、扇雀の長浦、亀蔵の悪太郎、笹野高史の勘六

七之助が綺麗になった。いや、前から綺麗だったけど、今回はちょっと凄みがある美しさが出てなかなかのもの。相変わらず色気は乏しいのが惜しいが、桜姫のとらえどころのない雰囲気を良くだして、姫君らしい気品も十分。
配役を見たときには七之助に務まるのか、と正直思ったが、勘三郎や橋之助を相手に回して見劣りのしない主役ぶりを見せたのは立派。

この桜姫って、よく解らない人なのよね。自分を犯した男に惚れて、家も身分も捨てて女郎にまで身を落としていたのに、男が父と兄の敵で家の重宝を盗んだ張本人と判るや、敵として男を討つ。家は捨てたんじゃなかったのか?とか思っちゃうわけで。しかもその後元のお姫様にちゃっかり戻ったりするし。
ただ、今回の七之助は、大詰めで権助を殺してから姫に戻るまでをずっと、まるで夢でも見ているような、呆然とした表情で居続けた。決して仇を討って家の大事を救った、晴れ晴れとした様子などではない、女としての幸せは捨てた、冷めた表情だったように見えたのがとても印象的だった。普通の桜姫だと、子供も殺してしまうが今回は権助だけというのは、串田の意図だろうが、それで桜姫の罪深さが弱まったのは、桜姫の救いがたい業の深さ、という点では疑問が残る。

勘三郎の清玄が、コクーン歌舞伎では珍しいくらい抑えた演技で秀逸。高僧としての品、白菊丸の生まれ変わりと知った桜姫への執着に苦しむ様を、いつもと違って内へ内へ抱え込むような重苦しさで見せ、凄みを感じさせてさすがに貫禄。

橋之助は色男ぶりは良いが、なんだかすっきりし過ぎていて悪人らしくない。素が出ちゃうのかなあ、権助はもっと金に汚くて人を殺すのも何とも思わないような極悪人に見せないと、最後に桜姫に殺されるのがおかしくなってしまう。

扇雀の局長浦がいささか羽目を外しすぎじゃないかと思うくらい、まさに体を使った演技。福助顔負け(?)。だって上半身ヌードですよ~。もちろん作り物の肌襦袢着てたけど(笑)。
彌十郎がこの長浦にたじたじな様子が可笑しい。
亀蔵はいつもの三枚目の悪人だが、この人にしては大人しいというか、アドリブ少な目。

笹野高史もすっかり歌舞伎に馴染んで、飄々とした味わいが実にうまい。

演出は、花道がわりに客席も上手く使ってコクーンのステージの狭さをカバー。序幕では登場人物が皆台の上に乗って、座ったままの演技。台をくるくる動かして移動するのが新鮮だったが、慣れてくると煩わしい気もした。
清水寺の場で桜姫と権助の濡れ場になると、普通は御簾が下りるが、ここでは天井からばさっとまるで蚊帳みたいな囲いが落ちてきたのが意表をつく演出。
また廻り舞台も大いに使って巧く場面転換させていたのが面白かった。
大詰めで大きなビニールの球がいくつも浮かんだのは何の象徴だったのだろう。見た目には美しかったけれど。
照明(齋藤茂男)がいつもながら美しい。

今日の席は中二階のバルコニーでほとんど舞台真横。歌舞伎座などではすごく見難いが、コクーンだと舞台が見切れることもなく、また廻り舞台が活用されていたおかげで全くハンディを感じずに観られ、むしろ舞台に近くて正面の後ろの方よりも良かったくらいだった。
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