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5月文楽公演第一部 [舞台]

5月11日 国立劇場小劇場

今月の公演も、先月の大阪に引き続き、国立文楽劇場開場25周年記念となっている。
とは言え、縁の演目は初めの「寿式三番叟」だけなので、観客はあまり気に留めてもいないようだが。

一・寿式三番叟
綱・文字久・南都・始、清治、清二郎、喜一朗…
清十郎の千歳、和生の翁、勘十郎と玉女の三番叟
顔ぶれは先月と同じ。4月は途中から休演した綱大夫も出演していてホッとした。もっともあまり調子はよくなさそうで心配だが。
違ったのは、太夫と三味線が床ではなく舞台後方にずらりと並んだ形での上演だったこと。何だか歌舞伎の松羽目ものみたい。この形だと、人形を見ながら太夫達の表情も見られるので、ちょっと面白かった。景事などではこういうのも時々あって良いかもしれない。
終盤の三番叟の踊りのところで、珍しく客席の一部から手拍子が起こっていた。大阪でさえ文楽で手拍子は聞いたことがない気がして、妙に落ち着かない感じ。

二・伊勢音頭恋寝刃
古市油屋の段 住・錦糸
奥庭十人斬りの段 津駒・寛治
文雀のお紺、簑助の万野、玉女の貢、勘寿の喜助

住大夫と簑助の万野が傑作。どうしようもなく嫌味でごうつくでふてぶてしい遣り手の憎たらしさを、独特の台詞廻しで表現する住大夫と、コミカルな動きもまじえて見せる簑助の力で、ほとんど万野が主役じゃないかと思わせる舞台となっていた。簑助さんって、しっとりとした美しい役はもちろん、こういう役も上手いなあ。団扇の使い方一つ取っても、万野のがさつでせっかちな性格が見えるような気がした。
文雀のお紺が、前半の苦悩を見せるところがさすがに綺麗で品がある。
玉女の貢もきっちり。
「奥庭」は歌舞伎以上にある意味えぐいと言うか、人形の手や足が切られて飛んだりするのが目も当てられない惨状なのだが、そこは人形なのでかえっておかしみがあったりする。とは言え、やっぱり無関係な人がたくさん殺されると言うのは観ていて気持ちいいものではないし、筋としても最後に敵の岩次を殺して刀の折紙を取り戻しても、めでたい気分にはなれないのだが。こうして忠義を立てたとしても、この後貢とお紺はどうなっちゃうのか。

三・日高川入相花王
真那古庄司館の段 つばさ・清丈、咲・燕三
渡し場の段 三輪・津国、宗助・団吾
紋寿の清姫、勘弥の安珍、玉英のおだ巻姫、清五郎の渡し守
渡し場の段は前に文楽でも歌舞伎でも観たことがあるが、庄司館の段は初見。一方的に恋して振られて、悪人に焚き付けられたとは言え、あげくは蛇になっちゃう清姫って、可哀想だが正直言うとあまり好きになれないキャラクターではある。思いこみの激しい人って困りものよね。
紋寿の清姫が、初めの可憐な様子から、安珍に迫る一途さ、置いていかれたと知った嘆きが怒りに変わる様子をさすがに上手く出して立派。渡し場では大きな動きで嫉妬に燃えて蛇身になった清姫の姿をガブを使って巧く見せ、哀れにも怖さがあった。
先月から切場語りになった咲大夫が、ここでも充実した語りで清姫の心の変化を切迫感を持って聴かせた。
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千代子

mamiさま

はじめまして
文楽、まだまだ初心者の千代子でございます

11日、私も観劇しておりまして、あの手拍子には「あれ」と思いました。
私の近くに、初めて文楽をご覧になるらしい方がグループでおいでになっていて、そちらから手拍子が起こったような感じでした
とっても元気で、盛り上がって楽しんではおられたようですが、、、。

by 千代子 (2009-05-14 08:04) 

mami

千代子さん、はじめまして。ご訪問ありがとうございます。
同じ日にご覧になっていたんですね~。
あの手拍子には、正直びっくりいたしました。
まあ、堅苦しいことを言うのもなんですし、邪魔になるほどでもなし、楽しんでいらしたなら良いと思いますけど、儀式性の高い演目でしたので「えっ!?」という気はしました。
演じてらした方達はどうお感じだったのでしょうね。

またちょこちょこのぞいて下さいませ。
by mami (2009-05-14 23:20) 

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