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十二月大歌舞伎・昼の部 [舞台]

12月22日 歌舞伎座
今年最後の歌舞伎座。今年も結局12ヶ月昼夜完全制覇。まあ歌舞伎ファンとしては普通なんだろうけど、昔に比べるとよく観るようになったなあ。

一・高時
梅玉の高時、魁春の衣笠、松江の安達三郎、東蔵の大佛陸奥守、彦三郎の秋田入道
初見。黙阿弥作で「活歴物」というらしい。まあいわば「新歌舞伎」のはしりのような感じかな。
梅玉が、人間より飼い犬の命の方が大事という暴君の役なのだが、普段のイメージから遠いせいか、あまりそんな無茶苦茶を言いそうな人物には見えない。台詞などはこの人らしく明晰にしゃべってよく聞かせているけれど。後半では天狗に翻弄されて、この人には珍しく激しい動きも見せて、ほんとにご苦労様。だって頭を下に逆さの状態になったり、天狗達に担がれたり、若い人でも大変そうなのに~、とちょっと心配になってしまったほどだった。

松江が血気盛んな様子が似合う。
東蔵は夜の部では花魁で、昼は重臣といつもながら幅の広さを魅せる。
彦三郎の入道が、何だかお父さんの羽左衛門に似てきたなあ、と思わせる台詞廻し。
でもこの演目いちばんの敢闘賞は、天狗役の名題下さん達。ワイヤーまで使った大立ち回りを見せ、跳んだりはねたり、普通の日舞とは全然違う動きで大変そうだったが、面白かった。

二・京鹿子娘道成寺
三津五郎の白拍子花子
女形舞踊の大作を立ち役の三津五郎が踊り、それも「坂東流」という普段観られないもので見せてくれるというので話題の舞台。
大きな違いは、初めの道行で常磐津がつくのと衣装が普通は黒綸子なのが赤なこと。途中の細かいことはよく判らないが、最後の鐘入りで、普通はうろこ模様の衣装でブッ返りになるのが、最初の赤の着物に戻って、髪もほどかないこと、などだろうか。

最初に花道を出てきたとき、意外に可愛らしい娘ぶりだったのでまず驚いた。三津五郎の女形は初めて観たわけではないが、前は顔が大きいし綺麗じゃないよね、と思っていたのだが、なかなかどうして。
踊りは、もちろん名手として名高い人だから、誰に見劣りするはずもなく、体の柔らかさも見せて最後まで鮮やかに踊っていく。難は引き抜きの手際がいまいちだったことくらい。
ただやはり白拍子としての色気はあまり感じられず、鐘あるいは男への情念や恨みなどもさらりと流したような雰囲気で、最後の鐘入りもあっさりとしていささか物足りない気がしなくはなかった。そこが女形と立ち役の違いなのだろうか。これはこれで踊りとしてはとても見応えもあって面白かったけれど、私の好みとしては春に観た藤十郎の方がやはり「娘道成寺」の世界として好ましく思えた。

今日の所化の「舞い尽くし」は宗之助。
今回所化による手ぬぐい撒きはなく、また花子と所化が鞠つきの振りで絡むところもなかった。

三・東山桜荘子 佐倉義民伝
幸四郎の宗吾、福助のおさん、段四郎の渡し守甚平衛、三津五郎の幻の長吉、彌十郎の松平伊豆守、染五郎の家綱
こちらも初見。何だか時代物なのか世話物なのか、よく判らなかった。子役の台詞廻しなどは完全に時代がかってるんだけど。何故そんなことが気になったかというと、いつも幸四郎は時代物と世話物で台詞廻しが全然違うから。これでも、初めに出てきたときは、時代がかった風だったが、家に帰った後は世話になっていて子供と釣り合わない。ま、名主とはいえ農民の役だからだろうけれど、ちょっと落ち着かなかった。
幸四郎は雪道を歩く場面など細かいところではいつもながらリアルさを達者に見せて上手い。直訴を覚悟した悲壮感、妻子を慈しむ優しさ、別れて行かねばならない辛さもひしひしと見せる。幕切れの、直訴状を伊豆守に手渡して安堵した晴れ晴れとした顔つきが印象的。史実ではこの後処刑されてしまったそうだが、芝居ではここで一応めでたく終わる形。

段四郎の甚平衛に義理堅く情の深い年寄りの風情が良く出てさすがに立派。
福助のおさんも、まあまあ抑えた演技で、夫と子供を大事にする、情け深いおかみさんの様子。ただ最後の別れのシーンで手を振るのはどうかなあ。
三津五郎が宗吾を脅す小悪党の役だが、正直言ってなんでこの男が出てくるのかよく判らなかった。なんかあっさりいなくなるし、あれは何だったの~?と言う感じだった。
彌十郎に懐深い様子があり、染五郎はすっきりとした殿様ぶり。
しかし前の場面では雪なのに、宗吾が将軍に直訴する場面は紅葉になっているのも時間経過が不明。冬に家を出て次の秋まで機会がなかったんだろうか。梅ならまだしも、そんな悠長なことしてられないだろうに、と思ってしまった。

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