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吉例顔見世大歌舞伎・昼の部 [舞台]

11月17日 歌舞伎座

一・通し狂言 盟三五大切 (かみかけてさんごたいせつ)
仁左衛門の源五兵衛、時蔵の小万、菊五郎の三五郎、歌昇の八右衛門、左團次の家主弥助、田之助の了心

鶴屋南北の作。源五兵衛実は不破数右衛門という「忠臣蔵」の裏を描いた生世話物。数年前に吉右衛門の源五兵衛、仁左衛門の三五郎、小万は同じく時蔵、と言う顔ぶれで見ているが、今回は仁左衛門の源五兵衛。

仁左衛門にこういう「殺人鬼」みたいな役はニンじゃないよなあ、と思っていたが、なかなかどうして。前半の人の良さそうな雰囲気が、騙されたと解って一変、次々に人を手に掛けていく姿に凄みがあってゾクゾクした。元々顔に色気のある人がこういう凄惨な姿になると本当に怖い。だが仁左衛門らしいと思ったのは、小万の首を持って花道を引っこむところで、実に愛おしそうに小万の首を抱いていたことで、本当に小万に惚れていたからこそ、裏切られて許せなかったという風に見え、でも殺してなお愛情も捨てられない男の哀れさが全身から感じられるようで、息を呑む思いがした。

三五郎の菊五郎は、さすがに気っ風の良い男ぶりで、源五兵衛を騙す悪人だが、それも父のお主を助けるためという根の良さがよく見え、軽妙な味もこの人らしい。
時蔵の小万に芸者らしい色気があり、源五兵衛にすまない気持ちもあるところが見え、殺される場面では哀れにも美しさを見せた。
しかし、三五郎と小万はどうして源五兵衛なんかに目を付けたのかなあ。浪人なんか相手にしてないで、大店の旦那とかもっと金持ちを狙えば良かったのにねえ。…ってそれじゃ話にならないけど。

歌昇が仁左衛門と組むのも珍しいが、いかにも人が好く、忠義な家来の様子が良く出て立派。
田之助が三五郎の父・了心で元は武士という律儀な雰囲気がさすがに上等。
左團次の家主が、強欲な様子が可笑しく笑わせる。
東蔵の助右衛門がもの堅い武士の風情。

それにしても、これといい「四谷怪談」といい、南北ってよっぽど「忠臣蔵」が嫌いだったのかしら(笑)。

二・廓文章 吉田屋
藤十郎の伊左衛門、魁春の夕霧、秀太郎のおきさ、我當の喜左衛門
今年の春、仁左衛門と福助でも観た演目。
仁左様の伊左衛門はひたすら可愛い感じだったが、藤十郎となると同じつっころばしの二枚目でも、いかにも遊び尽くした放蕩息子、と言う感じになるから面白い。柔らかみ、色気ともちょっと過剰なくらいだが、それでも品を落とさないのがこの人らしい。
魁春は傾城という柄ではないのだが、美しく、病み上がりらしい儚げな様子があり、しっとりとした雰囲気もあって上々。
秀太郎と我當は手に入った役で、諸事心得た御茶屋の主人夫婦の風情が十分。

陰惨な南北の後ではよい気分転換。
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