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七月大歌舞伎・昼の部 [舞台]

7月28日 歌舞伎座

毎日お暑うございます。
私も連日の暑さと仕事の忙しさでバテ気味です。その上熱帯夜の寝苦しさから睡眠不足気味で、多少ふらつきながらも歌舞伎座へ足を運ぶことに。
いつもは歌舞伎座の客席は寒いくらいに冷房が効いていて、羽織ものを持っていないと鳥肌が立つほどなのに、今日はそれほどでもなかった。歌舞伎座も環境省の「チームマイナス6%」とやらに協力を始めたんだろうか。悪いことじゃないと思うけど、でももうちょっと涼しくしてもらってもいいかな~、と言う感じだった。

さて今月の歌舞伎座は、夜は泉鏡花二本立て、昼は「義経千本桜」から狐忠信絡みの段。忠信はもちろん海老蔵。

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義経千本桜
一・鳥居前
段治郎の義経、春猿の静御前、市蔵の早見藤太、権十郎の弁慶

まずは荒事での忠信。海老蔵はこういう役はいちばん安心して観ていられる。声も良く通り、荒事らしい大きさもあって上々。登場前の揚げ幕の中からの「待てぇ」の大音声も良く聞こえて立派。こういう大きい声がお父さんにそっくりなのに改めてびっくり。狐六方での引っ込みも鮮やかに決めて幕。
段治郎の義経に気品と爽やかさがあり、静との別れを惜しむ風情もありなかなか。
春猿の静も美しく義経と別れる切なさが見えて上々。
この段が、今日観た三つの中ではいちばん普通というかオーソドックスな形での上演だった。

二・吉野山
玉三郎の静御前
いくつか変わった趣向の見えた上演。
まず竹本だけでの演奏だったこと。玉三郎流の本式好みだろうか。歌舞伎しか観ない人はどう感じたかわからないが、文楽も観る(聴く)人間には、竹本の技量の差は置くとしても、歌舞伎座の大きな舞台で少人数の竹本だけにのせて舞踊を観るのはいささか辛いものがあった。
舞台装置も、「妹背山」の吉野川のような川が見える変わった装置。静御前も普通は花道から登場するのが、舞台の一面の桜が左右に割れるとそこに静が立っている形。
また静の衣装も通常と違い、最初から最後まで赤地の着物。ポスターでは豪華な打ち掛け(ではないかな?)を着ていたが、これは舞台ではなかった。う~ん、でもこれだと旅の衣装に見えないんだけどなあ。
また振りなども幾分いつもと違ったように感じたが、これはあまり詳しく解らないので触れない。ただ二人が女雛男雛の振りをするのはやらなかった。実はこの一幕ではあそこが好きなので、ちょっとがっかり。

玉三郎はさすがにいつもながらに溜息の出るような美しさ。はんなりと艶やかな舞を見せて存在感十分。でも終始無表情なのは、どうなんだ。離れている義経への恋慕も、側にいる忠信への親しみも何も感じさせない静というのも珍しい。深窓のお姫様ならぬ白拍子の静がああ無愛想なはずはないだろう。
だいたいにおいて玉三郎は、特に踊りの時まったく愛嬌のない人だが、いくら綺麗でも観る方はなんだか疲れてしまう。
ここまでいくと、逆に愛嬌出しすぎの福助が懐かしくなってしまうから観客は我が儘ではある。

海老蔵はここでは颯爽とした二枚目ぶり。狐の不気味さもあまり感じさせず、さらりとした感じ。踊りはお世辞にも上手くないが、玉三郎に懸命に合わせていたのは立派。
だが終盤、文楽で使う狐の人形を出したが、あまり意味を感じなかった。あんなのにじゃれつかれて静が気がつかないはずないじゃないか、と思ってしまう。あそこはやはり歌舞伎では、忠信役者が狐の本性を見せて鼓への慕情を表す場面であって、それを人形でやるというのは役者の怠慢ではないのかと思う。

三・川連法眼館
玉三郎の静御前、門之助の義経、寿猿の法眼、吉弥の飛鳥、薪車の駿河、猿弥の亀井
法眼・飛鳥夫婦の場からではあるが、国立劇場ではやっていた、鎌倉方から追求されている法眼の苦境を見せる部分がカットされていて、ほとんど二人が出てくる意味がない。時間はたっぷりあるのだからどうせなら初めからきちんとやればいいのに。

海老蔵のこの場の忠信は、一昨年の新橋でも観ている。あの時に比べると、本物の忠信の方はやや進歩が見えて、落ち着いた風情だったのは良かった。とは言え、懐の深さには今一歩。
後半、狐と現してからは、さすがに若さと体力で身体能力の高さは見せつけたが、狐言葉の台詞がひどすぎる。本当に猿之助に習ったのだろうか。前回よりさらに変なイントネーションの強調が過ぎて、場内失笑の渦である。そんなだから、アクロバティックな動きと調子外れな台詞廻しに気が取られて、肝心の子狐が親に寄せる情がおろそかになってちっとも心を打たない。この段でそれが訴えられなくて何になるんだ。最後に宙乗りでいくら暴れて見せても白々しいだけだった。
前回は初演と言うことで、海老蔵自身に必死さが見えて良かったが、今回は少なくとも前より良くしようという気概が感じられなかったのはまことに残念。

玉三郎の静は、先程とは変わって、義経への情愛、源九郎狐へのいたわりも見せてさすがの出来。
門之助の義経も、気品と格があり、立派な御大将ぶり。



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コメント 2

リュカ

歌舞伎ってまだ一度も行ったこと無いんです。
今年は無理かもしれないけど、来年は挑戦してみたいと思ってます^^
義経千本桜は是非ともみたい演目の一つ!

by リュカ (2008-08-04 11:58) 

mami

リュカさん、こんにちは。
歌舞伎も楽しいですよ~。歌舞伎座でも3階のお席ならそんなに高くないし、幕見というお手軽なシステムもありますので、一度ぜひ挑戦してみて下さいね。
「義経千本桜」は人気のある演目なので、なんだかんだと年に1回はやってるような気がしますので、ご覧になる機会はじきにあると思いますよ。
by mami (2008-08-04 14:43) 

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