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新橋演舞場五月大歌舞伎・昼の部千秋楽 [舞台]

5月26日

今月は、歌舞伎座に演舞場、文楽と、観劇スケジュールがいっぱいなのにGWは帰省していたため、GW以降の休日を全部観劇に費やして、本日千秋楽の演舞場にやっと間に合って完走。そうこうするうちに季節はすっかり初夏なのに、おかげで衣替えがまったく出来ていない(苦笑)。

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一・彦山権現誓助剱 毛谷村
染五郎の六助、亀治郎のお園、吉之丞の後室お幸、錦之助の弾正

去年は翫雀、一昨年は梅玉の六助で観ているが、その二人に比べると染五郎の普段のすっきりしたイメージから六助はちょっと遠いような予想をしていた。だが、なかなかどうして、さすがに田舎者のもっさりした雰囲気ではないが、腕は立つが純朴で人を疑わない、心の優しい善良な男という様子がしっかり出ていたのは立派。
お園の突然の変化に驚き呆れる様子も可笑しく、また弾正に騙されていたと判ったところからのきっぱりした雰囲気も、爽やかな味があり上々。千秋楽と言うこともあってか、役を自分のものとして余裕を持って演じているように見えた。
子供をあやしている様子などは、普段家でもやってるのかな~、なんて微笑ましかった。

亀治郎のお園は、最初の出で悪人を追い払うところでの声がまるっきり男なのはちょっとどうかという感じだが、六助が許婚とわかって急にしおらしくなるところが可愛く、多少オーバー気味にコミカルさも見せながらお園のいじらしさを表現していた。恥じらう中にも色気を見せて、愛嬌もあってなかなか良かった。1月の「傾城反魂香」では足りなかった柔らかみが出たのが何より。

吉之丞のお幸がさすがに立派。出てきただけで身分ある婦人であることが感じられる気品が漂う。お幸と六助の、金包みを投げ合うやり取りが、おかしみがあって面白い。
一度吉之丞の「道明寺」の覚寿とか「絵本太功記」のさつきとか、観てみたいなあ。おやりになったことあるのかしら。
錦之助の弾正も、色悪っぽい憎々しさがあってなかなか。

二・上・藤娘 福助の藤の精
 福助が、夜のお岩の分を取り返すかのように艶やか。客席に向かってお辞儀をするところなど、ちょっと愛嬌を振りまきすぎではないかと思うくらいだが、色気があり美しいのはさすが。でもちょっと娘にしては色気を出し過ぎかなぁ。
舞台写真売り場でお岩さんのとこの藤娘のとを売っていたが、お岩さんの方を買う人っているんだろうか‥‥。

  中・三社祭 染五郎の悪玉、亀治郎の善玉
 染五郎と亀治郎が息のあったところを見せて踊る楽しい舞踊。二人とも踊り上手で、軽快な動きを見せ、途中から面をかぶって踊るのも面白い。一昨年のこの5月の「三番叟」での二人の共演では、二人が競い合うような雰囲気がありそれはそれで面白かったが、今回はそう言う感じはなく和気あいあいと言う風で楽しそうだったのは、特に亀ちゃんがちょっと大人になったかな~、などと思った。

  下・勢獅子 歌昇、錦之助の鳶頭
 山王祭を舞台に、鳶や手古舞など大勢が出る賑やかな一幕。歌昇、錦之助が江戸前の粋でいなせな様子を見せて気持ちよい。途中のぼうふら踊りなどはもうちょっとおかしみもほしいが、獅子舞も勇壮に盛り上げ、文句なしに楽しい踊り。

三・一本刀土俵入
吉右衛門の駒形茂兵衛、芝雀のお蔦、歌昇の弥八、歌六の儀十、錦之助の辰三郎、染五郎の根吉
長谷川伸の任侠ものの代表的な作品だが、初見。
吉右衛門は、初めの一文無しの相撲取りではいかにも情けなさそうな朴訥とした様子を見せ、10年後にはがらりと印象を変えて、懐の深いやくざの風情という変化が上手い。正直言うと、初めのちょっと頭の弱そうな茂兵衛がその後どんな目にあったかはわからないがあんなにしっかりした親分みたいになれるのか、という気もしなくはないのだが(苦笑)。
一幕目でお蔦に優しくされて感激する様子がいじらしいほどで、これまでの茂兵衛の人生がどんなに辛かったかが目に浮かぶよう。だからこそ、その恩を忘れずに10年後に返そうとする気持ちが素直に受け入れられる。
二幕目では貫禄十分で、辰三郎と間違えて襲ってきた根吉らを叱りつけるところなど威厳もあって大きい。
幕切れの独白に哀愁が漂い、お蔦に対して恩だけでなく愛慕の念もあったのだろうと思わせて感動的。どうでこの先茂兵衛に幸せな人生はないのだろうが、お蔦が幸せならそれで良いのだろう。お蔦らを見送る茂兵衛の悲しくもありまた安堵も入り交じった気持ちを思うと涙が出た。

芝雀のお蔦、ニンじゃないかと思ったが、初めに弥八らをあしらう様子にこざっぱりとした気っ風の良さがあり、酌婦をしてはいても心根まで腐っていない様子がしっかり出て上々。茂兵衛にお金をやるところも、憐れみをかけてやるというのではなく、優しい気持ちから自然に出た行為という感じがあったのも、お蔦の性根を表して良かった。
二幕目ではこの人らしい世話女房の風情。10年も音沙汰なかった夫が突然帰ってきても嫌味も言わずに受け入れて一緒に逃げるというのは、現代感覚からは遠いが(笑)、そんな愛情の深さを自然に見せたのはさすが。

歌昇の弥八、荒くれ者で嫌われ者、でもおっちょこちょいのところもある男を好演。ほんとにこの人は役の幅が広い。7月の忠信が楽しみ。
歌六の儀十がさすがに貫禄あり立派。
錦之助の辰三郎、根は良いのに心の弱い様子が出て良かったが、いかさま博打をやるようには見えないか。
染五郎の根吉に頭の切れるやくざの風情があって上々。
由次郎の船頭が味があってなかなか。


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