SSブログ

文楽9月公演通し狂言「仮名手本忠臣蔵」第三部 [舞台]

9月18日観劇

八段目 道行旅路の嫁入り
九段目 雪転がしの段
      山科閑居の段
十一段目 花水橋引揚の段

主な人形配役
戸無瀬   文雀
小浪    清之助
本蔵    玉女
由良助   勘十郎
お石    和生
力弥    簑二郎

一、二部は由良之助は簑助さんだったが、三部では勘十郎さんに交替。
また、玉女さんは、一、三部では本蔵、二部では平右衛門で、二人は全三部に出演。ご苦労様です。

文雀さんファンの私としては、この第三部が一番期待していた部。
期待に違わず文雀さんの戸無瀬は、凛として、いかにも武家女房という威厳を保ちながら、義理の娘の小浪への愛情を注ぐ様子を見せて立派。
文雀さんがこういう役を遣うと、まったく無駄な動きがないのに、しっとりと品があって本当に素敵。

小浪の清之助さんも大健闘。一途で可憐な娘の健気さ、哀れさがよく出ていた。

本蔵の玉女さんも、前半のお石を挑発するときの大きな動きと、手負いになってからの苦しい息の下で見せる娘への愛情の対比がよく出て秀逸。

由良助の勘十郎は手堅い出来。もっとも「雪転がしの段」などはもう少し柔らかみがあってもいいかと。なにしろ玉男さんだと、足がつったと言いながらお石の着物を足先でめくるような色っぽい仕草もやっていたほど。(そこまでやるか~、と観ながら唸ったものでしたが)きっと勘十郎さんってまじめな人なんだろうな。

和生のお石も難しい役をきっちり務めて上等な出来。

大夫では、九段目「山科閑居の段」切りが住大夫と錦糸。義太夫屈指の大曲と言われる段だが、住大夫はさすがに情緒たっぷりに聴かせる。登場人物が女ばかりのところで、お石と戸無瀬の語り分けも自然。力弥を一途に思う小浪の哀れさも良く出、戸無瀬の苦悩、お石の意地が伝わって、感動的だった。
住大夫さんの語りには、いつも泣かされてしまう。

奥は咲大夫と燕三。出だし、本蔵の登場から力弥に刺されるまでを豪快に語り、緊迫感を盛り上げ、後半は二組の家族の絡み合う心情を切々と聴かせて出色の出来。
燕三も勇壮なばちさばきで聴かせて秀逸。襲名以来の好調ぶりを維持しているようでうれしい。

しかし、いつ観てもこの段は、本蔵が可哀想でならない。本来自分とは関係ない塩谷家の難儀に、いわば巻き込まれてしまったわけで、娘のためとは言え死ななくてもいいのに、と思ってしまう。師直に賄賂を贈ったのもお家のためで、由良助だって同じ立場ならそうしたかもしれないし、判官を止めたのもよかれと思ってしたことなのに、全てが裏目裏目に出てしまったという点で、勘平と同じく運命に翻弄された人と言うことだろうか。

十一段目は、正直言って蛇足でなくてもいいくらいだが、九段目で終わっては収拾がつかないから上演するのだろうか。
そういえば歌舞伎でも文楽でも、十段目というのを観たことがない。面白くないのかな。

全段観通して、やはり「忠臣蔵」は観る方にとっても、やる方にとっても特別な作品なんだなあ、と改めて感じた。
今回玉男さん、文吾さん、嶋大夫さんの休演を受けて、大夫、人形遣いとも今までより一段役があがった人が多いが、それこそチラシにあったとおり「現在の文楽の総力をあげて」取り組まれているのがひしひしと伝わってくる、全段手抜きのない力の入った舞台を堪能できた。歌舞伎でもなかなかこれだけ充実した通し上演はないのではないかしら。

今月のお土産パスネット↓


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(1) 
共通テーマ:演劇

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1

トラックバックの受付は締め切りました

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。