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仮名手本忠臣蔵・歌舞伎座昼の部 [舞台]

11月23日

祝日とあってさすがに満席の模様。今月の公演もあとわずか。歌舞伎座さよならのカウントダウンも160日を切っていた。

観る順番が逆になったが、今日は大序から。

大 序 鶴ヶ岡社頭兜改めの場
三段目 足利館門前進物の場
    同 松の間刃傷の場
四段目 扇ヶ谷塩冶判官切腹の場
    同 表門城明渡しの場
浄瑠璃 道行旅路の花聟

富十郎の高師直、勘三郎の塩冶判官、魁春の顔世御前、梅玉の桃井若狭之助、七之助の足利直義、幸四郎の大星由良之助、仁左衛門の石堂右馬之丞、孝太郎の力弥、段四郎の薬師寺、菊五郎の勘平、時蔵のお軽

開幕前に形式通り「口上人形」による配役の口上が付く。
荘重な鳴り物と「東西声」、47回の柝が鳴っての、いつもながら儀式性の強い大序の幕開きで、自然とこちらも身を正して観なくてはという気になってくる。

富十郎の師直はさすがの貫禄で、大序では権柄尽くで傲慢な様子と、顔世に横恋慕する色気もある。
「刃傷」では判官への嫌味がだんだんエスカレートしていく次第が上手く、刀に手をやった判官に「殿中だぞ!」と言うところなど、間が絶品。お膝が悪いのでちゃんと正座できず横座りになって、そのまま時々向きを変えるのだが、それが意外に目障りではなく自然に見えたのは不思議。悪口雑言を言いながらも、やはり高位の人の雰囲気はちゃんと残るのがさすがである。

勘三郎の判官が良い。大名らしい品とおっとりした風情があり、それが師直の嫌味に始めはわけがわからず、だんだん怒りに変わっていく様子が手に取るようにわかる。一度手に掛けた刀から手を離し、師直にいったんはわびを入れるところに悔しさが溢れ、それでもやはりこらえきれずに刃傷に及ぶ様をあくまで品良く行儀良く勤めて立派。大御所富十郎を相手に全く引けを取らなかったのは偉い。
切腹の場でも、覚悟を決めた冷静さと、無念の思いを同時に見せ、力弥への無言の別れ、由良之助への遺言に万感をこめた。

これまでの勘三郎の時代物でも出色の出来。やればできるのよ、この人も。
大体勘三郎はコクーンにしろ中村座にしろ、自分が座頭になって同世代か年下の役者と組むことが多いが、やはり脇に回って去年の中村座での仁左衛門や今回の富十郎のような年上格上の役者と同座することで初めて学べることも多いはず。人気があると言っても歌舞伎界ではまだまだ中堅どころなのだから、もっとそういう機会を増やして欲しい。
と思ったが12月はいつもの面々。やれやれ。

梅玉初役の若狭之助は、直情径行な若殿の雰囲気が上々。
魁春の顔世が品良く美しく、また哀れさも見せる。

幸四郎の由良之助は、判官切腹の場では懐の大きさを見せて立派。評定の場ではいささか新歌舞伎風の台詞になってしまうが、そういう演出なのかも。だが城明け渡しの場では泣きすぎだろう。

仁左衛門の石堂はごちそう。捌き役らしい知にも情にも篤い人柄が良く出てさすがに大きい。
対する段四郎の薬師寺は憎まれ役だが、三枚目がかりでやはり上手い。
七之助の直義、孝太郎の力弥ともこれだけの出番はもったいないが、二人ともニンにあった様子。

「道行」は重厚な四段目の後の口直しのよう。
事情はさておき好きな男と旅ができるお軽のうれしそうな様子と、後悔の念を引きずる勘平の憂いある様子との対比が生きる。
時蔵のお軽が美しく、菊五郎の勘平も伴内との立ち回りでは颯爽とした様子で文句無しの二枚目ぶり。

終わり近くになって鶏が鳴いて「もう夜明け」となるのだが、背景は始めから富士山がはっきり見えていてとても夜の場面とは思えないのはどうにかならないのかといつも思う。いっそあの鶏など省いてしまえばいいのに。

幕切れ、二人で浮き浮きと花道を引っ込んでいく様子には、二人の仲の良さがありありとわかり、この先の悲劇を思うとちょっと哀しい。

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